どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

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「水でも飲むか?」

 アランがサイドボードに置かれたポットを手に取る。

「ああ、頼む」

 差し出されたコップを一気に煽り、天井を見上げたまま動かないアマデウス。
 アランとマリオは顔を見合わせて悲痛な顔をした。

「誤解かもしれんぜ? 確認もしないまま決めつけるのは良くないよ」

 マリオの声に、ゆっくりと頭を動かしたアマデウスが重たそうに口を動かした。

「そうだよね……確認を……でも確認して真実だとわかったらどうすれば良い? 気づかない振りをしていれば、このまま何も変わらないんじゃない? 僕がルルに寂しい思いをさせたから……僕が追い詰めたんだ……僕が……」

 言葉を重ねようとするマリオの肩に手を置いたアランが言った。

「決めつけるな。痛いほど学んだじゃないか。そうだろう?」

 アマデウスが絶望的な顔をする。

「もし本当のことなら離婚かな……僕とルルが離婚? 嫌だよ……ルルと別れるなんてできないよ……でも……ルルが幸せになるなら……だからか? だからここまで初夜を先延ばしに? 僕には触れられるのも嫌なのか? ああ、どうすれば……どうすればいい? ねえアラン! マリオ! 僕はいったいどうすれば良い? 助けてくれよ……」

「もちろんだ。ひとりで想像して悪い方にばかり考えるんじゃないぞ! 落ち着け」

 マリオが扉の方へ向かう。

「俺、医者を呼んでくる。眠らせた方が良さそうだ」

 その頃ルルーシアの執務室ではアリアが事情を聞いていた。

「なるほど……だからキリウス殿下は結婚をなさらなかったのですか」

「そうだよ。僕とキースは愛し合っているんだ。もうずっと前からお互いだけを思って生きてきたんだよ。でもわが国では同性婚は認められていないだろ? スワン国なら結婚できるから、ふたりで亡命しようかという話もしたことがある」

「でも亡命はしなかった」

「うん、やはりローレンティアを見限ることはできないさ。それにアマデウスも幼かったし。でももうルルーシアがいるだろう? 少しずつフェードアウトしても良いかなって思ってね」

「実行なさるのですか?」

 キリウスとキースが顔を見合わせた。

「いや、ずっとこのままここにいる。キースと一緒にね」

 キースが頷いた。

「僕はロマニア国の出身で、国籍もロマニアです。ローレンティアに移住して国籍を得るためには、国王の認可が必要なのですよ。そこでルルーシア様のおじい様に橋渡しをお願いできないかと思って……」

「なるほど、それで先ほどの話なのですね。あの一部だけを聞いてしまったから、私はてっきりレイダー卿とルルが恋におちて、モネ公爵に相談しようとしているって……あっ!」

「どうした?」

 キリウスが驚いた声を出す。

「さっき、アマデウス殿下も一緒に聞いていました……」

「誤解したかな?」

「十中八九間違いないでしょうね……今頃泣き叫んでアランに八つ当たりしてるんじゃないかしら」

 キリウスが顎に手を当てた。

「泣け叫んでいるならまだいいが、あの子のことだ。変な方向に突っ走るんじゃないだろうな……」

 四人は一斉に大きなため息を吐いた。
 ルルーシアがアリアに聞く。

「そういえば、どうしてみんな揃ってたの?」

「ああ、そうよ。カレンが遂にやらかしちゃって、今は自室軟禁状態なのよ。それで彼女の処遇を相談しようと思って来たの」

 アリアがフェリシア宰相(仮)との会話に至るまでの状況を説明した。

「まあ……きっと殿下はとんでもなく傷つかれたでしょうね。本当に友情だと信じておられたもの」

 キースがルルーシアに聞く。

「ルルちゃんはどうしたい? 君が一番の被害者なんだから、意見を言う権利はあると思う」

 ルルーシアが小首を傾げた。

「でも私は、彼女に直接何かをされたことは無いわ。むしろいつもオドオドしていて、可哀そうに思っていたくらいだし。手負いの小狸ってイメージかな」

 全員が納得した顔で頷いた。

「うん、あの子も操られてたわけだしね。でも最後の最後で欲を出しちゃったでしょ? まあ理解できないことはないけれど、ここにいても彼女に幸せは無いわよ。罪悪感と欲望の狭間で苦しむだけだわ」

 アリアの言葉にキリウスが疑問を口にする。
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