異世界転生したら貧乳にしかモテなかった

十一屋 翠

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第54話 婚儀貧乳

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 俺は鉄格子付きの部屋に閉じ込められていた。
  窓はなく、昼夜の区別も付かない。
  そして昼夜を問わず女の子達がやって来るので時間の感覚もあやふやだ。
  そうする事で俺が何日ここに居るのかを理解させないようにして居るのだろう。
  マリーは言った。俺をリアネイラ達と結婚させると。
  その為の準備を今は行っていると。
  だがリアネイラ達と結婚すれば、俺は間違いなくバルネスの国王にされてしまう。
  俺が否定しようとも、次期王位継承者候補の王女全員と結婚すれば誰が見ても時期女王の夫、すなわち国王だ。
  そんな事になればトリアドが、いやレミュ様達王女とリィリス達貴族娘達が黙っては居ない。
  俺の血を王族に混ぜるだけなら国王陛下の強権でなんとでも出来るが、結婚まで行くと、彼女達がどんな暴走をするか分からない。間違いなく全面戦争は必至だ。
  国王陛下と良識のある家臣が止めようとも、野心を持った好戦派が手を貸す可能性が高い。
  そうなったら泥沼だ。
  俺が原因でそんな事になるのだけは避けたい。
  脱出しなくては。

 「何を難しいお顔をされていらっしゃるのですか?」

  声の方に顔を向ければ、そこにはリアレイラ達王女が居た。珍しく全員集合だ。

 「全員とは珍しいな」

 「はい、実は私達の婚儀が遂に明日、開かれる事になったのです」

 「何!?」

  予想外だった。もう少し時間が有ると思っていたのだ。
  いや、ここに閉じ込め、多くの女の子を昼夜問わず送り込んできたのは、俺に時間を理解させないだけではなく、冷静に考えれなくする為でもあったのかもしれない。
  どちらにしても予想外だった。

  リアレイラ達が鉄格子の鍵を開け、中に入ってくる。
  この瞬間を狙って外に出たいが、人が出入りする時は必ず複数人が見張りに付いている為、逃げ出す事が出来ないのだ。

 「これで我が国の王位継承問題も解決します」

  中に入り、俺にしなだれかかってきたリアレイラがそう呟いた。

 「どういう意味だ?」

 「そのままの意味です。私達王女全員を降したライト様が私達の夫になれば、王位継承者候補を倒した敵国の人間は居なくなります」

 「っ!?」

  俺はその時になって漸く事の真相を理解した。
  リアレイラ達王位継承者候補は全員が俺に倒された事で王位継承権を失った。
  ソレを知ったトリアドは、その事を黙秘する事で休戦の交渉材料にしたが、そんな約束をしても人の口にとは立てられない。現に戦場の多くの兵が俺に連れられてやって来たリアレイラ達の姿を見ていたのだ。
  そして捕虜として連れて行かれる所も。
  そんなガバガバな情報封鎖では、いつか必ず情報は漏れるだろう。
  だが、彼女達が敗北したのが夫なら、身内なら話は別だ。
  姫達を倒した相手が姫の夫になる事があらかじめ決まっていたのなら、時期女王候補だった姫達全員と結婚するのなら、姫達は敵に敗北した事にはならない。夫婦同士でのじゃれあいと言い張ればよい。
  トリアドの貴族である俺がバルネスの王女の夫になれば、トリアドに彼女達が捕まった事も政治的な偽装だと言い訳できる。
  矛盾を矛盾で喰らう。そうする事によって国の恥をなかった事にする。それがバルネスの政治家達の選択だったのだ。
  脳筋なんかじゃない。とんでもない屁理屈を使って無理を通そうとしている。
  だが、ある意味その無茶は政治家らしい無茶と言えた。
  言い張った者勝ちというヤツだ。
  こうなると不味い。
  俺がここから逃げれば、バルネスは姫達の敗北に対する言い訳が出来なくなる。
  密約で黙る事にはなっているが、お互いにソレを馬鹿正直に護るとは思わないだろう。
  なにより、強さを信奉するバルネスが敗北を良しとするとは思えない。
  間違いなくトリアド側が口を滑らせる前に黙らせようとする筈だ。
  全面戦争待ったなし。
  だがここでもう1つ問題が。
  俺がトリアドに帰れば、レミュ様達と結婚させられる可能性が高い。
  何しろ第三王女のラーシュは俺と結婚する為に自分の婚約者を失脚させたくらいだ。
  そして第二王女のローラも俺のバルネス行きを無理やり中止させようとした。
  戻るのもヤバイ。
  残るも地獄、帰るも地獄。
  とりあえず俺は考えを纏める為、機械的にリアレイラ達をマッサージの沼へと引きずりこんだ。

  ◆

 リアレイラ達が放心状態でベットに崩れ落ちている。
  考える時間を確保する為に俺は無心でリアレイラ達にマッサージを行った。
  丁寧に羽を柔らかハンドブラシでゴミ取りして、指の足の指の間をクリクリマッサージする感じで羽の肉をモミモミしてやった。
  他の王女達も鱗の一枚まで綺麗にクリーニングして、尻尾をブラッシング、お腹をモミモミして完全に野生を失うまでマッサージしてやった。
  いまここに居るのは、王女としての誇りを忘れ、マッサージの快楽に溺れ俺にだらしなく腹を見せて恍惚の表情を浮かべる、ペット同然の獣人娘達だ。

  全員を蕩けさせて漸く時間が空いた俺は、今後どうするかを考えた。
  トリアドに逃げれば最悪トリアドとバルネスが戦争を再開するかもしれない。
  だがバルネスに残っても戦争になるだろう。

  にっちもさっちもいかない状況だ。こうなると、そうなった原因である【貧乳モテ】スキルが忌々しく思えてくる。
  制御も出来ず、誘蛾灯の様に貧乳をおびき寄せるこのスキルが。

 「一体スキルってなんなんだろうな?」

  【闘気の極み】もそうだ。
  俺は神から証拠隠滅の為に貰った力だからと、気楽に使ってきた。
  だがその力が何故存在するのかまではしっかりと考えていなかった。
  どうせコミケに行く神の事だから、マンガを読んで面白そうだからこの力を作ったのだろうと考えていた。
  けど【闘気顕現】は校長ですら1000年見ていないと言っていた。
  しかも使っていたのは勇者だと。
  スキル、俺は自分以外にスキルを持っている人間の事を知らない。
  なら、スキルの事を知った方が良いんじゃないだろうか? 
  もしスキルが制御できるのなら、レミュ様達やリアレイラ達の暴走を止める事が出来るかもしれない。
  このままでは俺に惚れた貧乳達がヤンデレになってしまう。
  そうならない為にも、スキルを制御しなくては。
  その方法を知っているかもしれない人物。

 「校長」

  俺の頭に浮かんだのは、校長ことローダ=ジェダの顔だった。
  千年以上を生き、闘士達の間で伝説の存在となっている校長。古代の勇者とすら機知であるあの人ならば何か知っているかも知れない。

 「よし、そうするか」

  俺はベッドから降り、首の闘気制御装置に触れる。
  闘気を使えなくするマジックアイテム。
  闘気を集中しようにも、砂が指の間から零れ落ちるように闘気が漏れてしまう。
  普通の闘士なら。
  だが俺は確信していた。
  このマジックアイテムでは俺の枷足りえないと。
  コレまでは考えが纏まっていなかったのと、決意が出来ていなかった所為で動けなかった。
  だが今は違う。
  俺は体の奥から闘気を吐き出し続ける。
  マジックアイテムによって闘気が霧散していく。
  もっとだ、もっと大量の闘気を一気に溢れさせるんだ。
  バケツに入りきらない程の水を流し込む様に、袋に無理やり物を詰め込むように。
  マジックアイテムが耐え切れないほどの闘気を一気に注ぎ込む!!!
 パキッっという音がなった。
  そして床に首輪が落ちる。
  霧散していた闘気が急激に集中していく。
  首輪が床に落ちる。
  そして……

 俺のあふれ出した闘気で、王城にいる全ての生物が気絶した。
  それは魂の自衛行為だった。
  ブレーカーのヒューズの様に、魂を護る為に意識を失ったのだ。

  俺はそっと壁に手を当てる。

 「【紅蓮顕現】」

  部屋の壁が闘気の剣で切り裂かれ、人一人が通れる穴が空いた。
  そして俺は、取上げられた自分の荷物を見つけてから、闘気ジェットで故郷へと向かった。
  校長の居るドーレンの町へ。 
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