Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜

白山小梅

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8 迫り来るもの

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 今朝も誠吾の車で会社に向かった二人は、そのまま車を駐車場に停め、揃って出社した。というのも、誠吾が秀行に呼び出されているらしく、今日は一日会社こちらで過ごすという。誠吾が近くにいると思うだけで、芹香は心強かった。

「じゃあまた後で」

 そう言って、芹香は秘書室、誠吾は秀之のいる常務室にそれぞれ分かれる。時々気になって常務室を覗くと、二人が真剣な表情で話し合う姿が目に入った。邪魔をしてはいけないと思って声はかけないが、誠吾が近くにいると感じることで、芹香は集中して仕事にいそしむことが出来た。

 念のために副社長の予定を調べてみたが、今日は午後からの出社となっていたが、その後もいくつか打ち合わせが入っていたため顔を合わすことはなさそうだと安心する。

 そうやって仕事を消化しているうちに、気付けば部屋には一人になっていた。そのことに気付いた途端、何故か急に嫌な予感がした。

 明智さんと兄さんはまだ常務室かしら──不安を覚えた芹香が、部屋から出ようと立ち上がった時だった。ガチャッと音を立てて扉が開いたかと思うと、太一が部屋の中に入ってきたのだ。

「あぁ、芹香。ちょうど良かった」

 扉が閉まる音が響き、芹香の背筋が凍りついた。昨夜のことがあったにも関わらず、不敵な笑みを浮かべて芹香をじっと見つめている。

「びっくりした……。ノックくらいして」

 しかし芹香の言葉に返事もせずに近付いてくる太一を警戒するように、後ろに下がって行く。

「まだいて良かったよ。親父がさ、明日の社長の予定に、N社との会食を入れられないか聞いてくれって」
「えっ……でもそれは副社長付きの沢城さわしろさんに確認をしないと……」
「それがさ、お子さんの体調が悪くて先に帰っただろ? それから連絡がつかないんだって」

 それは事実だろうか……。帰ったのは本当だが、連絡がつかないなんてことがあるだろうか──太一の言動からは、それが嘘か真なのかはわからなかった。

 芹香は閉められたドアの方を見る。大丈夫、常務室には明智さんか兄さんがいるはず。何かあったら気付いてくれるに決まってる──芹香は緊張した様子で頷いた。

「わかった……ちょっと確認してみるから待ってて」
「助かるよ」

 パソコンを開くと太一が芹香の背後に回る。その動きすら緊張した。それからパソコンを操作して副社長の明日の予定を開くと、奇妙な事実が判明する。N社との会食が既に入っていたのだ。

「あの……太一くん。会食の予定なら既に……!」

 芹香が振り返ろうとした瞬間、タオルのようなもので口を塞がれる。呼吸が出来なくなり、過去の映像が走馬灯のように頭を駆け巡っていく。

「悪いな、芹香……」

 頭が朦朧として体の力が抜ける。気を失う直前に見たのは、困ったように笑う太一の顔だった。
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