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ここはどこなのでしょうか。
白く霞の中にいるような、冷たくて寂しくて、それでいて明るくて温かい場所です。
ゆっくりと小春が目を開けると、そこに七緒が立っていました。
「小春、約束の礼じゃ。お前が一番会いたいと願っている者を連れて参った」
「七緒? ここはどこなの?」
小春の質問には答えず、七緒が悲しそうで嬉しそうな顔をしました。
「小春。吾にできるのはここまでじゃ。言い尽くせぬほど世話になったな。別れは辛いが、それもまた人なればこそじゃ。本当に楽しいひと時であった。礼を申すぞ」
七緒がゆっくりと頭を下げます。
「七緒……嫌だ。私も一緒に行くよ! もう独りぼっちは嫌だよ!」
消えていった七緒を懸命に探す春の背後で、温かい気配がしました。
「お母さん?」
「小春……小春、小春!」
なんとそこには小春の母奈津子がいるではありませんか。
「母さん!」
駆け寄って飛びついた小春を、奈津子はそっと抱きしめてくれました。
「母さん、ごめんね。わたし、あの時ひどい言い方して……あんなに頑張ってた母さんに優しくできなくて……わたし、本当にバカで間抜けでダサかった」
「小春、私は何とも思ってないわ。父さんが死んじゃってから、私が全部やらなきゃって頑張り過ぎちゃったの。小春が寂しい思いしてることもわかってたのに、少しでも生活が楽になればって……そればかり考えて……バカだった。ごめんね小春」
「ちがう、バカなのは私。母さんに反抗してばかりで。ごめんなさい……ごめん母さん。ホントにごめん……」
今まで一滴も出なかった涙が堰を切ったようにあふれ出し、小春は奈津子の胸に縋りついて泣き続けました。
「母さん、もう離れない。ずっと一緒にいる」
「小春?」
「ね、だからもう寂しくない。もう大丈夫。ずっとずっと母さんと一緒にいる」
奈津子が本当に悲しそうな顔で言います。
「小春、それはできないのよ」
「どうして? 嫌だ! 嫌だよ母さん! ずっと一緒にいる!」
「だめよ、あなたは帰るのよ。そしてこれから一人で生きていくの。私や父さんの分まで、ずっとずっと生きていくの」
「嫌だ! 一緒がいい! 母さんと一緒にいる! それで私が死んじゃうならそれでいい」
「バカなことを言わないで! 小春!」
それまで優しく語り掛けていた奈津子が声を荒らげました。
小春は驚きながら、奈津子の顔を見上げます。
静かな声に戻した奈津子が小春の目を覗き込みました。
「小春、死んじゃダメ。死んじゃった私が言うのもおかしな話だけど、死ぬことを自分で選んじゃダメ。それは絶対にだめなのよ。あなたもいつか死ぬときは来る。でも、それは運命が決めることであなたが選ぶことではないの」
「でも、母さんと一緒にいたいよ」
「私はずっといるわよ、あなたのここに」
奈津子は小春の胸を指先で優しくトントンと押しました。
「だから生きて。まだあなたは15才なのよ。これから楽しい事や嬉しいこと、辛い事や悲しいことがたくさんあると思う。でも乗り越えられない試練は無いの。辛いことのあとには、必ず素晴らしいことが待っているの」
「母さん……」
「さあ、あの光が出口。みんなが待っているわ。あなたは独りぼっちなんかじゃない。そのことだけは絶対に忘れないで」
「母さん……わたし……」
奈津子がポンと励ますように小春の背を押しました。
これ以上ないほどの優しい眼差しの母に頷き、涙を拭いて光へと歩き出した小春。
光の中に足を踏み出そうとした瞬間、後ろで奈津子の声がしました。
「小春、ずっと、ずっとずっと愛してるからね。安心して生きなさい」
白く霞の中にいるような、冷たくて寂しくて、それでいて明るくて温かい場所です。
ゆっくりと小春が目を開けると、そこに七緒が立っていました。
「小春、約束の礼じゃ。お前が一番会いたいと願っている者を連れて参った」
「七緒? ここはどこなの?」
小春の質問には答えず、七緒が悲しそうで嬉しそうな顔をしました。
「小春。吾にできるのはここまでじゃ。言い尽くせぬほど世話になったな。別れは辛いが、それもまた人なればこそじゃ。本当に楽しいひと時であった。礼を申すぞ」
七緒がゆっくりと頭を下げます。
「七緒……嫌だ。私も一緒に行くよ! もう独りぼっちは嫌だよ!」
消えていった七緒を懸命に探す春の背後で、温かい気配がしました。
「お母さん?」
「小春……小春、小春!」
なんとそこには小春の母奈津子がいるではありませんか。
「母さん!」
駆け寄って飛びついた小春を、奈津子はそっと抱きしめてくれました。
「母さん、ごめんね。わたし、あの時ひどい言い方して……あんなに頑張ってた母さんに優しくできなくて……わたし、本当にバカで間抜けでダサかった」
「小春、私は何とも思ってないわ。父さんが死んじゃってから、私が全部やらなきゃって頑張り過ぎちゃったの。小春が寂しい思いしてることもわかってたのに、少しでも生活が楽になればって……そればかり考えて……バカだった。ごめんね小春」
「ちがう、バカなのは私。母さんに反抗してばかりで。ごめんなさい……ごめん母さん。ホントにごめん……」
今まで一滴も出なかった涙が堰を切ったようにあふれ出し、小春は奈津子の胸に縋りついて泣き続けました。
「母さん、もう離れない。ずっと一緒にいる」
「小春?」
「ね、だからもう寂しくない。もう大丈夫。ずっとずっと母さんと一緒にいる」
奈津子が本当に悲しそうな顔で言います。
「小春、それはできないのよ」
「どうして? 嫌だ! 嫌だよ母さん! ずっと一緒にいる!」
「だめよ、あなたは帰るのよ。そしてこれから一人で生きていくの。私や父さんの分まで、ずっとずっと生きていくの」
「嫌だ! 一緒がいい! 母さんと一緒にいる! それで私が死んじゃうならそれでいい」
「バカなことを言わないで! 小春!」
それまで優しく語り掛けていた奈津子が声を荒らげました。
小春は驚きながら、奈津子の顔を見上げます。
静かな声に戻した奈津子が小春の目を覗き込みました。
「小春、死んじゃダメ。死んじゃった私が言うのもおかしな話だけど、死ぬことを自分で選んじゃダメ。それは絶対にだめなのよ。あなたもいつか死ぬときは来る。でも、それは運命が決めることであなたが選ぶことではないの」
「でも、母さんと一緒にいたいよ」
「私はずっといるわよ、あなたのここに」
奈津子は小春の胸を指先で優しくトントンと押しました。
「だから生きて。まだあなたは15才なのよ。これから楽しい事や嬉しいこと、辛い事や悲しいことがたくさんあると思う。でも乗り越えられない試練は無いの。辛いことのあとには、必ず素晴らしいことが待っているの」
「母さん……」
「さあ、あの光が出口。みんなが待っているわ。あなたは独りぼっちなんかじゃない。そのことだけは絶対に忘れないで」
「母さん……わたし……」
奈津子がポンと励ますように小春の背を押しました。
これ以上ないほどの優しい眼差しの母に頷き、涙を拭いて光へと歩き出した小春。
光の中に足を踏み出そうとした瞬間、後ろで奈津子の声がしました。
「小春、ずっと、ずっとずっと愛してるからね。安心して生きなさい」
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