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一章「1人目の奴隷」
買う奴隷を決めました
しおりを挟む「いらっしゃいませ」
奴隷商に入ると、派手ではなく、質の良い上品な服を身にまとった初老に見える男性が出てきた。
「冒険者ギルドに紹介されてきたのだが、ここは奴隷商で間違いないか?」
「はい、私どもは奴隷を専門に扱う商会でございます。早速ですが、お客様はどのような奴隷をお求めでしょうか」
男は淡々としている。露骨な営業をすることもないし、どこか人間味に欠けている印象さえ受ける。
「そうだな。絶対条件として女性がいい。そしてこちらでも教育するつもりだが、ある程度戦えるとありがたいな。それに日常のことも出来るとさらに嬉しい。それから年齢はそこまで重ねていないことも必須だ」
「なるほど。それでご予算の方はいかほどでしょうか」
正直予算はそこまでない。今出せる金額を奴隷商の男に伝えると、腕を組み、少し考えを巡らせている。もしかすると、予算が少なすぎたのかもしれない。だが、数か月だけとはいえ、俺もそれなりには稼いだ。それこそ、家までは買うことはできないが、それでもそれの半分程度はある。それでも足りないというのなら、いくら人を商品にしているとはいえ、高すぎると感じる。
「その、不足か?」
「いえ、金額はまったく問題ございません。お客様の提示された額であれば、高級奴隷でない限り購入することが可能でしょう」
金額自体には問題がないとすると一体、何が問題というのか。その答えもこちらが聞くまでもなく、説明してくれた。
「実は当商会には現在、在庫はそこまでいないのです。つい先日、大量購入された方がいらっしゃいましたので、お客様のご期待に沿えるような奴隷がいるか微妙なのです。そこでどうでしょう、通常であれば、この場にお客様のご希望に沿った奴隷を数人この部屋に連れてきて品定めをしていただくのですが、直接、奴隷たちを見定めるというのは」
「普段奴隷がいる場所で選べと言うわけか」
「その通りです。正直、あまり気分の良い場所でもありませんので普段はそのようなことをしていないのですが、いかがでしょうか」
俺に直接様々な奴隷を見せてくれるというのだ。断る理由もないだろう。
「問題ない。そこで気に入ったのがいれば買おう」
「ありがとうございます。ではこちらへどうぞ」
男の先導の下、建物の奥に入っていく。薄暗く、どうも陰険な雰囲気だ。長時間の滞在は精神衛生上あまりよろしくはなさそうだ。
「ではここから先が奴隷たちのいる空間になります」
男は分厚い扉の鍵を開け、開けた。その扉をくぐると、明るさは窓があるおかげでそこまで暗くはない。しかし異質なのはそれではない。鉄格子で囲まれた小部屋が続いており、その中には誰かがいる。おそらくこの中にいるのが奴隷なのだろう。
「それで俺の希望する条件に適合する奴隷はどこだ」
「もう少し先になります。この辺りの奴隷は高級奴隷となっておりますので」
「その高級奴隷とそうでない奴隷はどこが違うんだ」
「当商会では奴隷は各人が持つ技能によって分けています。その中でも特別先頭に秀でている者、特殊なスキルを持つ者、性的なことについて仕込まれている者などは買い手もつきやすく需要がございます。それゆえ、価格も高く高級奴隷となっているのです。それら高級奴隷は普通の奴隷と比べると桁が異なるほどの差がございます」
「なるほどそんなに違うのか」
桁が違うってどんだけ値段が違うんだ。多分、家を買うよりも高くつきそうだな。それでも需要があるってことは、どの世界にも金持ちはいるってことだな。俺も頑張ろう。
そしてしばらく歩き、フロアも変わって、奴隷商の男が止まった。
「この辺りに奴隷が年齢的にはお客様のご要望に沿ったものとなります。戦闘面に関しては教育を施す旨を伺っておりますので、お客様の気に入った奴隷を選ばれるのがよいかと思います。またここにいる奴隷は日常的なこともそれなりには出来ますのでご安心下さい」
どうやらこの中から選べと言うことのようだ。さっき奴隷商は先日沢山売れて在庫がない的なことを言っていたのにいっぱいいるではないか。なぜ奴隷商があのようなことをいったのかよくわからないが、とりあえず選んでみよう。
改めて檻の中を見てみると簡素な服を着た女性が手足に枷と首輪をつけている。中々に良い光景だ。拘束されて行動を制限されている姿がどこか愛おしい。
「うーん、どの子も悪くはないけど決め手には欠ける……」
「左様でございますか」
「けど、もう少し見てみるよ」
そうまだもう少しはいる。一応は全部見ておきたい。
「なんでこんなところに……」
小さな声が檻の前から聞こえてきた。その反抗的な声の主も当然商品だ。
「へえ、こんなに反抗的そうな子もいるんだ」
「申し訳ございません。ですが、お客様のご要望には添える奴隷です」
そういわれてもう一度見てみると、檻の中から警戒している。耳も尻尾も警戒していることが分かる程度には用心しているようだ。それに目もきつい。
「せっかく、顔も良くてさらには可愛い耳と尻尾があるのに台無しだな」
流石に言い返すことはためらわれるのか睨みつけるだけで何も言ってこない。奴隷になる前に何かあったのだろう。
「この奴隷について詳しく知りたい」
「年齢は16歳で、ご覧の通り獣人でございます。この国では獣人がかつて被差別階級であったことも関係していまして、値段は同条件の人間の奴隷よりも低めに設定されています。態度につきましては少々問題がありますが、戦闘についても私どもの方で特別訓練を施しているわけではないですが、種族的に身体能力が高いので十分役に立つかと思います」
「日常のことのついてはどうだ」
「はい、そちらについても問題ございません。当商会でもその点は教育をしていますので、一通りのことができると考えていただいて構いません。また文字などについても当商会では教育していますので識字能力も備わっています」
識字能力があるのは結構ありがたいかもしれない。計算などは分からなくても俺が教えることが出来るが、文字は俺が転生してきている関係で中々難しい。色々なことを任せることもできる。
「気にいった」
このきつめの表情を見ていると興奮する。まったくこのような奴隷の心を開かせて心の底から従属させたいものだ。
「決めた。この奴隷を買おう」
この決断が俺の生活を充実させつ第一歩になるのだ。
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