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リライトトライ1
プロローグ
しおりを挟むたった一度の後悔もなく人生を生きているヤツなんていない。
多分……いや絶対。
少なくとも俺はそう思うぞ。
『我が人生に一片の悔いなし!』なんてかっこいい台詞が言えるのは、世紀末を支配していた覇王くらいなモンだろう。間違いない。
しかしソレでも『そうか? 俺は今までの自分の選択に後悔なんてしたことはないぜ』なんていう反対意見を口にするヤツがいたら、断言してやる。
あんたは嘘吐きか、意地っ張りか、想像力というモノが欠如しているだけだ、と。
世紀末の覇王なんて二次元世界の住人を引き合いに出してしまった俺も悪かった。
よーするに俺が言いたいのはだ、宿敵との死闘の末に天に帰ったから悔いがないとか、志半ばで本能寺に散ったから悔いが残る、とかそういう中二な話じゃない。もう少し現実に目を向けて考えてくれ。
例えば、そうだな……青春時代に異性といい感じになったけど付き合わなかった、とか……
……あ、そうだ! 文化祭! あんたが文化祭の準備作業で、今まであまり話したことのない女子とお近づきになれたとしよう。
こいつって……今まで話したことなかったけど、結構面白いヤツだよな。ソレに……よく見ると、結構かわいいよなぁ……そういう女の娘だ。
準備作業は夜まで続き、その娘と帰る方向が同じあんたは、毎日彼女を送って行くんだ。帰宅時間は遅くなっちまうが、全然苦じゃない、むしろ嬉しい。そんな風に思ってるあんたは、彼女のことが好きなんだって気づく、もしくは思い込む。
思春期の男子なんてバカなモンで、二人きりの時に異性が笑って話し掛けてくれば即、
『こいつ俺のこと好きなのかな?』
なんて思っちまう。そして次の日には、
『結婚する! 俺が幸せにするんだ!』
なんて感じで勘違いのフリーウェイを暴走していくモンなんだ。少なくとも俺はそうだ。
しかしさっきも言ったように、コレはあくまで現実に目を向けた例えだ。
文化祭が終わってあんたとその娘……仮にアスカちゃんとしよう。あんたとアスカちゃんは再び日常に戻っていき、徐々に(この徐々にってのが厄介なんだ)話す回数は減り……いつの間にか話し掛けるのにきっかけが必要なレベルにまで戻っちまう。
理由はないけど、話したかったから……声が聞きたかったから話し掛けてみた……なんてことはチキンなあんたには死んでも出来ない。
何故なら、好きだからだ。好きだからこそしたいこと、嫌われたくないから出来ないこと、男には常にその問題が付きまとう。
そして全く話さなくなることで、徐々にあんたは自分の気持ちは勘違いだったんじゃないか? なんて冷めていくんだ。
ああ、別に本気か勘違いなんてどっちでもいいんだ。両方同じようなモンだし、都合次第で瞬時に置き換えられるモンなんだから。話のミソはそこじゃないんだ。怒るなよ?
ソレであんたはアスカちゃんと話さないまま卒業を迎える。そしてソレからしばらくして知るんだ。同窓会かなんかの時に。
『あたし昔あなたのこと好きだったんだよ?』
なんて左手の薬指に目障りなヒカリモノを付けた本人から。
あんたは間違いなくこう思うはずだ。
『ちくしょう。あの時告白しておけば……』
ってな。
……ん? 例えが具体的すぎるって? 仕方ないだろ! 俺の実体験なんだから。
話を戻すぜ? 後悔の話だ。
別に誰かとの恋愛じゃなくてもいいんだ。極端な話なら大切なモンを電車の中に忘れてきちまった話でも、財布を落としたなんて失敗談でもいい。取り戻せるならそうしたいって思うことって、あるだろ?
……さて、前置きが長くなっちまったが、ここからが本題なんだ。
今まで俺が言った例え全てに立ちはだかる壁にもう気づいていたら、あんたはナカナカ聡明だと言えるだろう。
ソレと、さっきは想像力がない、なんて言ってすまなかったな。誰もが知っているその立ちはだかる壁をブチ貫く、ある仮定を入れるのを忘れてたよ。
誰もが知ってる壁、ソレは『人は過去には戻れない』ってことだ。だから自分の失敗が明らかでない時は、そのことに気づけない。知りようがない。だから失敗だと思わない。
故ゆえに、自分の選択は間違ってない、と思う……思いたがるんだ。ポジティブな人は。
ソレは結構なことなんだ。むしろ人生の勝者と言えるだろう。勝ち組ってヤツだな。
問題なのは自分の明らかな失敗を自覚していて、後悔してる連中なんだ。ソレを払拭するには、どうにかして忘れるか、上書きするしかない。
ここでまたもさっき言った立ちはだかる壁と、ソレをブチ貫く仮定が出てくる。
そう、チキンなあんたが告白するのも、忘れモンや落としモンを取り戻すのにも必要な仮定ってのは『自分が失敗してることに気づくこと』だ。
もっとハッキリ言っちまえば『自分が失敗したことをその時に知っていること』だ。
考えたことはないかい? 今の記憶を持ったまま過去に戻って上書きが出来たら、って。
俺はずっとずっとそう思っていたんだ。
危ないヤツだな、って目で見ないでくれよ。『お前が一番現実に目を向けるべきだ』なんて弾幕が流れてきそうだな。
もちろんソレは、たられば。イフの話じゃないかと思うだろう。そんなことは俺だって分かってる。
逆に、過去は覆せない。取り戻せないのを分かっているからこそ強くそう思っていたんだ。そんなことは分かってる。いや、分かってた。
……そう。その通り。俺は記憶を持ったまま過去に行くことが出来たんだ。そして、自分の後悔に干渉することが出来た。いや、そうせざるを得なくなっちまったんだ。
……今から話すことは俺の過去の書き換え、上書き、加筆修正。ソレに挑戦したっていうお話だ。
ちょっと気取った、中二な名前を付けるんなら……
『リライト・トライ』
……そんなとこだ。
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