愛させてよΩ様

ななな

文字の大きさ
16 / 23
1章

13

しおりを挟む
柄にもないことをしてしまった。
これじゃあ、僕がアル様を好きだというのがバレてしまう。
というか、今のでバレてしまったのでは。
アル様はあれから頬が染まりきって、なかなかいつものような涼しげな顔に戻らなかった。
それを、他の人に見せたくないと思ってしまった。
どうしようもないほど、愛しくて、また同じ顔をさせたい。
でも、誰にも見せたくない。
「アル様、お顔が緩んだままですよ。王族らしい表情に戻してください」
「......きみが、そうさせたんだろう。それなのに君が直せと言うのは理不尽ではないか」
照れた顔で、不満を訴えられても可愛いく見えてしまう。
「それは、そうですが......。アル様の、照れたお顔を誰にも見せたくないのです」
「また、そういうことを言う。今日はリオも変だよ」
「アル様が僕をおかしくしてるのに」
また、アル様の顔が緩み、せっかく冷めてきた頰がまた熱くなっている。
「......あまり、揶揄わないでくれ。俺はリオに弱いんだ」
「少し、休憩してから教室に行きましょう」
いつも登校は余裕を持って来てるので、休憩するだけの時間はある。
今日の僕はどうかしている。
アル様が照れたのを見ただけ、それだけなのに。
王族専用の部屋に行き、一緒にソファーに座る。
いつもはもっと詰めてくるのに、今日は少し、遠かった。
それに、少しもこっちを見ない。
普段は近くにいたら、穴が空くほどに見つめてくるのに。
「アル様、こっちを向いてください」
「......今はまだ見れない。大体、今日のリオはおかしいよ。片想いをし続けてきた私からしたら、期待してしまうよ」
「......運命じゃないのに?」
思わず、声が出た。
僕たちは運命じゃないのだ。
「運命じゃないと言われても、まだこんなに......」
「だめです」
それ以上は聞いてはいけない気がして、アル様の口を塞いでしまった。
王族の発言を遮るだなんて、首が飛んでしまう。
「だめだと言うのに、私をなかなか諦めさせてくれないなんて、君は酷い人だ」
「アル様だって酷い人です。運命じゃないのに、運命と言ったり、期待させるようなことばかりなさる」
「リオが頑固だからだよ。いつまでも認めてくれないから。期待していいのに」
「期待したら、後で辛くなるのは僕じゃないですか。」
「辛くなんてさせない」
「信じない」
「信じてよ」
今日の僕はやっぱり変だ。
信じたい。
信じたら傷つくのは僕だ。
そう、分かっているのに。
アル様の側にいたい。
もし、今番えるのなら、すぐに番ってしまいたい。
アル様の気持ちが変わらないうちに。
そう出来たのなら、どんなに幸せなんだろう。
アル様が運命だったらどんなに良かったか。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記

天田れおぽん
BL
 ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。  だけどオズワルドには初恋の人がいる。  でもボクは負けない。  ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ! ※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

子持ちオメガが運命の番と出会ったら

ゆう
BL
オメガバースのblです。

処理中です...