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第104話 勇者、後継者戦争に首を突っ込む
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「一体いつになったらボクはレイリィちゃんと結婚できるのだ?」
結婚式が延期になった事で第三王子ファブリズが家臣に文句を言っている。
「はっ、申し訳ありませんがこの嵐が収まるまでは……」
「別に良いじゃん、屋敷の中で結婚式をすればさぁ! そんでさっさとレイリィちゃんを可愛がりたいんだよー!」
とてもいい年した成人男性とは思えない子供の様な口調でファブリズは声を荒げる。
「仕方ないのです。大勢の客と平民達を集めて式を執り行う事で、大穀倉地帯となったキズォーク家を王家の支配下に置いたと喧伝する意味があるのです」
「でもさー、それだったら別に結婚したっていう事実さえあれば良い訳じゃない?」
家臣達の説明も、退屈を持て余したファブリズには馬耳東風といった具合だ。
「そうはいきません。殿下は次期国王になられる身。なればこそ婚姻の儀は周辺国の貴族達にも見せつけなければならないのです! この結婚式は周辺国に対するけん制の意味もあるのですよ!」
ふむ? レイリィとの結婚がけん制? それに第三王子が次期国王ってどういう事だ?
この国の次期国王は第一王子の筈だが?
「まーマレモン兄上は父上と一緒に評判ガタ落ちだからねー。となると次期国王の座は理屈屋のジョイ兄上かボクになるのは間違いないよねー」
「ええ、その通りです。そしてジョイ殿下に口撃の余地を与えない為にも、殿下にはもう少し我慢して頂かねばなりませぬ」
第一王子の評判がガタ落ち? それにこの口ぶり、第二王子と王位継承権の奪い合いをしているのか?
「分かったよ。ボクが王様にならないとせっかくのハーレム計画がだいなしになっちゃうもんねー」
ハーレム?
「まったくさー、ボクが狙ってた女の子を勇者の奴が全員かっさらってっちゃうんだもんなー。アレが無ければ今ごろあの子達は全員ボクのお嫁さんになってたのにさー」
俺の名前が出て来たって事は、以前お相手した貴族の女の子やお姫様達の事を言っているのか?
「ですが勇者は我々とは袂を分かちました。今ならば次期国王となった殿下の好きな様にできるかと」
「裏切り者の勇者の子供を産んだ売国奴となりたくなければ、僕の側室となって正しい貴族の血を産めと言えばどんな気位の高い女の子でも僕に絶対服従するしかないもんねー」
グフフと気味の悪い笑い声でファブリズが笑う。
なんとなく読めてきたが、情報が足りないな。
他の町に派遣した忍者娘達から詳しい情報を確認する事にするか。
◆
『という訳で、情報収集してもらったんだが、面倒な事になっているのが分かった』
俺は再び通信魔法でエアリア達と会議を行う。
内容は忍者娘達から報告された情報の再整理だ。
『まずこの、ハジメデ王国だが、以前の 魔王就任式で風の拡声魔法で王都中に王家が俺をだましていた事、歴代の勇者が事実上の流刑に遭っていた事がバレて王家の評判はガタ落ち。周辺国からもバッシングの嵐で王家の権威はこれまでとは比べ物にならないくらい低下していて各地の貴族も王家の命令を聞かなくなっている状況だ』
『つまりレイリィちゃんとの結婚は王家の権威を復活させる為の手っ取り早い手段という訳ね』
『ああ、国王はその悪行でどん底まで国民の信頼を失い、国王が後継者に指名した第一王子も巻き添えで支持率は最悪だ。そんな訳で第二王子以下の王子達が次期国王の座を争っているらしい。第三王子はレイリィと結婚する事で、植物促進魔法の実用化によって王国有数の大穀倉地帯となったバラサの町とその領地を王家の支配下に置きたがっているんだ。食料を確保すれば発言力が増すからな』
『そして両親を亡くした幼いレイリィちゃんならいくらでも傀儡に出来るというわけですね』
サリアが悲しみと怒りを滲ませた声音を通信魔法に乗せて送って来る。
『この時代で政略結婚をさせられそうになった私としては見過ごせない問題です』
エアリアもサリアもレイリィの気持ちを無視する権力ゲームじみた政略結婚にご機嫌斜めだ。
『で、怒るのは良いが、何か手段はあるのか? 私としてはさっさとこの国の王族を血祭りにあげてトウヤが王になれば良いと思うのだが』
シルファリアが脳筋発言をかます。
けどそれじゃダメなんだよ。
『力づくの支配じゃあ反対派も出て来る。だから俺達はこの権力争いを利用してレイリィを守ろうと思う』
『具体的にはどうされるおつもりなのですか?』
傍で待機しているクロワさんが待ちきれない様子で聞いてくる。
帝国の玉座を空白にしない為、椅子を温める為だけにお飾りに近い皇帝を演じていたクロワさんは、レイリィが今後どのような目に遭うのかと気が気でないみたいだ。
『ええ、第二王子達を利用しようと思います』
『第二王子達ですか?』
クロワさんの問いに、俺は笑顔で頷く。
『レイリィを守る為、第三王子には失脚してもらいます。そしてその為にも第二王子達を説得して仲間に引き入れます。今の彼らにとって、俺はぜひとも手に入れたい手駒でしょうから』
そう、第三王子がバラサの町とレイリィを手に入れようとしているのなら、敵対派閥である第二王子を味方に引き入れればよいと考えるのは、当然の帰結であった。
結婚式が延期になった事で第三王子ファブリズが家臣に文句を言っている。
「はっ、申し訳ありませんがこの嵐が収まるまでは……」
「別に良いじゃん、屋敷の中で結婚式をすればさぁ! そんでさっさとレイリィちゃんを可愛がりたいんだよー!」
とてもいい年した成人男性とは思えない子供の様な口調でファブリズは声を荒げる。
「仕方ないのです。大勢の客と平民達を集めて式を執り行う事で、大穀倉地帯となったキズォーク家を王家の支配下に置いたと喧伝する意味があるのです」
「でもさー、それだったら別に結婚したっていう事実さえあれば良い訳じゃない?」
家臣達の説明も、退屈を持て余したファブリズには馬耳東風といった具合だ。
「そうはいきません。殿下は次期国王になられる身。なればこそ婚姻の儀は周辺国の貴族達にも見せつけなければならないのです! この結婚式は周辺国に対するけん制の意味もあるのですよ!」
ふむ? レイリィとの結婚がけん制? それに第三王子が次期国王ってどういう事だ?
この国の次期国王は第一王子の筈だが?
「まーマレモン兄上は父上と一緒に評判ガタ落ちだからねー。となると次期国王の座は理屈屋のジョイ兄上かボクになるのは間違いないよねー」
「ええ、その通りです。そしてジョイ殿下に口撃の余地を与えない為にも、殿下にはもう少し我慢して頂かねばなりませぬ」
第一王子の評判がガタ落ち? それにこの口ぶり、第二王子と王位継承権の奪い合いをしているのか?
「分かったよ。ボクが王様にならないとせっかくのハーレム計画がだいなしになっちゃうもんねー」
ハーレム?
「まったくさー、ボクが狙ってた女の子を勇者の奴が全員かっさらってっちゃうんだもんなー。アレが無ければ今ごろあの子達は全員ボクのお嫁さんになってたのにさー」
俺の名前が出て来たって事は、以前お相手した貴族の女の子やお姫様達の事を言っているのか?
「ですが勇者は我々とは袂を分かちました。今ならば次期国王となった殿下の好きな様にできるかと」
「裏切り者の勇者の子供を産んだ売国奴となりたくなければ、僕の側室となって正しい貴族の血を産めと言えばどんな気位の高い女の子でも僕に絶対服従するしかないもんねー」
グフフと気味の悪い笑い声でファブリズが笑う。
なんとなく読めてきたが、情報が足りないな。
他の町に派遣した忍者娘達から詳しい情報を確認する事にするか。
◆
『という訳で、情報収集してもらったんだが、面倒な事になっているのが分かった』
俺は再び通信魔法でエアリア達と会議を行う。
内容は忍者娘達から報告された情報の再整理だ。
『まずこの、ハジメデ王国だが、以前の 魔王就任式で風の拡声魔法で王都中に王家が俺をだましていた事、歴代の勇者が事実上の流刑に遭っていた事がバレて王家の評判はガタ落ち。周辺国からもバッシングの嵐で王家の権威はこれまでとは比べ物にならないくらい低下していて各地の貴族も王家の命令を聞かなくなっている状況だ』
『つまりレイリィちゃんとの結婚は王家の権威を復活させる為の手っ取り早い手段という訳ね』
『ああ、国王はその悪行でどん底まで国民の信頼を失い、国王が後継者に指名した第一王子も巻き添えで支持率は最悪だ。そんな訳で第二王子以下の王子達が次期国王の座を争っているらしい。第三王子はレイリィと結婚する事で、植物促進魔法の実用化によって王国有数の大穀倉地帯となったバラサの町とその領地を王家の支配下に置きたがっているんだ。食料を確保すれば発言力が増すからな』
『そして両親を亡くした幼いレイリィちゃんならいくらでも傀儡に出来るというわけですね』
サリアが悲しみと怒りを滲ませた声音を通信魔法に乗せて送って来る。
『この時代で政略結婚をさせられそうになった私としては見過ごせない問題です』
エアリアもサリアもレイリィの気持ちを無視する権力ゲームじみた政略結婚にご機嫌斜めだ。
『で、怒るのは良いが、何か手段はあるのか? 私としてはさっさとこの国の王族を血祭りにあげてトウヤが王になれば良いと思うのだが』
シルファリアが脳筋発言をかます。
けどそれじゃダメなんだよ。
『力づくの支配じゃあ反対派も出て来る。だから俺達はこの権力争いを利用してレイリィを守ろうと思う』
『具体的にはどうされるおつもりなのですか?』
傍で待機しているクロワさんが待ちきれない様子で聞いてくる。
帝国の玉座を空白にしない為、椅子を温める為だけにお飾りに近い皇帝を演じていたクロワさんは、レイリィが今後どのような目に遭うのかと気が気でないみたいだ。
『ええ、第二王子達を利用しようと思います』
『第二王子達ですか?』
クロワさんの問いに、俺は笑顔で頷く。
『レイリィを守る為、第三王子には失脚してもらいます。そしてその為にも第二王子達を説得して仲間に引き入れます。今の彼らにとって、俺はぜひとも手に入れたい手駒でしょうから』
そう、第三王子がバラサの町とレイリィを手に入れようとしているのなら、敵対派閥である第二王子を味方に引き入れればよいと考えるのは、当然の帰結であった。
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