30 / 110
4 二人の接点
1
しおりを挟む
萌音を見送ったあと、翔は再びレストランに戻った。萌音には説明しなかったが、ここの敷地内の一角が翔の住まいとなっているため、必ずレストランの中を通って帰宅していたのだ。
ドアを押し開けて中へ入ると、レストランは閉店作業を終え、先程のホール担当の男性がのこっているだけだった。すると男性は翔に気付いて楽しそうに近付いてくる。
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
「いやぁ、あの子が噂の萌音さんなんだねぇ。俺ちょっと興奮しちゃったよ」
翔の従兄弟の由利元基は、頬を染めてニヤニヤしながら翔を小突いた。二人は子どもの頃から仲が良く、経営が悪化していたこの式場の立て直しに翔が取りかかると聞いた時に、『俺も行く!』と喜んでついてきたのだ。そのため翔と元基はこの四年間、同じ家に住んで生活も共にしていた。
翔はため息をつくと、軽くあしらうように手を振る。
「その話は後でいいから。終わりなら消灯するよ」
「あっ、ちょっと待ってくれよ! 帰るまで待っててやったのにつれないなぁ」
「別に待ってて欲しいなんて言ってないけど」
「はいはい、わかりましたよ」
そう言うと全ての照明のスイッチを切り、二人は廊下の奥にある家へと繋がる扉を開けた。
扉を開けると小さな玄関が顔を出し、そこで靴を脱ぐと二人はそのままリビングへと入っていく。
二十帖ほどのリビングにはソファが向かい合わせに置かれていて、大きな壁掛けのテレビが存在感を放っていた。
お互い向かい合って座ると、揃って背もたれに倒れ込む。だが元基の興奮している様子はしっかりと翔に伝わっていた。
「で? 一体どういうことなわけ?」
「どうって……別にそのままだよ」
「はぁっ⁈ そのままなわけないだろ⁈ いっつも直前で逃げてばかりの萌音ちゃんが、あんなにスムーズにお前と店にやって来たんだぞ⁈ 俺には奇跡が起きたとしか思えなかったよ!」
「いや、別に逃げられてたわけじゃないよ。だってどちらも俺が逃亡の手助けをしてるわけだし」
仲が良かったこともあり、元基には萌音についての話をしていた。むしろそのことがきっかけとなって彼女との婚約が決まったようなものだった。
ドアを押し開けて中へ入ると、レストランは閉店作業を終え、先程のホール担当の男性がのこっているだけだった。すると男性は翔に気付いて楽しそうに近付いてくる。
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
「いやぁ、あの子が噂の萌音さんなんだねぇ。俺ちょっと興奮しちゃったよ」
翔の従兄弟の由利元基は、頬を染めてニヤニヤしながら翔を小突いた。二人は子どもの頃から仲が良く、経営が悪化していたこの式場の立て直しに翔が取りかかると聞いた時に、『俺も行く!』と喜んでついてきたのだ。そのため翔と元基はこの四年間、同じ家に住んで生活も共にしていた。
翔はため息をつくと、軽くあしらうように手を振る。
「その話は後でいいから。終わりなら消灯するよ」
「あっ、ちょっと待ってくれよ! 帰るまで待っててやったのにつれないなぁ」
「別に待ってて欲しいなんて言ってないけど」
「はいはい、わかりましたよ」
そう言うと全ての照明のスイッチを切り、二人は廊下の奥にある家へと繋がる扉を開けた。
扉を開けると小さな玄関が顔を出し、そこで靴を脱ぐと二人はそのままリビングへと入っていく。
二十帖ほどのリビングにはソファが向かい合わせに置かれていて、大きな壁掛けのテレビが存在感を放っていた。
お互い向かい合って座ると、揃って背もたれに倒れ込む。だが元基の興奮している様子はしっかりと翔に伝わっていた。
「で? 一体どういうことなわけ?」
「どうって……別にそのままだよ」
「はぁっ⁈ そのままなわけないだろ⁈ いっつも直前で逃げてばかりの萌音ちゃんが、あんなにスムーズにお前と店にやって来たんだぞ⁈ 俺には奇跡が起きたとしか思えなかったよ!」
「いや、別に逃げられてたわけじゃないよ。だってどちらも俺が逃亡の手助けをしてるわけだし」
仲が良かったこともあり、元基には萌音についての話をしていた。むしろそのことがきっかけとなって彼女との婚約が決まったようなものだった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
年下研修医の極甘蜜愛
虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。
そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。
病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。
仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。
シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡
*****************************
※他サイトでも同タイトルで公開しています。
Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
白山小梅
恋愛
富裕層が集まる高校に特待生として入学した杏奈は、あるグループからの嫌がらせを受け、地獄の三年間を過ごす羽目に。
大学に進学した杏奈は、今はファミリーレストランのメニュー開発に携わり、穏やかな日々を送っていた。そこに突然母親から連絡が入る。なんと両親が営む弁当屋が、建物の老朽化を理由に立ち退きを迫られていた。仕方なく店を閉じたが、その土地に、高校時代に嫌がらせを受けたグループのメンバーである由利高臣の父親が経営するYRグループが関わっていると知り、イベントで偶然再会した高臣に声をかけた杏奈だったが、事態は思わぬ方向に進み--⁈
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる