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プロローグ
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「ご、ごめんなさい! あの……私……どうしよう……なんてことをしちゃったんだろう……」
「気にしないでください」
動揺する芹香に誠吾は落ち着き払った声でそう言うと、手にしたスマホを彼女の手に載せる。
「ただの事故です。それ以上でもそれ以下でもないんですから」
事故。その言葉に芹香の心は傷付いた。自分の中にある彼への想いがつい行動に出てしまったのに、それをただの"事故"として片付けるのは悲しかった。
「……事故じゃありません」
思わず心の声が口から漏れてしまう。だがそのことで芹香の中で決心がついた。
芹香は顔を上げると、誠吾の顔をじっと見つめる。心臓が早鐘のように打ち付けるのが耳にまで届くようだった。
深呼吸をしてから、グッと言葉を絞り出す。
「私……明智さんがずっと好きでした……! 今回こうして助けてもらって、その気持ちがもっと大きくなったの。だから……あの、もし良かったら……」
「それは無理です」
最後まで言い終わらないうちに誠吾の口から発せられた言葉に、芹香はグッと口をつぐんだ。
息が止まった気がした。胸が痛い、苦しい……こんなふうに振られてしまうことだって想像はしてた。でもいざ現実のものになると、悲しくてその事実を受け止めきれない自分がいたのだ。
誠吾は穏やかな笑顔を浮かべて芹香の目を見つめる。
「あなたは恐怖の中で私を見つけ、極度の緊張状態から解放された。その感覚を恋だと勘違いしているのでしょう。私と付き合ったとしても、きっとその後に違和感を覚えるはずです。やっぱり違うと感じるに決まってますよ」
「そ、そんなことないです! 私は昔からずっと……」
「それも恋に恋していただけでしょう。自分よりも大人の男性に恋をすることに憧れていたのではないでしょうか?」
「違います……! 私は本当に明智さんのことが好きなの……!」
誠吾に信じてもらえないことへの悲しさや悔しさから、芹香の目からは涙が溢れた。
「あなたはまだ若いんですから。四月からは大学生ですし、私のようなおじさんではなく、年相応のちゃんとした恋愛をしてください」
あぁ、この人には何を言っても無駄なんだ──そう思うと、もうそれ以上の感覚は芽生えてはこなかった。
「わかりました……。もう明智さんのことは諦めます。ありがとうございました」
芹香は病室を飛び出すと、後ろは一度も振り返らずに両親の待つ駐車場へ向かって走った。
子どもなりに本気だった。だってずっと前から憧れの人だったから。でも彼は私のそんな気持ちを否定した。
それなら私だってもう彼を求めない。明智さんのことは忘れよう──芹香はそう心に決めた。
外に出た芹香は溢れ出る涙を抑えられず、壁際に座り込むと、カバンから取り出したハンカチに顔を押し付けて泣き続けた。
それからしばらくして、実行犯の逮捕と被害者が無事に救出されたことにより捜査は打ち切られることになった。
「気にしないでください」
動揺する芹香に誠吾は落ち着き払った声でそう言うと、手にしたスマホを彼女の手に載せる。
「ただの事故です。それ以上でもそれ以下でもないんですから」
事故。その言葉に芹香の心は傷付いた。自分の中にある彼への想いがつい行動に出てしまったのに、それをただの"事故"として片付けるのは悲しかった。
「……事故じゃありません」
思わず心の声が口から漏れてしまう。だがそのことで芹香の中で決心がついた。
芹香は顔を上げると、誠吾の顔をじっと見つめる。心臓が早鐘のように打ち付けるのが耳にまで届くようだった。
深呼吸をしてから、グッと言葉を絞り出す。
「私……明智さんがずっと好きでした……! 今回こうして助けてもらって、その気持ちがもっと大きくなったの。だから……あの、もし良かったら……」
「それは無理です」
最後まで言い終わらないうちに誠吾の口から発せられた言葉に、芹香はグッと口をつぐんだ。
息が止まった気がした。胸が痛い、苦しい……こんなふうに振られてしまうことだって想像はしてた。でもいざ現実のものになると、悲しくてその事実を受け止めきれない自分がいたのだ。
誠吾は穏やかな笑顔を浮かべて芹香の目を見つめる。
「あなたは恐怖の中で私を見つけ、極度の緊張状態から解放された。その感覚を恋だと勘違いしているのでしょう。私と付き合ったとしても、きっとその後に違和感を覚えるはずです。やっぱり違うと感じるに決まってますよ」
「そ、そんなことないです! 私は昔からずっと……」
「それも恋に恋していただけでしょう。自分よりも大人の男性に恋をすることに憧れていたのではないでしょうか?」
「違います……! 私は本当に明智さんのことが好きなの……!」
誠吾に信じてもらえないことへの悲しさや悔しさから、芹香の目からは涙が溢れた。
「あなたはまだ若いんですから。四月からは大学生ですし、私のようなおじさんではなく、年相応のちゃんとした恋愛をしてください」
あぁ、この人には何を言っても無駄なんだ──そう思うと、もうそれ以上の感覚は芽生えてはこなかった。
「わかりました……。もう明智さんのことは諦めます。ありがとうございました」
芹香は病室を飛び出すと、後ろは一度も振り返らずに両親の待つ駐車場へ向かって走った。
子どもなりに本気だった。だってずっと前から憧れの人だったから。でも彼は私のそんな気持ちを否定した。
それなら私だってもう彼を求めない。明智さんのことは忘れよう──芹香はそう心に決めた。
外に出た芹香は溢れ出る涙を抑えられず、壁際に座り込むと、カバンから取り出したハンカチに顔を押し付けて泣き続けた。
それからしばらくして、実行犯の逮捕と被害者が無事に救出されたことにより捜査は打ち切られることになった。
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