君は今日から美少女だ

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着せ替え人形①

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「この書類は一体何が入っているんだろう」

 病院で渡された書類を見てみると、性転換症候群についてと書かれた書類が軽く見積もっても10枚以上。加えて、何やら重要そうな書類が何枚も入っていた。これを読むのは骨が折れそうだ。

「封筒を見たときから想定はしていたけど、見た目通りの量ね」

 それを丁寧に一枚目から読み進めることにした。

「随分と国の手当も充実しているのね。普通、ここまではやらないはずなのだけど」

「それだけ、精神に不調をきたす人の割合が多いってことじゃないかな。それとも、性転換症候群にかかった人本人もしくはその関係者に国を簡単に動かせるレベルの人がいたかのどちらか」

「姉ちゃん、それを想像したって仕方がないだろう。それよりはこんなにいっぱい色々としてくれることをラッキーだと思ったほうがいいんじゃない」

 そのあとも頑張って読み進めた結果そこに書かれていることはなんとなくわかった。まず、カウンセリングを無料で受けられること。名前の改名についても複雑な手続きをしなくてもできること。どういうわけか、国ではない組織からお見舞金が20万円ほどもらえるらしい。これが一番不思議なことだ。この組織はいったいなんだ。

「さ~て、書類も読み終わったしもういいわよね。恵也~、一緒に部屋に行こうか」

 姉の息が荒い。俺はこれから何をされるんだろうか。あんなことやそんなことはさすがにされないと思うが、それもされてしまうのではないかと感じてしまうくらいには不安だ。

「逆らったら?」

「私、恵也のパソコンと携帯のパスワードわかるんだけど、中にあるデータをお母さんに見せてもいいというなら、逆らってもいいんじゃない」

 しれっと怖いことをいうな。そんなこと言われたら、俺は姉についていくしかないじゃないか。それよりもどうして俺の形態やとかパソコンのパスワードを知っているのか。ハッキングをできるような人でもないし謎だ。下手したら諜報機関よりも情報収集能力があるかもしれないぞ。

「それで来るの? 来ないの?」

「行かせていただきます」

「素直でよろしい」

 あんたが素直に従わないといけない条件を出してきたんだろうが。まったくしたたかな姉だ。

「最初にこれを着て」

 姉が差し出したのは制服だ。これは車の中で言っていた通りだ。俺の高校の女子の制服はセーラー服だ。着る人によっては結構可愛くなる。今の俺の身長は姉と同じくらいだから、着ることはできるだろうが、どうやって着るのだろう――と言い訳することも出来ない。服である以上簡単に着ることができる。リボンなんかは俺が言わなくても姉が勝手に結んでくるだろう。やはり俺に着ないという選択肢はないらしい。

 スカートを身にまとうのは初めての経験だからか、この感覚は不思議なものがある。うちの高校の制服は丈が長い。つまり創作作品によくあるような限界ぎりぎりというほど短いスカートでない。

「姉ちゃん、俺嫌なんだけど」

「繰り返すけど、あなたのスマホやパソコンのデータをお母さんに見せるとからね」

「それでも嫌だと言ったら?」

「拒否権はないわ」
「ねえのかよ!」

 俺が甘かった。

「当然じゃない。こんなかわいい好き放題していい子が目の前にいるというのに何もしないなんてもったいなさすぎる。それは天を愚弄している行為になる。だから私は恵也を着せ替え人形にしたいのよ!!」

 あー、いよいよだめだこの姉は。おまわりさーん、こいつ危ないので連れて行ってください。電話をポケットからだして持ち上げた。

「それはさせない。その前にあなたの服をはぐだけよ」

 発言が完全に犯罪者のそれでしかない。

「や、やめろお……」

 姉に服を脱がされあまつさえ、下着さえも脱がされるってどんな羞恥プレイだ。俺の心はもうすり減っている。
 タスケテ

「大丈夫、痛くはしないから」

 そこから俺の記憶がない。気が付けば、俺はセーラー服を着て立っていた。いったい何をしたんだ、この姉は。

「やっぱり似合っているじゃない」

 姉はカメラで俺を撮り続けている。

「次はこれね」

 姉が取り出したのは薄いピンク地のワンピース。もう逆らうことのできない俺は姉にイエス・マムと言いそれを着た。

「これもいいわねえ。清楚な感じがしてすごく、こう…ゲフン。すごくあっているわ」

 この姉、絶対さっき興奮したとか言うつもりだったな。もう着せ替え人形の時間は早く終わってほしいものだが、なかなか難しいだろう。だって姉はまだ服を探している。

「次はこれ」

 姉が出してきたのは白いネグリジェだ。普段はジャージとかパジャマで寝ているのにどうしてネグリジェがあるのかも、引っ越しているはずなのにどうして実家にまだ大量の服が置いてあるのかなぞだ。

 

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