たどり着いた別世界で俺は……

ユウ

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1章

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「レキ様!!レキ様!!」

 レイナが至近距離で顔を覗き込む。

「おはようレイナ、男的にはグッとくるシチュエーションだけど今は少し離れよっか。」

「…………あわわわわー!!レキ様すみません!!」

 レイナは顔を真っ赤にして飛び上がる。

「やぁ、レキ君いつの間にそんな仲になったんだい?妬けるじゃないかぁ。」

 部屋の椅子に座ったルインズが、レイナを生暖かい目で見ながら冷やかす。

「と、まぁ戯れはその位にして、君の倒したトロールの死骸見させてもらったよ。アレは、確かにトロールだったよ。」 

「この辺では、珍しいのですか?」

「そうだね、まずは、その辺から話していこうか。アースウルフなど魔獣型は大体何処でもいるモンスターだ。だけど、トロール等の魔人型のモンスターは、洞窟や古い遺跡にしか生息していない筈だったんだよ。」

 ルインズは、深刻そうな面持ちで此方を見ている。

「仮説だが、放流者つまり君の召喚によって生態系が変わってしまったとか、要因は幾つか考えられる。」

「つまり、放流者が現れた地域は魔物が活性化でもするって言うんですか?」

「もしくは、モンスターを操る何者かがいるとかね。」

 部屋中が静まり返る。

「待って下さい。ルインズ様......そうすると堕神が付近にいるかもしれないと言うのですか?」

「堕ちたと言っても神だからね。何が出来たとしても不思議ではないだろう。」

「そして、レキ君の出した黒い炎なのだが、水で消えずにトロールを焼き終えるまで消えなかったんだ。何よりも奇妙なのはトロール以外は何も燃やしてないんだよ。」

「どういう事ですか? 物理的に有得ないですよね?」

「その通りだ。どの火のエレメントにもそのような事例は観測されていない。」

「レキ様が、黒い炎を出した時ですが右目も同じように黒い炎で燃えておりました。」

 自身に起こった事だが、無我夢中であった為に全く覚えていなかった。

「レキの四番目のスキル叛逆に関係が有るのではないか?」

 習得してしまったS評価スキルの事を忘れていた。

「それが全能力とは断定出来ないが、能力の断片なのかもしれないな。とにかく今日はご苦労だったね、今夜はゆっくり休んでくれ。なんならレイナとよろしくしても良いが...」

「しませんっ!!!!」レイナは顔を真っ赤に染めて即答する。

「お~怖い怖い。私はそろそろ退散するよ。」ルインズは立ち上がり部屋を出て行った。

「レキ様、私も隣の部屋に居りますので、何か御用が有れば気軽にお声掛け下さい。」

「レイナもご苦労様。また明日から宜しくね。」

「はい!!」レイナは少しご機嫌な様子で部屋から出ていった。

 部屋が静まり、布団に意識を吸われるかのように眠りについた。


ーーーー翌朝ーーーー

 イスト全体に、朝をしらせる鳥の鳴き声が響き渡る。

 隣部屋の扉が閉まる音が聞こえた。

「レイナか?」重たい瞼を擦りながら、布団から出る。
 
 宿の亭主に挨拶をして、宿の外へ出る。

「はあっ!!」宿の隣接する広場から声が聞こえた。

 広場で一人、華麗な剣捌きで凄まじい閃光二筋煌めく。

 自分と歳も離れていない筈の少女の動きではなかった。

 いったいどれだけの修羅場を潜ってきたのだろうか。

「レキ様。起こしてしまいましたか?」こちら気づいたレイナは駆け寄ってきた。

「おはようレイナ。邪魔しちゃったね。」

「いえ、軽く動いてただけなので大丈夫ですよ。」

「もしレイナが良かったら、朝食の後に稽古をつけてもらえないかな?」

「......わかりました。」レイナは、少し驚いた様子だったが了承してもらった。

 二人で宿に戻り、朝食を済ませて再び広場へ向かった。

「まずは、レキ様の属性憑依を使用してみてください。」

「わかった。」そっと目を閉じて、右手持ち上げながら意識を集中させる。

 すると右手を包むかの様に、炎が球体の様に渦巻く。

「そのままで属性を切り替えてみてください。」

 言われた通りに、炎を水に変化するイメージをする。

 すると、右手を覆っていた暖かい感覚が、冷たい感覚へと切り替わった。

「レキ様、そのまま拳を突き出してみて下さい。」

 全力で拳を突き出すと同時に爆音が響き、咄嗟に目を開く。

「う...嘘だろ......。」

 自分の目を疑った、拳を起点に扇状に十メートル程を覆うように氷柱が現れていたのだ。

「...レキ様......す、すごいです。」レイナは、呆気にとられている。

「それでは、属性憑依と身体強化を使って私と模擬戦を行いたいと思います。レキ様は、昨日と同様に魔鉱剣を使って下さい。」

 そう告げると、距離を取りレイナは腰のホルダーから二本の剣を抜いた。

 「双剣なのか?長さが違うみたいだけど。」

 「そうですね、私はショートソードと大型のナイフ使います。相図ですがコインを飛ばして、地面に落ちたら開始にしますね。」

 レイナはコインを構える。「いきます。」コインと弾かれピンッと甲高く音が響く。

 コインは空中で回転しながら地面を目指す。

 そのコインを目で追うのを止めて、レイナをジッと見ながら落下音が響くのに集中する。

 一瞬の筈がとても長く感じながら、その時がやってきた。

 空中を舞っていたコインが地面と接触し転がる。

 レイナへ向けて距離を詰めようと足へ力を巡らせる。

 「遅いです。」一言聞こえた時点でレイナの姿がない。

 目を周囲へ向けると、自分の足元に風圧を感じ咄嗟にバックステップする。

 自分が居た場所を両断する閃光が走るのが見える。

「かわされましたか。流石レキ様ですね、次は少し本気を出させて頂きます。」

 レイナの威圧感が跳ね上がるの感じた。

 初段を何とかかわしたが、そう何度も続かないのは明確だった。

 背後にまた風圧を感じた回避が遅れ、一閃を左肩を捉え傷みが走る。

 「チッ!!」右手に握られている魔鉱剣を振るが、レイナの姿はもう無い。

 「レキ様、闇雲に剣を振っても当たりませんよ。」

 高速治癒で傷はみるみる治っていく。

 レイナは高速で移動しているせいで風圧を隠せていない......なら!!

 再び風圧が来たと同時に左手を伸ばす。

 中指と薬指の間に感じた事のない激痛が走る。

 左手がナイフで半分まで切り開かれているが、レイナの右手を掴み属性憑依の氷で固定する。

 「痛ってぇぇけど捕まえたぜ。」

 レイナが目を見開き、咄嗟に左のショートソードを振り上げようとする。

 だが、魔鉱剣がショートソードの側面を捉え弾き飛ばし、そのままの速度でレイナへ切っ先を向けて制止する。

「ま...参りました。」

 レイナがその場で膝をついて少し息を吐き出し立ち上がった。

 「レキ様、手の方は大丈夫でしょうか?」

「あ……どうしよこれ……めっちゃ痛い、マジで痛い」

「ど、どうしましょう……」

 裂けた左手が治癒されるまで、数十秒間痛さにピクピクしながら葛藤するのだった。

 「レキ様は治癒が早いだけで、不死身では無いんですから戦い方を覚えていきましょう。」

 レイナが、戦闘の時とはまた違う真剣な眼差しで告げた内容に、訓練の必要性を痛感するのだった。

「レイナ…ありがとな!!」

「レキ様?」

「戦う為に必要な事をもっと勉強するよ!!」

「レキ様……私もお手伝いします!!」

 この事がキッカケになって、約半年の間、レイナと町の護衛をこなしながら修行を行った。

 何度か危ない状況に遭遇もしたけど、帰ってからの反省と修正を繰り返しどんどん強くなっていった。

町の人々とも良い関係を築けてきた。

そして…

運命の日が訪れたんだ…
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