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一章「異世界に転生した」
なんか転生したら牢屋の中なんだが
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「さあ、3000万です。3000万が出ました」
「5000万!」
「7000!」
「さあ、7000万です。他にいらっしゃいますか?」
「7500万!」
「1億」
「1億です。ほかにいらっしゃいますか。いらっしゃらない。19番のお客様が1億で落札です!!」
なんでこんなことになっているんだ。俺が異世界にTS転生して、しかも適当な服着せられたうえに拘束されてオークションにかけられる人生ってどうなっているんだ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
んあ……何が起こったんだ。俺は多分、家に帰ろうとしているところだった。いつも通り仕事で疲れていたし今日も帰って寝るだけの生活が待っているのだと思っていた。俺の生活が変わることはない。仕事が終わったら、駅前のスーパーで適当なお惣菜を買ってそれを食べている。お米は休日にまとめて炊いて冷凍してある。それは別に手間でもないし、その程度の手間で食事だけでも人間らしく慣れるというのなら安いモノだろう。
そんな感じの生活が社畜の俺は毎日しているはずだった。
最寄り駅のスーパーに寄ったところまでは覚えている。その後、歩いて帰るのだが、信号はいくつかあるので、それも少し渡った。思い出すに、どうもヘッドライトが俺を照らして眩しかった記憶がある……それかもしれない。つまり、俺は交通事故とやらに巻き込まれた可能性が高いということだ。まったく不運なことだ。保険金は大丈夫だろうか。最低限、無保険の車に轢かれていないことを祈るばかりだ。
「ならここは病院か。その割に暗いな」
それに何だか声すごく高い気がする。少なくとも俺は生物的には男だし、声帯についてもその認識だと思っているのに、この高さは明瞭に違和感を覚える。しかもなんだか髪も長い。少なくとも俺は短髪だ。整髪料つけて営業するような仕事なので下手な髪形はしてない。しかも病院にしては閉塞感があるような……
「いやちょっと待て。変だ。これはおかしい」
起き上がって下半身を確かめるとナニがない代わりにたわわな胸があった。触ってみると確かに柔らかい。
「これはつまり、女の身体だな」
ひどく冷静だ。そうあろうとしているのではない。脳の処理が追い付かなさ過ぎて冷静にしかなれないのだ。
「服は着ているけど、ここはどこだ。何か牢屋の中みたいだし。ん?牢屋……」
もしかして俺、詰んでるくね。
「TS転生した可能性が高いまでは良いけど、それで牢屋の中。そして薄暗く、牢屋も狭い。どう考えても奴隷か、犯罪者か囚われた娼婦的な何かじゃん」
最悪は犯罪者か。どっちにしてもエロゲであればメス堕ち待ったなしだ。それも待てば自分の立場だって分かるだろう。それまでは転生しているかもしれないのだから魔法とかがないか確かめてみようじゃないか。ロマンを求めるしかないだろう。絶望に行く前になあ!
「ステータスオープン」
定番はこれだろう。でも何も出ない。そりゃそうだ。そんなゲームみたいな世界があってたまるかよ。それに自分のスペックなんて把握したくもあるけど、絶対的なじゃなくて相対的な比較しかできないから努力して何とかなるのであって、数値的な絶対の差があれば努力する気にもなれない。残酷に他ならない世界になってしまうだろう。
さて、次は魔法か。魔法と言えば何かの詠唱だろうけど何があるかな。
「アイテムボックス」
これも定番だろう。収納魔法は便利だろうな。反応は何もなし。使えないらしいが、確かにこれも大概だからなくて当然かもしれない。そしたら次はなんかかすり傷とかあるし、これでどうだろう。
「ヒール」
お、何か淡い青色が傷口を包んでいく。そして治った。へえ、これは便利だな。絶対に回数制限とかはあるだろうし、魔力なんて定量的な値はないだろうけど、人間が使う以上、体力と同様に限りのあるものであることは間違いないだろう。さて、回復系があるということはこれもあるだろう。
「クリーン」
これも淡く光った。そして俺の身に着けていた服が綺麗になった。というか、服と言っていいのかも怪しいラインでぼろいけども。とりあえず、無機物にも問題ないということでこの牢屋の中にも使ってみた。特にトイレ。目をそらそうとはしていたけど何か臭う。
「クリーン」
何かマシになったような気がする。特に身体に負担もない。攻撃魔法はどうなんだろうと思うけど、あまり気が進まない。仮に炎系の魔法を使って火事になろうものなら、逃げだせず、焼死エンド待ったなしだ。だから氷系の冷たい奴しか無理だろう。
「アイス」
何も出ないらしい。俺に氷系の魔法はないのかもしれない。しかし、こんな閉じ込められている身としては攻撃系よりむしろ、回復と浄化があって助かったのかもしれない。
「なんだ、誰か来る」
数人の足音がこちらに近づいてくる。どんどん近づいてきて、俺のいる牢屋の前で止まった。
「起きたか。まったく、手間をかけさせられたからな。お前には」
「どういうことだ」
警戒しかない。目の前にはいるのは恰幅の良い、明らかに怪しいおっさんと、ガラの悪い取り巻きが二人だ。
「たくさん暴れてくれたもんだ。その損失分くらいの利益は出してもらわないと困るということだ」
低い重厚感のある声がマフィアのボスを想起させる。
「お客様の準備はもうできている。さあ出ろ」
後ろに下がったが、もとより狭く、俺に逃げ場所などない。すぐに腕を掴まれ、あっという間に拘束された。手枷に足枷、首輪までつけられた。状況が状況なら興奮する変態もいるのかもしれないが、生憎俺にはそんな趣味はない。歩きにくいったらありゃしない。
「どこに連れて行く気だ」
「お前は奴隷だ。しかも女だ。ならばどういうところに行くのかくらいは想像できるだろう。無駄口をこれ以上叩くようなら喋れなくしてやる」
首輪と手枷につけられた鎖を引っ張る力が強くなってこけそうになったが、それを気にもしない。そしてしばらく歩くと、一層明るい場所が見えてきた。そしてそこにどんどん引っ張られていく。そこはステージみたいで椅子にはたくさんの金持ちそうな人がいる。俺は台に立たされた。
「5000万!」
「7000!」
「さあ、7000万です。他にいらっしゃいますか?」
「7500万!」
「1億」
「1億です。ほかにいらっしゃいますか。いらっしゃらない。19番のお客様が1億で落札です!!」
なんでこんなことになっているんだ。俺が異世界にTS転生して、しかも適当な服着せられたうえに拘束されてオークションにかけられる人生ってどうなっているんだ!!
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んあ……何が起こったんだ。俺は多分、家に帰ろうとしているところだった。いつも通り仕事で疲れていたし今日も帰って寝るだけの生活が待っているのだと思っていた。俺の生活が変わることはない。仕事が終わったら、駅前のスーパーで適当なお惣菜を買ってそれを食べている。お米は休日にまとめて炊いて冷凍してある。それは別に手間でもないし、その程度の手間で食事だけでも人間らしく慣れるというのなら安いモノだろう。
そんな感じの生活が社畜の俺は毎日しているはずだった。
最寄り駅のスーパーに寄ったところまでは覚えている。その後、歩いて帰るのだが、信号はいくつかあるので、それも少し渡った。思い出すに、どうもヘッドライトが俺を照らして眩しかった記憶がある……それかもしれない。つまり、俺は交通事故とやらに巻き込まれた可能性が高いということだ。まったく不運なことだ。保険金は大丈夫だろうか。最低限、無保険の車に轢かれていないことを祈るばかりだ。
「ならここは病院か。その割に暗いな」
それに何だか声すごく高い気がする。少なくとも俺は生物的には男だし、声帯についてもその認識だと思っているのに、この高さは明瞭に違和感を覚える。しかもなんだか髪も長い。少なくとも俺は短髪だ。整髪料つけて営業するような仕事なので下手な髪形はしてない。しかも病院にしては閉塞感があるような……
「いやちょっと待て。変だ。これはおかしい」
起き上がって下半身を確かめるとナニがない代わりにたわわな胸があった。触ってみると確かに柔らかい。
「これはつまり、女の身体だな」
ひどく冷静だ。そうあろうとしているのではない。脳の処理が追い付かなさ過ぎて冷静にしかなれないのだ。
「服は着ているけど、ここはどこだ。何か牢屋の中みたいだし。ん?牢屋……」
もしかして俺、詰んでるくね。
「TS転生した可能性が高いまでは良いけど、それで牢屋の中。そして薄暗く、牢屋も狭い。どう考えても奴隷か、犯罪者か囚われた娼婦的な何かじゃん」
最悪は犯罪者か。どっちにしてもエロゲであればメス堕ち待ったなしだ。それも待てば自分の立場だって分かるだろう。それまでは転生しているかもしれないのだから魔法とかがないか確かめてみようじゃないか。ロマンを求めるしかないだろう。絶望に行く前になあ!
「ステータスオープン」
定番はこれだろう。でも何も出ない。そりゃそうだ。そんなゲームみたいな世界があってたまるかよ。それに自分のスペックなんて把握したくもあるけど、絶対的なじゃなくて相対的な比較しかできないから努力して何とかなるのであって、数値的な絶対の差があれば努力する気にもなれない。残酷に他ならない世界になってしまうだろう。
さて、次は魔法か。魔法と言えば何かの詠唱だろうけど何があるかな。
「アイテムボックス」
これも定番だろう。収納魔法は便利だろうな。反応は何もなし。使えないらしいが、確かにこれも大概だからなくて当然かもしれない。そしたら次はなんかかすり傷とかあるし、これでどうだろう。
「ヒール」
お、何か淡い青色が傷口を包んでいく。そして治った。へえ、これは便利だな。絶対に回数制限とかはあるだろうし、魔力なんて定量的な値はないだろうけど、人間が使う以上、体力と同様に限りのあるものであることは間違いないだろう。さて、回復系があるということはこれもあるだろう。
「クリーン」
これも淡く光った。そして俺の身に着けていた服が綺麗になった。というか、服と言っていいのかも怪しいラインでぼろいけども。とりあえず、無機物にも問題ないということでこの牢屋の中にも使ってみた。特にトイレ。目をそらそうとはしていたけど何か臭う。
「クリーン」
何かマシになったような気がする。特に身体に負担もない。攻撃魔法はどうなんだろうと思うけど、あまり気が進まない。仮に炎系の魔法を使って火事になろうものなら、逃げだせず、焼死エンド待ったなしだ。だから氷系の冷たい奴しか無理だろう。
「アイス」
何も出ないらしい。俺に氷系の魔法はないのかもしれない。しかし、こんな閉じ込められている身としては攻撃系よりむしろ、回復と浄化があって助かったのかもしれない。
「なんだ、誰か来る」
数人の足音がこちらに近づいてくる。どんどん近づいてきて、俺のいる牢屋の前で止まった。
「起きたか。まったく、手間をかけさせられたからな。お前には」
「どういうことだ」
警戒しかない。目の前にはいるのは恰幅の良い、明らかに怪しいおっさんと、ガラの悪い取り巻きが二人だ。
「たくさん暴れてくれたもんだ。その損失分くらいの利益は出してもらわないと困るということだ」
低い重厚感のある声がマフィアのボスを想起させる。
「お客様の準備はもうできている。さあ出ろ」
後ろに下がったが、もとより狭く、俺に逃げ場所などない。すぐに腕を掴まれ、あっという間に拘束された。手枷に足枷、首輪までつけられた。状況が状況なら興奮する変態もいるのかもしれないが、生憎俺にはそんな趣味はない。歩きにくいったらありゃしない。
「どこに連れて行く気だ」
「お前は奴隷だ。しかも女だ。ならばどういうところに行くのかくらいは想像できるだろう。無駄口をこれ以上叩くようなら喋れなくしてやる」
首輪と手枷につけられた鎖を引っ張る力が強くなってこけそうになったが、それを気にもしない。そしてしばらく歩くと、一層明るい場所が見えてきた。そしてそこにどんどん引っ張られていく。そこはステージみたいで椅子にはたくさんの金持ちそうな人がいる。俺は台に立たされた。
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