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五章 予選結果発表!
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ハンドメイド甲子園の予選のために毎日集まっていたが、今は通常通りの部活に戻っていた。
火曜日と木曜日の放課後に集まり、各々が好きなものを作る。文化祭での販売に向けてのストック作りも兼ねていた。
「そういえばこの間ばりちゃんのクラスに行ったらさ、体育の後だったからか、制汗剤のスプレー地獄」
「わかる。人数分の匂いと煙が充満するよね~。あれって学年ごとに匂いの量が増えてる気がしない?」
「するする! 中一の時はシュッて両脇で終わりだったのに、高校になるとシューって長い上に、身体中にスプレーするよね」
「気になる場所が増えるんだよ」
高校生四人が大笑いするのを、穂波と和歌は目を瞬きながら不思議そうに見ていた。
「二人にもいずれわかる日が来るって」
美晴がそう言った時だった。家庭科準備室のドアが開き、竹代先生が入ってきたのだ。
「相変わらず賑やかねえ。というか高校生が、かしら」
「あっ、先生。どうしたんですか?」
木乃香が尋ねると、竹代先生は椅子に腰を下ろし、水色の封筒を机の上に置いた。それを見た全員が目を見開いた。
「こ、これってもしかして……」
慌てて立ち上がった美晴は封筒を掴むと、隅から隅まで視線を走らせる。封筒の左端に【予選結果在中】の文字を見た途端、震えが止まらなくなった。
「や、ヤバい……とうとう予選の結果が来ちゃったよ……」
美晴が握りしめてぐちゃぐちゃにしてしまいそうだったので、日和は封筒をさりげなく美晴の手から引き抜く。
「うわっ……微妙な厚み」
「本当だ。どっちの可能性もあるね」
日和と睦月は触りながら顔を顰めた。そこへ手を伸ばした穂波と和歌も苦笑いを浮かべる。
「さぁさ、開けるの、開けないの。それとも私が開ける?」
竹代先生が言うと、美晴は慌てて封筒を取り返す。
「やっぱり私が開ける」
「じゃあ早く開けてちょうだい」
そう促され、美晴は裁縫箱から物差しを取り出すと、封をされている部分の隙間に差し込む。勢いよく封を切ると、しばらく動きが止まった。
「ばりちゃん? 早く中見てよ」
「わ、わかってるよ。心の準備をしようかなって思っただけだし」
美晴は大きく深呼吸をすると、封筒の中に手を入れ、入っていた書類を引き出す。その様子を全員が固唾を飲んで見守っていた。
目を瞑ったまま、取り出した書類を作業台の上に叩きつける。全員の視線が一番上の書類に集中した。
火曜日と木曜日の放課後に集まり、各々が好きなものを作る。文化祭での販売に向けてのストック作りも兼ねていた。
「そういえばこの間ばりちゃんのクラスに行ったらさ、体育の後だったからか、制汗剤のスプレー地獄」
「わかる。人数分の匂いと煙が充満するよね~。あれって学年ごとに匂いの量が増えてる気がしない?」
「するする! 中一の時はシュッて両脇で終わりだったのに、高校になるとシューって長い上に、身体中にスプレーするよね」
「気になる場所が増えるんだよ」
高校生四人が大笑いするのを、穂波と和歌は目を瞬きながら不思議そうに見ていた。
「二人にもいずれわかる日が来るって」
美晴がそう言った時だった。家庭科準備室のドアが開き、竹代先生が入ってきたのだ。
「相変わらず賑やかねえ。というか高校生が、かしら」
「あっ、先生。どうしたんですか?」
木乃香が尋ねると、竹代先生は椅子に腰を下ろし、水色の封筒を机の上に置いた。それを見た全員が目を見開いた。
「こ、これってもしかして……」
慌てて立ち上がった美晴は封筒を掴むと、隅から隅まで視線を走らせる。封筒の左端に【予選結果在中】の文字を見た途端、震えが止まらなくなった。
「や、ヤバい……とうとう予選の結果が来ちゃったよ……」
美晴が握りしめてぐちゃぐちゃにしてしまいそうだったので、日和は封筒をさりげなく美晴の手から引き抜く。
「うわっ……微妙な厚み」
「本当だ。どっちの可能性もあるね」
日和と睦月は触りながら顔を顰めた。そこへ手を伸ばした穂波と和歌も苦笑いを浮かべる。
「さぁさ、開けるの、開けないの。それとも私が開ける?」
竹代先生が言うと、美晴は慌てて封筒を取り返す。
「やっぱり私が開ける」
「じゃあ早く開けてちょうだい」
そう促され、美晴は裁縫箱から物差しを取り出すと、封をされている部分の隙間に差し込む。勢いよく封を切ると、しばらく動きが止まった。
「ばりちゃん? 早く中見てよ」
「わ、わかってるよ。心の準備をしようかなって思っただけだし」
美晴は大きく深呼吸をすると、封筒の中に手を入れ、入っていた書類を引き出す。その様子を全員が固唾を飲んで見守っていた。
目を瞑ったまま、取り出した書類を作業台の上に叩きつける。全員の視線が一番上の書類に集中した。
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