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第10話 面接
しおりを挟むここかな。
俺は青い屋根の建物の前までやってきた。
屋根には大きな煙突が付いていて、ピンク色の煙を吐き出している。くんくん。辺りには甘辛いような良い匂いが立ち込めている。なんだか腹が減ってきた。
「何してるんですか?」
不意に後ろから声を掛けられ、ビックリして振り向く。
エルフかなー。
目の前にはエルフらしき女性が立っていた。
髪は銀髪。ただし前髪は一直線に切られている。いわゆるパッツンヘアーってやつだ。
ちなみに俺のエルフ基準は、耳がとんがっているかいないかだ。
服装は作業着か?つなぎを着ている。
工場の関係者だろうか。
不審そうな顔で俺を見つめる女性に告げる。
「ギルドで依頼を見て来たんですが……」
「あら。まぁ。そうだったんですか。それではこちらへどうぞ」
女性は、ぱっと笑顔になり俺を工場の中の事務所へと案内してくれた。
ー事務所ー
「ようこそ。おいでくださいました。私は主任をしておりますフサエと申します」
まさか日本人かっ!
「私は島津洋介といいます。あなたのフルネームはなんと仰るんですか?」
「フサエ・バッチコーイですけど……」
むぅぅ。良くわからない。
しかし俺の名前に反応しなかったところを見ると日本人では無い様だ。
「工場長は後で参られます。面接は工場長が行いますが、先に簡単に依頼のご説明をしておきますね」
とフサエが説明をしてくれた。
この工場ではペクの森で採れるペク芋の加工から販売までを行っており、主力商品は「ペク芋の煮っころがし」、というかこれしか作ってないらしい。
商品名は「ご飯がペクペク ススムクン」
なんとも危険な臭いがする。
主な仕事内容は芋の入った大釜を焦げ付かないように混ぜること。それだけだそうだ。
嬉しいことに昼と夜は賄いまで出ると言う。
募集の経緯はというと、最近社員が2人も産休に入った為に、手が足りなくなったらしい。
それにしてもわざわざ冒険者に依頼を?と思ったのだが、レーベルや村の掲示板、商業組合等で募集をかけたのだが、なかなか応募が来なかったのだと言う。そして苦肉の策としてギルドに依頼をしたのだと説明してくれた。
ふーん。
て言うか!
商業組合なんてあるのか!いや、普通に考えたらあるか。
芋工場での仕事が終わったら、もし面接が不合格だったら、次は商業組合で仕事を探してみるか。
そこなら普通の仕事もあるだろう。
魔物や盗賊と戦うよりも、そっちの方が良いに決まってる。
異世界に来た者が誰しも冒険すると思うなよ。
わはははは。俺は自由に生きてやるっ。
コンコン。
と、ドアをノックする音が。
「工場長がいらっしゃったみたいですね」
ガチャリ。
「おはようございます。工場長」
ドワーフらしき男性が入ってきた。
茶色い髪を、短く刈り揃えている。
口元をおおうような立派なヒゲは胸元まで伸びている。
俺のドワーフ基準は背が低くて立派なヒゲがあるかないかだ。
しかし食品を扱うのにそのヒゲはいいのか?
まぁ工場長自ら現場で作業することは無いんだろうが。
「…………ボソッ」
ん?何か言った?
「…………ボソッボソッ」
え。聞こえない。めちゃめちゃ声が小さいなこの人。
ドワーフはもっと大声のイメージだったんだが。
「ボソッ…………シ……ネ」
ええっ!
今さらっと「しね」って、言わなかったか!?
「工場長は『ようこそ、よろしくね』と仰っています」
嘘だろ。
もう一回チャンスをくれ。
「ボソッ……カ……スガ…………」
うわっ! 「カスが」って言ったよー。絶対言った。
「『何もないいなかですがごゆっくり』です」
「ジャマダ・・ボソッ」
「『じゃまだ仕事がありますから』と仰っています。」
何度聞いてもそう聞こえない。
呆然としていると、部屋から出ようとする工場長とぶつかりそうになった。
「ボソッ……ジャマダ……シネ」
「『邪魔だ、死ね』と仰っています」
うぉぉい。そこはそのままかい。
バタン。
何。あの人怖い。
工場長は出ていった。
あれ? 面接はどうなったんだろう。
「合格ですよ。明日からよろしくお願い致します。あんなに上機嫌な工場長は初めてですよ」
とてもそうは見えなかったが、とにかく合格したらしい。
今日から2階の休憩所で寝泊まりして良いと言われたので、少し休ませてもらって、そのあと村を見て回ることにした。
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