始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

文字の大きさ
4 / 110
第1章 迷々の森

4.ポニテのおじいさん

しおりを挟む



チチチ……ピチュピチュチュ………




「ん…あ、さ?でも、まだ眠い……」




顔に当たる陽を遮るように

ん?

布団?

布団にもぐる??




ガバっと勢いよく起き上がり、一瞬頭がふらつきつつも周囲を見回した。

知らない部屋、高級ではないが今生の実家より良い部屋だというのがわかる。

窓の外には木が見えることから、森の中にある家だったりするんだろうか?




「奴隷商とか変な人なら、こんな風にベッドに寝せてないから…誰か助けてくれたのかな」




―――ガチャ―――




ドアから入ってきたのは、長い白髪をポニーテールにした空色の瞳をしたおじいさんだった。

おじいさんだけど、かっこいいわ。




「お?起きとったか。まだ寝てると思って、ノックせずに入ってしまってすまんかったのぅ」




おじいさんは、謝りながらこちらへと近づいてベッド側の椅子に腰掛けた。




「いやいや、昨日の夜に森で君のような幼子が、木にもたれて眠っていてとても驚いたよ。

あんな所で放置もできんから、とりあえず連れてきたのじゃが……。

何か、訳があって夜の森…しかも『迷々の森』と呼ばれる厄介なとこに入ったのじゃろ?」




「うん…。

あ、あのね、私が5歳の誕生日を迎える前に逃げたかったの。

逃げないと………両親に売られてしまうから。

私の上の兄たちも、みんな5歳を迎えたら両親に売られておじさん達に連れて行かれたのよ。

本当は、弟妹たちも連れてきたほうが良かったのかもしれないけど、3歳、2歳、1歳を連れて逃げるなんてまだ5歳の私には無理だったし…」




話しながらだんだんと俯いていき、しまいには目に涙も滲んできた。

兄にだけ家族愛があったと思ったけど、ちゃんと下の子たちにもそういう思いを抱いていたと今言葉にして自覚した。

自覚してしまうと、連れてこれなかった後悔や自己嫌悪が心に重くのしかかってくる。



いや、実際に心ではなく頭に重みを感じる…?




「そうかそうか。

よく逃げてきたのぅ。

…環境が良くないのによく心優しくさだったものだ。




お前さんの逃げてきた村と両親の名前はわかるかい?」




「えっと…ロローシュ村だった、はず。

両親の名前はー…父がケビンで母がマリーです。

家名は知らないです。



知ってどうするの?

私を………家に戻すの?」




聞かれるまま答えるうちに、せっかく逃げてきたのにあの家に戻されるのかと怖くなり、少し後ずさった。

おじいさんは、わたしの怯えを見て慌てて否定してきた。




「そ、そうじゃのぅて、わしの記憶にある噂がその村と人物と同じかと思うてなぁ。

決してお前さんを、家に戻すためではないので安心しておくれ」




「?

私の村と家がおじいさんが聞いた噂と似ているの?」




「んー………とても似ているのぅ。

よし、ちーと気になるから少し覗いてくるかのぅ。

噂通りなら………そろそろじゃろうし。



きっともうすぐ、お前さんの弟妹たちも救われるはずじゃ。

すごく心配じゃろうが大丈夫、というわしの言葉を信じてくれんか?」




大丈夫?

弟妹たちも救われる??

初対面の人の言葉をそのまま信じていいものかな?

でも…




「むむむー………。

んー………おじいさんは私をここまで運んでふかふかベッドで寝かせてくれたし、おじいさんから悪いものは感じないし…………。

うん、よしっ!

弟妹たちは大丈夫だって信じる!」




おじいさんを信じる宣言をした私の頭を、再びおじいさんはなでなで…いや、髪が鳥の巣になるほど激しく撫でられた。

文句を言いたかったが、ものすっごく嬉しそうなおじいさんの満面の笑みを見たら言えなくなってしまった。
















おじいさんが部屋を去ったあと、元々絡みやすかった髪をほぐすのにお昼までかかったと言っておこう。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...