どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

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 アリアが王太子の執務室に戻ると、アランに肩を叩かれながらアマデウスが頷いていた。

「大丈夫?」

 その声に顔を上げたアマデウスは、まるで幼子のように泣きはらした目をしていた。

「全て僕が未熟だったってことが証明されちゃったね。ルルだけを愛しているのに、ルルを傷つけてさ……最低だよ」

 アランがゆっくりと口を開く。

「アマデウス、過去は戻らない。糧にするしかないんだ。これからのことを考えよう」

 話題を変えるようにマリオが声を出した。

「ああ、そう言えばさっき妃殿下のところに書簡が届いて、ロマニアの鬼公爵が可愛い孫娘の誕生日パーティーに来るらしいぜ」

「マジか……」

 アリアが片眉を上げた。

「宿泊は王宮かしら? どちらにしても歓迎晩餐会の準備は必要ね……マリオ、悪いけれど宰相(仮)のところへ行って情報提供してくれない? まあもう知っているとは思うけど」

 頷いたマリオが部屋を出た。
 
「あのね、宰相(仮)から王太子夫妻と側近でよく話し合ってみろって言われたの」

「カレンのことか? ではマリオが戻ったらさっそく始めよう。モネ公爵来訪のこともあるんだ。早くカタをつけよう。いいね? アマデウス」

 アマデウスはコクンと頷いたが、泣き笑いの表情は隠せないままだった。
 三人がルルーシアの執務室へと向かうと、丁度メイドのキャロラインと出くわす。

「キャロライン、妃殿下は中に?」

「ええ、先ほどキース・レイダー卿がいらして談笑中です」

「キース……」

 アマデウスが不安そうな顔をしてノックをしようとした瞬間、中から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
 立ち聞きは良くないということは、十分承知しているが、なぜか動けない。
 後ろに控える三人もアマデウスを押しのけることができないでいた。

「まあ! それは素敵なプランだわ。あのオペラの舞台となった場所でってこと?」

「そうだよ。草原を抜けた高台で、月明かりの下で永遠の愛を誓い合うんだ」

「でも添い遂げることはできない……辛いわね」

「添い遂げるよ? 絶対に添い遂げてみせる。籍を入れるかどうかなんて僕らには関係ないさ。もういい大人なんだ、仕事で離れることがあるのも仕方がない。そんなの当たり前だ。でも心は常に共にあるでしょ? 体は離れていても心は寄り添っているんだよ。僕はそう信じている」

「信じている……そうよね。好きな人を疑うことほど辛いことは無いもの」

「ルルーシア、君は信じ切ることができるかい?」

「信じ切るかぁ……勇気が必要ね。でもそうしたいとは思っているわ」

「僕はできるよ」

「あなたは強いのね」

「強くないとこの愛は貫けない」

「うん、わかったわ。おじい様に相談してみるわね」

 アマデウスが力なく腕をだらっと降ろした。
 
「相談はまた後で……僕は少し休むよ。なんだか眩暈がするんだ」

 アランとマリオが駆け寄り、アマデウスの体を支える。
 足を引きずるように戻るアマデウスを見送ったアリアが執務室のドアをノックした。

「失礼します」

「あら、アリア。丁度良かったわ、今からお茶にしようって……アリア? どうしたの?」

 ルルーシアの正面に座っているのはキース・レイダーで、その隣に座っているのはキリウスだ。

「あっ……いえ、お話し中に申し訳ございません」

 キリウスがニヤッと笑った。

「もしかして、聞いちゃった?」

「は……はい。はしたないことをしてしました」

 キースが眉を下げて言う。

「秘密の恋なのです。誰にも言わないと誓ってくれませんか? この愛を失うのは死ぬより辛いのです。どうかお願いします」

 アリアがチラチラとルルーシアを見る。

「アリア、私からも頼むわ。ふたりの愛を応援したいのよ……お願い」

「お? 応援?」

 うんうんと頷くルルーシアの前で、キースとキリウスが手を固く握り合っていた。

 一方、私室に戻ったアマデウスは……
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