クロヴァンの探偵日記

高松 津狼

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第二章 東の市場編

第17話 宿の殺害事件 Ⅱ

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「わかりません。可能性が低くなったとだけとしか言いようがないです。」

と言った。
すると男性Bは私に急に怒鳴りつけ、私を罵倒しはじめた。

「お前さっき解決出来るって言ってたよな。ふざけてんじゃねぇぞ!」

私はその言葉に少しギョッとしたが、私..『解決する』ことは表だって言ってない気がするんだけどな...
でも私はこの男性に少し興味が沸いた。というのもこの男性、もし仮にも犯人だった場合は優秀だからだ。
明確に一人の敵を作っておけばその間にも毒素は明確に検出できなくなる。そして衣服に付いてしまっている毒素も検出は難しくなるだろう。そうすれば、私がこの事件を解決に導くのは困難になる。
であるならば、私は変にここで口答えせずこの男性がボロを出すのを待つべきな気がする...

でも、まずは一旦、別の話題を一度振ってみること。まずは名前を聞いてみよう。
苗字などで、稀にその人の役職を特定できるかもしれないし...それに物事整理するのに、名前があった方が便利だしね。

私「まあまあ、落ち着きましょうよ。ところであなたの名前はなんですか?」

こう私が返すと、男性は再び怒った。

男性B「あ?僕の名前なんて言うわけないだろ!」

男性Bはそう返したので、私はあえてそっけない態度を取り、他の人にも同じ話題を振ってみた。

私「あなた達はなんて名前ですか?」

男性A「俺の名前は、マシュイーン・クレドだ。」

よくいる普通の名前をした男性だ...なにかの伝記や小説に乗ってるような名前ではない...な。

女性A「あ、あのぉ...私の名前は、アイルバイトン・マルドセンといいます。」

マルドセンはこの辺ではあまり聞かない苗字だが、北の方の住民ではさほど珍しくない名前だ。

私は再び男性に目線を移し、少し怪しむ素振りをあえてしてみた。
名前をここで引き出せばなにか関係を見出せる可能性もある。
すると男性Bは少し動揺している様子だった。
怪しい...

男性B「僕はペナン・セルバ...って言うんだ。」

男性は少し自信なさげにそう言った。
ペナン...。ペナン家はその昔薬品を作っていた過去があったはず。全く同じ家系なのかどうかは知らないが、ペナン家という苗字はなにか引っかかるところがある...

まぁでも勝手な先入観だけで犯人と決めつけるわけにはいかないか...

もう一度状況を整理してみよう。

さっきの部屋には明確な証拠などは残っていなかった。衣服の破片や毛玉程度では情報を短時間で処理するのは難しいので、そもそもその類の情報は探索してすらなかったが、恐らくその手の証拠はなかったと思われる。

唯一証拠としてあったのは、花瓶の底に活性炭があったということなのだが...

すると、突如クレドさん(男性A)が私に話しかけてきた。

クレド「そう言えばなんだけど探偵さん。今日の朝さ、俺この辺でレモンの臭いがしたんだよね。役に立つ情報だといいんだけど。」

レモン...! これは重要なキーワードだ。
私は眉を上げて質問をしてみた。

私「その直後に誰か通りませんでしたか?」

男性は少し残念そうな顔をして私に言った。

クレド「残念だけど見てないんだよね...」
クレド「でも俺さ、コイツ怪しいと思うんだよな。」

クレドさんが声を大きくあげてそう言いながらペナンさんを指した。

クレド「おい、お前!あの注射器どっから持ってきたんだ。俺は見てたんだよ。」

注射器...?なんだその話...どっから出てきた?
私は知らない話が出てきたので、クレドさんに少し聞いてみた

私「その、注射器ってなんですか?」
クレド「今日コイツが、朝注射器を持ってこの廊下を去っていたのを俺は見たんだよ。それってつまりその注射器がどっかにあるんじゃねーの。」

クレドさんはそう言った。

私「なるほど...だとしたらこの人の部屋に行けばあるかもしれませんね。」

私はあえてそう返してみた。

クレド「じゃ、そうしようぜ。なあ?ペナンさんよ?」

クレドさんは蔑むような目でペナンさんを睨みつけながらそう言った。

ペナン「は?なんでそんなことされなきゃいけないんだよ!」

ペナンさんは睨み返してそう言った。

だが、私は無防備で部屋の中に行くなんてことは絶対にない。
仮にこの二人がグルだった場合、私が気づく前に殺そうと試みている可能性がある。だとすれば部屋に連れ出す口実を作り、その上で私がこのペナンという男の部屋を無防備で探索したらきっと背後から襲われて殺されるのだろう。

…いや違うか。私の先入観で勝手に決めつけてはいけないな。
なにしろ情報が少なすぎて...判断がこの短時間で出来るわけがない。
困ったなぁ...
しかも、この辺の緑樹人の服装はほとんどみんな同じような服装であるから変わった特徴の服を着ているのは寧ろ珍しいのだが...

ん?なにかひっかかるなぁ...

服装...
そう言えば、ここにいる人の服装って少しずつ違うな。
もちろん全員茶色の服を着ているのは同じなのだけど...

よく見てみるとペナンさんとマルドセンさん(女性A)が着ている服は麻を使った服。羊の毛を使った服を着ているのはクレドさんだけだ。

…。

これは絞れるかも知れない。もし今の服の状態で犯行に及んだとしたのならば、恐らくその毛玉や素材は接触した部分にあるはずだ。もちろん目視では区別がつかないだろうからここは少し知恵を絞ることにしよう。

私は自分の服を整え、コホンと咳き込みこう言った。

私「突然すみませんが、マルドセンさん。キッチンから石鹸と水の入ったコップを取ってきてくれませんか?」
マルドセン「はい...?えっと...石鹸と水ですか?。わかりました。」

マルドセンさんは少し戸惑いながらも私の言われたとおりすぐにキッチンに向かって石鹸と水を取りに向かった。
私はマルドセンさんが石鹸と水を取りに行っている間に、再びポケットからハンカチを取り出して、口を覆いながら事件が起きた暗い部屋へ入った。

片手をハンカチで抑えながらそっとポケットから虫メガネを取り出して、部屋の入り口の床を目を凝らしてよく見てみると、なんと都合のいいことか毛玉のようなものが落ちていた。
真っ暗な部屋で床になにが落ちてるかは認識出来なかったが、どうも犯人は分かりやすく証拠を残していってくれた。もしかすると昼間であれば容易に犯人の特定が出来たのかも知れない。

私はそれを集めてポケットの中にある収容瓶にいれた。

さて、あとはこの死んだ人の名前なのだが...死体の近くになにかあったはず...?
私はもう一度部屋の奥に進み、死体のポケットからわずかにはみ出している手帳を見つけた。それを確認すると名前が書いてあった。

名前はエア・メルドアンと書いてあった。中央市場のアンコールバイトンにて働いているようだ。私は行ったことはないが、とんでもない大都市だと聞いている。どこにあるのだろうか。

かなり重要なことだ、覚えておこう。

私はその人の手帳に書いてあった記述を要約して、私の手帳にメモをした。
私はメモを終えて部屋から出ようとすると、ドアのラッチの部分が大きく変形してることに気づいた...

ドアのラッチの部分は部屋側に大きく変形しているということは、内側から大きく力を加えないと起きない現象だ...つまりこのメルドアンさんは苦しみながら必死にドアを開けたということだ。
これは重要な形跡だ。

ふと目線を部屋の外にそらすと、見知らぬ人が一人増えていた。
202号室から来た人「はいあの...202号室から来たメリー・ライトと申します。少し騒ぎが聞こえたので気になって..」

どうやら202号室から来たメリーさんと名乗る女性はこの騒ぎが少し気になってこちらに来たようだった。

私「そうなんですね。ところで今、私はここの調査をやっているんですけど、なにか気になることってありましたか?」

メリー・ライト「そうですね...実はかなり気になっていたんですけど、この宿は20時を過ぎたら基本外に出るのは控えなきゃいけないんですよ。」
メリー・ライト「なぜか廊下から足音がしたんです。それも2回も。こんな夜遅くに。」

そう言うと、メリーさんは話を続けた。

マルドセン「1回目は確か21時35分頃だったでしょうかね?」
マルドセン「2回目は確か21時40分頃だったかと」
「そして2回目の足音の前に扉をガタガタガタと余りにもけたたましく鳴らすものでして気になっていたんですよね。」

これはほぼ決定的な証拠になる。ただこの宿には時計なんてあっただろうか?

私「因みに時刻はどちらでご確認されました?」

私はそう聞いた。

「私の部屋の中には宿の時計があるのですが、そちらで確認していましたね。余りにも大きな音だったので。」

メリーさんはそう答えた。

なるほど...時計がある部屋とない部屋がこの宿にはあるのか...。それにしてもその時計が示している時刻が正しい限り、犯人はほぼ間違えなく5分の間に犯行したことになる。

なるほどこれは決定的だ...2回足音がなった恐らく出入りしたということだろう。
メリーさんの話を聞いて犯人がどのように動いたかを考えていると、マルドセンさんが石鹸と水をトレイの上に載せて運んできてくれた。

マルドセン「これでいいですか?」
私「はい。大丈夫です。」

私はそう答えると、さっき部屋の中で見つけた茶色の毛を取り出して、マルドセンさんにそっと渡した。

私「触ってみてください。これふわふわしてますよね?」

マルドセンさんは少し困惑しつつもこう答えた


マルドセン「ええ。確かにふわっとしていますけどこれがなにか・・・?」

普通の人ならたしかに困惑するだろう。だがしかし、今からやることは、犯人を絞るためのちょっとした技術なのである。

私「今からこれを石鹸の水につけてみますね。」

石鹸を水の入ったコップに入れ、先程取ってきた茶色の毛を入れてみた。
すると、その茶色の毛はぬめりを帯びて溶け始めた。
つまりこれは...動物性のタンパク質を有していることになる。つまりこれは殺害者が動物性の素材を使った服を着ていたことになる。
私は少しニヤけながらこの結果に満足していると、マルドセンさんが不思議そうな顔をして見てきた。

マルドセン「あの~なんで茶色の毛に石鹸の水をつけたんでしょうか。」
私「あ~実はこれ、毛の種類をあぶり出すために行ったんですよ。これが決定的な証拠になるのでね。」

私はそうドヤ顔で応え、この茶色の毛を取り出して、石鹸の水につけた茶色の毛を乾かして、それをマルドセンさんに渡した。

私「どうですか?さっきと違って毛ゴワゴワしてませんか?」
マルドセン「ほんとだ。さっきと違ってゴワゴワしてる!」

マルドセンさんは少し驚いたような顔をしてこちらを見た。

私「犯人がある程度絞れましたね。」

私はそうマルドセンさんに告げる。

この実験により怪しいと思っていたペナンさんや食べ物を運んでくれたマルドセンさんも犯行は不可能ということになる。なぜならこの茶色の毛は石鹸の持つアルカリ質に反応してゴワゴワとなったからだ。これはつまるところ、犯人は動物性の繊維を使った服を着ていたことが明らかとなったからだ。

もちろんクレドさんが確実に殺したというわけではないが、少なくとも今出た証拠からペナンさんやマルドセンさんが部屋に入った可能性は探ることが出来ないことは確かだ。

しかし、ここから更に絞り出すのは難しいだろう..
また、もう一つの壁に当たってしまい私は少し落悩んでいると、マルドセンさんがもう一つ決定的な証拠を言ってくれた。

「そう言えばなんですが、そこにいらしたクレドさんって方は今朝方当宿では禁止されている漂白剤を持参していましたけど、なにか関係とかあるのでしょうか?」

漂白剤...!?

確か漂白剤とオレンジやレモンのような柑橘系のものがあれば『例の毒』を作れるはず。

いや待て待て、もしなんらかの果物をこの宿で購入したのだとすれば、売店で誰か一人くらいは顔を覚えてるんじゃないか。

そこで、私は一度、下の階の売店で調査をしてみることにした...
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