どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

文字の大きさ
65 / 77

65

しおりを挟む
 マリオとアリアはカレンを宰相執務室へ連れて行った。
 ものすごく不機嫌そうに執務机に座っているのは、アランの父親であるフェリシア侯爵だ。

「あら、結局おじ様が?」

「いや、まだ仮だ。ほら、ここ見て」

 机の上に置いてある役職札に『宰相(仮)』と書かれている。

「チェスに負けたのですか?」

「違うよ。今回はキリウス殿下とロックスとメリディアンが理詰めで来やがった。三対一だぜ? 勝てるわけがない」

「なんと言われたのです?」

「まずメリディアンは娘が王太子妃だから邪推する者が出るからダメ。ロックスは娘が王太子の側近だからダメだってさ。キリウス殿下は王族が宰相になっては拙いからって。それなら王族の籍を抜けて、大公か公爵になればって言ったのだけれど、便利だから抜けたくないそうだよ」

「まあ! でも、それで言うならおじ様だってアランのお父様じゃないですか」

「アランは次男だろ? 喜んでロックス侯爵家が婿に迎えるんだってさ。うちは長男がすでに侯爵家の仕事を手伝っているだろう? だから暇だろうって言われると何も言い返せん」

「なるほど。それは反論の余地なしですわね」

「うん、だからものすごく悪政をしまくって、私腹を肥やしてやろうかなって思ってるよ。俺は前任者より上手くやれるから、バレる前に貯めた金を持ってトンズラさ。どう? このプラン。ところでそのオレンジ色のお嬢さんは何をそんなに怒っているのかな?」

 マリオが口を開く。

「やっちゃいましたので連れてきました」

 フェリシア宰相(仮)が溜息を吐く。

「まあ黒幕が全部しゃべっちゃったもんね。そりゃ焦るだろうさ。で? 殿下はちょっとは靡いたの?」

「いえ、全く。むしろ友達だと信じていたと言われ、ひどく傷つかれているご様子です。今はアランが側にいます」

「ああ、そうか。そりゃ気の毒だが、良い勉強にはなっただろう。それでアリア、そのオレンジちゃんをどうするつもりなのかな?」

「仲間の誼で選ばせてあげるって言ったのですが、最後まで聞かなうちに取り乱しちゃったので、連れてきました」

「なるほどね。君の考えは?」

「いっそバッサリ?」

「おぉぉ! 過激だねぇ。うん、おじさんそういうの嫌いじゃないよ。でももう一度よく考えてごらん。王太子夫妻も含めてちゃんと話し合うんだ。それまでは貴族牢にでも入れとくか。自室軟禁にすると、逃げられる可能性があるかもって考えちゃうでしょ? そうなると罪を重ねさせてしまうよね? 本人のためにも良くない」

 フェリシア宰相(仮)が目配せをすると、後ろに控えていた護衛騎士が頷いてカレンの腕をとった。

「嫌よ! 私は悪くないわ! 死にたくない! 死にたくないの!」

 逃れようとするが、鍛えた騎士にかなうはずもなく連れて行かれてしまった。
 それを見送った宰相(仮)が改めてふたりを見る。

「マリオ君はどう思う?」

 少し考えた後で口を開くマリオ。

「俺は彼女も被害者かなって思ってます。あんな勉強しかしてこなかった小娘なんて、粗雑な策だったとしても騙すのは簡単だったはずです。でも今日彼女がやったことに関しては、罰を受けるべきだと思います。見守ろうとして下さった妃殿下や友人だと信じていた王太子殿下に対する酷いうらぎりですからね」

「なるほど。では君はバッサリは反対なんだ」

「ええ、反対です」

 フェリシア宰相(仮)がアリアの顔を見る。
 プッと小さく吹き出すアリア。

「別に何が何でもバッサリなんて考えてないですよ?」

「ああ、安心したよ。未来のわが義娘が、そう簡単にバッサリバッサリいっちゃうようじゃ、アランの首がいくつあっても足りないからね。では、話し合った結果を知らせてくれ。私は私で少し考えてみよう」

 頷いたふたりが部屋を出ると、フェリシア宰相(仮)がメリディアンとロックスに手紙を出した。
 微笑ましそうに見送ったフェリシアが、次の書類に手を伸ばす。

「あれ? やっと出したのか。粘ったねぇワートルも」

 その書類はワートル男爵の爵位返上申請書と破産宣告書だった。

「おかしいな……あの廃鉱山は相場よりちょっと高めに買ってあげたのに破産なんてさ。俺の優しさが無駄になったじゃん。まあ、別にどうでもいいけど」

 そう呟くと、バンッという音を立てて『承認』というスタンプを押したのだった。
しおりを挟む
感想 972

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。 自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。 そんなある日、彼女は見てしまう。 婚約者に詰め寄る聖女の姿を。 「いつになったら婚約破棄するの!?」 「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」 なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。 それを目撃したリンシアは、決意する。 「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」 もう泣いていた過去の自分はいない。 前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。 ☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m ☆10万文字前後完結予定です

処理中です...