勇者のその後~地球に帰れなくなったので自分の為に異世界を住み良くしました~

十一屋 翠

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第130話 勇者、聖剣(美少女)と再会する

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「だーかーらー、わたくしは聖剣フェルクシオンです!!」

 なんとあの足の生えた剣の正体は、かつて俺が魔王退治のたびで使っていた聖剣フェルクシオンだった。
 確かに言われて見れば剣の造形は似ていた気がする。
 正直足のインパクトでまったく気付かなかったが。
 
「あー、とりあえず本当にお前がフェルクシオンだったとして、何で足なんか生やしてたんだ?」

 俺は元足の生えた剣で今は自称聖剣の美少女に問いかける。

「もー、まだ信じていないのですね! わたくしは正真正銘聖剣フェルクシオンですよ! すぐに信じさせて見せます!」

 というや否や、少女の体がギュンと細くなり、胴体と顔が剣の刀身と握り手に変形する。
 ただしモーフィング変形だ、正直キモい。何故そこは謎の光で一瞬に変形させなかった。
 あと手足が残ってる、やっぱりキモい。

「どうです? この美しい刀身、精緻な装飾の施された鍔と握り手。正に聖剣にふさわしい輝きでしょう?」

 うん、確かにしっかり見ると聖剣フェルクシオンだ。
 刀身から生えた手足にスゲー視線が引き寄せられるけど確かに聖剣だ。

「なぁ……なんで手足が生えてるんだ?」

 俺は勇気を出して疑問を口にする。
 この手足が収納不可能とか言われたら、俺は今後艶かしい手足の生えた聖剣を振るって真なる魔王と戦う生足勇者と人々にあだ名される事だろう。
 正直イヤすぎる。

「え? 足が無いと移動出来ないじゃないですか」

 うん、まぁそうなんだが。

「とりあえず人型になってくれ、その姿はなんと言うか精神によろしくない」

 なんつーか正気度がゴリゴリ削れる。

「かしこまりました」

 フェルクシオンは俺のお願いを聞いて再び人の姿になる。
 素直に言う事を聞いてくれて助かるぜ。

「これでよろしいでしょうか?」

 美しい全裸の美少女へと姿を変えたフェルクシオンが笑顔で問いかけてくる。

「ああ、それで良……ってなんで全裸なんだよ!?」

 そういえばさっきも人の形になった時は全裸だった様な!? 正直さっきは足の生えた剣が人間の形になったり自分を聖剣と言い出したりして驚く事が多すぎてそれどころじゃなかったわ。
 しかしフェルクシオンはキョトンとした顔で俺を見る。

「え? だって剣は服を着たりしませんよ?」

 うん、まぁそうなんだけどさ。
 普通こういう時は変身すると服を着てるもんじゃね? 漫画とかアニメはそうじゃん?

「あー、じゃあなにか服を出すからちょっと待ってろ」

 俺は魔法の袋から手ごろな服を取り出すとそれをフェルクシオンに与える。
 だがフェルクシオンは何故か服を着ようとせず、じっとそれを見つめていた。

「どうしたフェルクシオン?」

「……これはもしかして……」

 フェルクシオンが服を見つめながらつぶやく。

「初めてのデートでプレゼントイベントというヤツでしょうか?」

 何を言っているんだお前は。

「さっきまでの、まてまてーうふふ追いついてごらんなさーいイベントからのプレゼントへの流れるような展開。しかもプレゼントがアクセサリの様な装飾品ではなく肌に身につける服とくればわたくしのマスターへの好感度はウナギ登りです!」

「誰だそんな事教えたバカ野郎は!?」

「よくマスターが女の子と親密になると口にしていた言葉ですが?」

「ごめんなさい」

 俺が犯人でした。

「……えーっと、それで、その姿はいったい何なんだ? 魔王ガルバラと戦う旅の最中じゃそんな姿にはならなかったよな?」

 そうなのだ、かつて俺が魔王ガルバラとの戦いで聖剣を手に入れた時は、フェルクシンは今のように人型になる事はなかった。結局魔王を倒してもそのままで、俺はフェルクシオンをただの剣だと思っていたのだから。


「それは、以前の旅でマスターが魂の力に目覚めていなかったからです」

「魂の力に?」

 フェルクシオンは頷き、言葉を続ける。

「この姿はマスターの魂の力を受ける事で一時的に変身できる仮の姿なのです」

 なるほど、俺が魂の力に目覚めたからフェルクシオンも変身できる様になった訳か。

「けど何で足を生やしただけの姿だったんだ?」

 正直最初から今の姿だったら俺も逃げ出そうとはしなかったんだが。

「この姿になるには十分な量のマスターの魂の力が必要なのです。遠く離れていては魂の力を受け取れませんし、この遺跡の中ではやはり足を生やすのが精一杯だったのです。先ほどはマスターに近づいた事でようやく手を生やす事が出来ましたが」

 成る程、距離に比例して人型への変形に制限が出るのか。
 まぁちゃんとした理由が分かって少しだけ安心したわ。

「そういえば今ここを遺跡と言ったけど、ここは何なんだ? 何で教会本部の地下からこんな所に転移出来たんだ?」

 俺は先ほどの疑問をフェルクシオンに問いかける。

「人型を取る事は出来なくても、教会の人間達の会話を聞く事は出来たんじゃないか?」

 俺の質問にフェルクシオンはニマリと笑みを浮かべる。
 ただし片足を上げてパンツを履きながら。はよ服を着ろ。

「さすがマスター。見事な洞察力です。確かにわたくしは教会の人間達の会話を聞いておりました」

 パンツを履いたフェルクシオンはブラジャーを両手に持って首をかしげる。

「ところでマスター、これはどういう服なんでしょうか?」

 あー、異世界人、いや異世界剣のフェルクシンはブラジャーが分からんか。
 いやまぁ、バカンス様に水着を作ってもらうついでに服屋に地球製の下着も作ってもらったんだよ。
 とりあえず誰でも着れるように同じデザインで何種類かサイズ別のヤツをだな。
 いや今はその事はいい。

「あー、俺がつけてやるから、説明を続けろ。

 俺はブラを受け取り、フェルクシオンの後ろに回ってブラをつけてやる。

「ここは普通の古代遺跡ではありません。古きも古き、神代の遺跡なのです」

「ほう、神代……って神代!?」

 フェルクシオンが上着を着ながら、しかしパンツは丸出しのままで衝撃の言葉を発する。

「はい。人間が今ほど力を持たず、そして真なる魔王とその眷属である魔族達によって滅亡の危機を迎えていた、そんな時代の遺跡だそうです」

 神代の遺跡、そんなものを教会は秘匿していたのか。
 だがそんな遺跡の存在を聞いた事はないし、ハジメデ王国を始めとした各国の王や貴族からも聞いた事は無かったぞ。

「ふーむ、どうやら教会はまだまだ隠し事をしているみたいだな。詳しく調べる必要がありそうだ」

 これは教会関係者、出来れば上級司祭あたりを捕縛して情報を聞き出さないといけないな。

「それでしたら……」

 スカートをはき終えてすっかり普通の美少女となったフェルクシオンが部屋の奥を指差す。
 正直服を着て残念と思う気持ちも無くはないが、さすがに全裸の美少女を連れたまま遺跡を徘徊するのは上級者過ぎる。
 なので俺はそっと欲望を我慢してフェルクシオンが指差した先を見る。
 そこには、先ほどの突入で吹き飛びヘコんだ扉が床に倒れており、その下には豪勢な衣装を着た上級司祭達の姿があった。

「その方達に聞けばよろしいかと」

「あっ」

 そういえばさっき吹き飛ばしたんだっけ。
 ……しかしこの顔、どこかで見た事あるような。

「教会の教皇と枢機卿だそうですよ」

「へー、教皇と枢機卿……」

 あー、そうだそうだ、魔王就任の儀式の時にミューラと一緒に居た枢機卿のオッサンじゃないか。

「……って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 まさかいきなり最重要人物を捕獲成功ですかぁぁぁぁぁ!?
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