憑依無双 ~何度殺されても身体を乗り換えて復活する~

十一屋 翠

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エルファンス編

大樹の町

 猪の身体に隠れた俺は、エルフ達に運ばれて大樹の上層部に作り上げられた町へと運ばれた。
  ……うん、やって来たんだ。

  エルフの里は美しかった。
  巨大な大樹の上層部はその側面をくりぬいた足場が作られ、幹の根元を利用して広場が構築されていた。
  更に他の大木との間には空中回廊が作られており、まるでゲームの世界のような大樹の町を作り出してる。
  大樹は内部に穴が開けれられており、その中をエルフ達は住処としていた。
  大樹とは、ドラゴンから己の身を隠すだけではなく、エルフ達の暮らす町としての役割りも果たしていたのだ。
  更に町は大樹の上層部に位置している為、地上の魔物の大半はやってこれない。
  時折登ってくる魔物も、エルフの戦士達によって打ち落とされてて落下し、大樹の新たな養分と化す。
  そんな幻想的な町を作り上げたエルフ達に俺は運ばれた。
  素手で。

 「おお、猪か」

 「ああ、中々の巨体だ。皆の血肉となってくれる事だろう」

 「どれ、早速解体するか」

 「ああ、任せた」

  エルフの狩人が出迎えたエルフに猪を任せて町へ消えていく。

 「どれ」

  エルフは巨大な猪の身体を軽々と担いで運び出した。
  その逞しい腕で。

  エルフ、ファンタジー世界の代名詞的存在であり、本来はヨーロッパの伝説に語られる妖精の一種だ。
  原点となる伝説はおっかない病気をもたらしたり、関わると長い時間を奪われたりするという話も有るが大抵はファンタジー小説のイメージで華奢で美しい存在を思い浮かべる事だろう。

  この世界ガイアのエルフ達は、確かに美しかった。
  ビューティフルマッスル的な意味で。
  彼等は筋骨隆々である。
  彼等の肉体は鋼である。
  当然だろう。
  大樹の上に町を作る為にその側面をくり抜き、更にその中に人が住む為の空洞も削り出したのだ。
  そして大樹と大樹の間を繋げる空中回廊。
  それらの土木工事を華奢な腕などで行える筈が無い。
  ガイアのエルフ達は全員が美しい肉体美を誇るマッスル種族であった。

  詐欺だ。

  ◆

 マッスルエルフによって猪の肉体が解体所と思しき場所へと運ばれた。
  イカンな、何時までもマッスル詐欺のダメージで呆けている訳にも行かない。
  エルフに見付かったら害虫扱いされてプチっと踏み潰されてしまう。
  猪の身体から降りた俺は、急いで解体所から逃げ出した。

  ◆

 自分の足で歩くエルフの町は壮大だった。
  町の核となっている大樹は巨大で、道路として削られた側面部はエルフ達が5人横に並んで歩いても余裕がある。
  更に端面には手すりが付けられており、そこから子供達がうっかり落ちる事もない。
  まぁ、エルフに本当の意味での子供が居るのかは知らないが。
  俺はエルフ達に踏み潰されないように隅っこに寄って道を歩いていく。
  この大樹は普通に居住区っぽいな。向こうの大樹には武器を持ったエルフとかが歩いているから鍛冶屋とか居るんだろうか? っつーかエルフがグレートアックスやモーニングスター担ぐな。
  うーん、何この物理エルフ共は。
  エルフは魔法が得意なんだよな。んで、俺達が森に近づくと長距離射撃で眉間ぶち抜くおっそろしい相手なんだよなぁ。
  あれか? エルフにも複数の種族がいて、コイツ等はマッスルエルフで、他に魔法の得意な普通のエルフが居るのだろうか?
  そうだ、きっとそうに違いない! 

 「ふふん、今日も良い肉体美だ」

  おい馬鹿やめろ。

 「ああ、生っちろいドワーフ共何ぞとは比べ物にならんぜ」

  危険を感じるワードを口にするなエルフ共!

 「おい、そろそろ源泉警備の交代時間だぞ」

  談笑していたエルフ達の元に別のマッスルエルフ達がやって来る。

 「ん? もうそんな時間か。分かった、直ぐ行く」

  源泉? 温泉か何かが有るのかな? でも警備?

  気になった俺は手近なエルフに飛び移ってズボンにしがみ付く。
  さぁエルフ達よ、俺を源泉とか言うのに運ぶのだ!

  ◆

 それは濃密な魔力の塊だった。
  エルフ達が向かった先にあったのは、一際巨大な大樹であり、その中にくり抜かれた一室に入った瞬間、濃密な魔力の海の中に全身が沈んだような感覚を受けた。
  恐らくは結界。
  結界魔法を使ってこの魔力が外部に漏れ出ない様にしていたのだ。
  とはいえ、その結界も完璧では無いのだろう。リ・ガイアからやって来た魔族達がガイアに溢れる魔力を察知できた以上、気が付かない程度の微細な魔力漏れが起きていると推測できる。
  エルフ達は大木の中の通路をドンドン進んでいく。
  緩やかに廻りながら大木を下っていく。恐らくは螺旋階段の様になっているのだろう。
  だがそんな穴を開けても大丈夫なほどに大木は大きかった。
  エルフ達が下る先にひときわ大きな魔力が感じられる。
  魔力は塊として感じるものではなく、まるで湧き水の様溢れている印象を受けた。

  ……マズイ。

  気分が悪いというか、魔力が濃すぎるというか、とにかくアリの肉体が悲鳴を上げている。
  これ以上下ってはいけないと。
  俺は慌ててエルフの脚から降り、来た道を戻る事にした。
  底になにが有るのかは分からなかったが、間違いなく何か危険なモノがある。
  そしてそれは恐らく魔族達が求めてやまないモノ。
  そう、魔……

「ニャーン」

  鳴き声がした。
  俺が向かう先、大樹の階段の出口。
  そこには真っ白い毛の塊が待ち構えていた。

  それはネコ。
  それはキャット。

  エルフ達のペットであろうか?ネコは俺の姿を認識し、ロックオンしている。
  前足が下がり、後ろ足が持ち上がる。
  臨戦態勢だ。
  狩人の目だ。
  俺は即座に龍魔法を発動し迎撃、いや先制攻撃だ!
  俺をたかがアリと認識しているネコの鼻っ面に必殺の一撃をお見舞いしてやる!!
 ネコの尻がフリフリと揺れる。
  俺は全力で床を蹴ってネコに殴りかかった。

  必殺の! 4連正拳突きぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 ペキッペキッペキッペキッ

 …………

 折れたぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁ!!!!

 お、俺の、俺の腕が4本とも折れたぁぁぁぁ!!
 コレまで様々な虫を屠ってきた俺の腕がぁぁぁぁぁ!!!

 ぺちんっ

 おふぅ!

  鼻っ面に引っ付いた俺を巨大肉球が払う。
  哀れ俺は床へと吹き飛ばされた。
  なんの、俺には黄金の足がある! このキックならばネコなど恐るるに足ら……

 プチ。

  俺はネコに踏み潰された。
  所詮はアリか。
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