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29話 決着

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 騎士団の武器は、槍に剣、ハルバートにハンマー、大盾にバックラーと、それぞれ得意武器が違うんだな。騎士団て装備は揃っているのかと思っていたが、鎧だけのようだ。

「仮にも特級だ。油断するな」

「「「おう」」」

 ライルの掛け声に答える騎士団の面々。
 ふむふむ、大柄な騎士が前に出て盾役。その後ろにいつでも攻撃出来るように遊撃が隠れてるのか。

 左右にも広がり、後ろには魔法メインの遠距離系が補助につくと。なかなか考えてるじゃないか。
 模擬戦参加者は全員で十二人。意外と多いな……
 
 いやいや、俺ってレイドボス扱い?

「フウガ殿、どうしたんです?攻めて来ないんですか?」

 最後尾で指示役のライルが挑発してくるが、どうしたものか……
 倒すのは簡単だが納得させる戦い方を考える、考える、考えたけど思いつかん……

 いや、もう、面倒くさい。さっさと終わらせよう。

 鑑定してもどうせライルと同じ位だろう。もしくはライルが騎士団の中で一番強いのかもな。

「いくぞ」

 俺はゆっくり歩いて進み、木剣を地面に突き刺す。前衛の大柄な騎士二人が構えてる盾を掴んだ。

「な、なんだと!」

「そ、そんな!」

 盾ごと二人を持ち上げ、回転しその遠心力も利用して左右に広がった騎士にそれぞれ投げ当てる。

「ぐぁ!」

「うわっ!」

 すると盾役の後ろに隠れていた四人が襲ってきた。

 地面に刺した木剣を抜き取り、先ずは攻撃を木剣でいなして腹に一発。
「ぐぁっ」
――バキッ

 武器を振りかぶった腕を握り壊し、頭部に拳骨を一発。
「ぐぇっ」
――ビキッ

 蹴り上げてきた足を掴み、股間に木剣を振り上げ一発。
「ぐふっ」
――チーン

 盾を構えて突っ込んできたので、死角から素早く回り込み、少し強めに尻に蹴りを一発。
「おふっ」
――ベチンッ

 俺の周りに倒れて意識を失った騎士が四人。

「魔法だ。魔法を放て」

「「はっ」」

 慌てて指示を出すライル。後ろにいた騎士二人が詠唱を始めた。

 いや、今から詠唱ってどんな魔法を発動するか解るし、何より遅い。遅すぎる。

 先ずは一人目に近づき顎を打ち抜き気絶させ、直ぐに二人目の背後を取り、後頭部に手刀を打ち込み意識を刈る。

 さて、残りは四人。もうライル意外は戦意喪失して向かってくる気配がなさそうだ。

「どうする?まだやるか?」

「くそっ……」

 ライルの隣にいた騎士が恐る恐る提案する。

「た、隊長、もうやめましょう」

「うるさい、このまま負けを認めることなどできん。フウガ殿、こうなったら一騎打ちを申し込む」

 部下の提案を無視して、三人を下がらせ前に出るライル。

「わかった、付き合ってやるよ」

 ランドルフには悪いが、息子には少し教育が必要そうだ。

「おい、倒れてる騎士達を回収して、ラスに早めに治療してもらえ」

「は、はい!」

 ライルに話しかけた騎士にそういうと、直ぐに他の二人と行動してくれた。後遺症はないと思うし、ラスの魔法なら一発で治るだろうけど、念には念をというやつだ。

「それで、どうするライル?」

「剣で勝負だ」

「わかった」

「なぜ木剣なんだ?その腰にあるのは飾りか?」

「いや、これは人には使わないって決めてるんだよ」

「くっ、どこまでも馬鹿にして……」

 いやいや、してませんよ。これ使ったら恐らく手加減しても良くて致命傷、悪くて死亡してしまうだろう。

 ゲーム時代からプレイヤーは蘇生魔法が使えなかったから、殺人のリスクは最小限にしたいんですよ。あっ、アイテムはあるぞ!

「どうする?来ないならこちらから行くぞ」

「こい」
――バシッバシッバシッバシッバシッバシッバシッ

 構えたライル。俺は上段に構え八割の速さで真向切りから順番に攻撃を打ち込んでいく。流石に突きだけは危険なので、それを抜いての七連撃。

 その攻撃を全て受けて、ライルは立っているのもやっとの状態になる。

 流石に鎧の上からは木剣での攻撃が通りづらい。それでもかなりのダメージみたいだが、膝が折れない凄い精神力だ。意地ってやつか?

「どうする?まだやるか?」

「ま、参りました……」
――バタン

 一言言い残し、意識を失って倒れたライル。

「ラス、ライルの治療を優先で頼む」

「もう、人使いが荒いですよフウガさん。既に他の皆さんは治療が終わってます」

「悪いな、この埋め合わせは王都の夜にでも」

「任せてください。ちゃちゃっと全回復しますから」

 屋敷の窓を見ると、ブラスは驚き、ダインは喜び、ランドルフは申し訳なさそうな顔をしていた。

 さてと、宿を取りたいから、もうそろそろお暇しないとな。気まずいし……


 
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