始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

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第3章 北の都市スウェトルノーツ

12.すごい。

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遅くなりました。
また風邪を引いてしまいましたー…(TдT)
うーん、免疫強くせねば∠( ゚д゚)/

─────────────────



街崩壊の危機が去り、リアとロナそれとセリ父以外の面々がホッとしている中、鼻をすする音が聞こえてきた。

音源は言わなくてもわかりそうだが…セリ父だよ。



「うぅ…グスッ……私の可愛い可愛い可愛い可愛いセリたんがぁぁ……お、お嫁、にぃぃぃっ……ズビッ」



うわぁ…………涙と鼻水でイケメンが台無しだよ…。

周りを見ればみんなも同じように、うわぁって顔してる。



ガチャ…



出入口扉が開く音がしたので、そちらに顔を向けた。

可愛らしい清楚な服装の女性が立っていた。



「ああ、ココロンさん良いところに来てくれた」



「ふふ、なんとなく今かなーって思って来てみたの。

ちょうど良かったみたいね」



ん?

ヴェンさん達の知り合いかな?

…んん?

誰かに似てるような……。

誰に似てるのか考えていたら、ココロンさんがベソベソと泣いてるセリ父の所へ優雅に、そして足早に近付き…しゃがみこんだ。

……あの所作は貴族だよね。



「ハリー」



セリ父、ハリーって名前?愛称?なんだね。

でもね、そんなことよりココロンさんの優しげな表情と声なのに……なぜだか体が震えるのです。

アヴィがぎゅっ…と震えが止まるように後ろから抱き締めてくれます。



「ココたん?

私のために来てくれたのか?」



「ええ。

来ましたの。

また、あなたがぐずついてる感じがしましたの」



涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔で、セリ父は子供のように嬉しそうに笑った。



「ココたん!

どうしようっ私達の可愛い可愛い可愛い可愛いセリたんがお嫁に行ってしまう!」



セリ父の言葉に、ココロンさんはニーッコリと深い笑みを浮かべた。



ガシッ



「えっ?」



急にココロンさんが、セリ父の髪を掴んで上に引っ張り出して、驚いて思わず声が出てしまった。

他の人は特に驚いた声も表情もしていない。

…これは見慣れた光景なのですか?



「ハリー?

娘はいつかお嫁に行くものよ。

私だって、あなたのお嫁さんとして家から出たのだもの」



「で、でも、まだ早いと私は思───」



あ、さらに上に引っ張ってる。

…あの部分、禿げたりしないのかな。



「早くなどないわ。

だって、私があなたと結婚したのは成人したその日だもの。

……ね?」



「あ……いや、うぅぅー……」



スッと綺麗な動きでココロンさんが立ち上がった……セリ父の髪を掴んだまま。



「皆様、うちのハリーがご迷惑をお掛けしました。

申し訳ありません。

これを連れて帰りますので失礼します。



ほら、行きますわよ」



ぐいっとセリ父を…髪を引っ張って行くココロンさん。

引っ張っているのに、所作が綺麗なのが凄いです。

入り口まで行ってそのまま出るかと思いきや、くるっとこちらに振り向いた。



「そうだわ、ラフィリアさんという方はいらしてるかしら?」



わ、私ですか?!



「あ、はいっ!

私でございまする!!」



何のために呼ばれたのかわからなかったため、緊張で語尾が少々変になったが誰も突っ込まないで欲しい…。



「あなたがラフィリアさんなの…。

そんなに緊張しないで?

ただ、お礼が言いたかっただけなの。


うちのセレインと仲良くしてくれて、どうもありがとう。

良かったら、今度うちに遊びに来てね?

私、お料理とか頑張っていっぱい振る舞っちゃうわ」



ココロンさんの可愛らしいウィンク頂きました。

同性だけど、キュンとしました。



「は、はい。

遊びに行かせていただきます」



「ええ、待ってるわ。

じゃあ、またねー」



手をフリフリして宿の出入口扉からセリ父を連れて…引っ張って出ていった。



「相変わらず凄いお姫さんだなー」



「え?

ココロンさんってお姫様だったんですか?!」



「それは、違うわ。

ココロンさんはね、冒険者を以前していたんだけどランクがSだったの。

その時に付いていた名が『無血の氷姫』なのよ」



あんなに所作が綺麗な女性がSランクの冒険者?!

しかも、無血の氷姫ってなんですか?!



「ハハッ驚いてるな!

ついでに、名の由来も教えてやる。

あのお姫さんは、初めから所作がとても綺麗で有名でな、ギルド内では姫と愛称がついていた。

だけど、実力も飛び抜けてあったからすぐに上へ登り詰めた。

でだ、そのお姫さんは強さは氷の術。

敵の急所にまず氷の剣を刺すんだ。

すると、その刺した瞬間に敵は氷漬けで血も流れ出る暇もない。

だから、無血の氷姫と名がついたんだよ」



「すごいんですねー…」



「ああ、すごい。

そんな凄いお姫さんをあのハリーが射止めた時は驚いたなぁ!」



「確かに…」



どうやってココロンさんのハートを射止めたのか不思議に思っていたら、セリちゃんが答えを言ってくれた。



「あー…私なんでか知ってる。

今日みたいにぐずついてる父にイラついて、つい髪を引っ張ったら……………気持ち良かったんだって。

他の人でも試してみたけど、父が一番しっくりきたから結婚したって言ってた」



セリちゃんのご両親は色んな意味ですごいのね……。






      *  *  *






『あの夫婦すごいよね』



『うん、でも、仲良い』



『うん…男…の方…もあれ…好き』



人ってやっぱり面白い、と思う精霊たちでした。


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