たどり着いた別世界で俺は……

ユウ

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2章

邂逅

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 それは、突然訪れたんだ。

 クエストの為、街から少し離れた森から帰る時だった。

 目の前に、黒く禍々しいオーラを纏った人の形をした何かとしか思えない生命体が現れた。

「主か? 我が駒を狩っておる放流者は?」

 全身が伝えてくる危機感に抗いながら、口を開く。

「ああ、俺が放流者のレキだよ。 あんたが、噂に聞く堕神ってやつか?」

 レイナも、警戒して様子を見ている。

「ほう…我を前にしても、生きる事を諦めぬか? ここで主を狩るのも悪くないが、それでは味気ないの?」

 嫌な予感が全身を貫いた。

「何をする気だ? 関係の無い奴に手を出したら許さねぇぞ!!」

 今回は、自分でも気づいていた。 右眼から黒い炎が出ている事に。

「我が、わざわざ手を出す訳なかろう? だが、今頃は主の守っておる街に、駒達が攻め入っておる頃だろうがな…」

「レイナ!! 街に戻るぞ!!」

「躊躇なく我に背を向けるか? 実に面白いな放流者。 いや、レキと言ったか? 主がどこまでやれるか見せてもらうよ…」

 そうして、堕神は消えていった。


ーーー同時刻イストーーー

 商業都市イスト中に鐘の音が、慌ただしく鳴り響く。

「この騒ぎは何だ? 敵は何処から攻めて来ているんだ? 今すぐに住民を街中央広場へ集めろ!!」

 ルインズは、近くにいる兵に命令を行い広場へ向かった。

「ルインズ様!! 大変です!! トロールが攻めて参りました!!」

 顔が青ざめた兵士が、慌ててルインズの元に駆け寄る。

「数は?」

「数百五十越えであります!!」

「中には一体一回り以上大きな亜種型も見受けられます!!」

「わかった街にいる隊長クラスの兵士は、私と一緒に正面ゲートで死守するぞ。 副隊長クラス以下の兵士は中央広場にて、撃ち漏らしたトロールを狩とれ!!」

 ルインズは、魔法にて装備を身に付ける。

「我を運べ!! エアリアルムーブ!!」

 飛行魔法にて正面ゲートまで駆けつけた、ルインズの視界に入ったのは悲惨な光景だった。

 逃げ惑う市場の住人とそれを楽しそうに追い回すトロールの群れである。

 トロールをゲート前で抑えている兵士も限界を迎えながら、数体しか中に入れていないのは流石だが被害が甚大だった。

「その醜い足でイスト汚すな!! 穿て!! ライトニングボルト!!」

 ルインズの雄叫びと共に、雷が次々とトロールを捉え肉片に変えていく。

 少し遅れて隊長クラスの兵士二十名が到着し、半数が侵入したトロールを殲滅にあたり、残りが正面ゲートへ加勢した。

 「魔導部隊聞こえるか!!」

 ルインズは、耳に手を当て念話を飛ばす。

「ルインズ様、用意は完了しております。」

「わかった。 ゲート正面にいる群れに対して障壁を使い行動を阻害しろ!!」

「かしこまりした。」

 ゲート前の地面が光を放ちトロール一体がようやく通れる隙間を残し障壁を発生させた。

「兵士達よ!! 這い出てくるトロールを確実に撃破せよ!!」

 ルインズは命令を下した。

 (早く戻って来いレキ君…)

ーーーーーーーー

「レキ様だけでもイストへお戻り下さい!!」

 「レイナだけ置いて行く訳にもいかないからこうするよ」

 おもむろに、レイナを抱き抱えて目を閉じた。

 (風を纏うイメージで…)

 すると全身を風が覆って二人を空中へと持ち上げていった。

 遠くではあったが、イストから煙が出ているのが見えた。

「レキ様、重くないですか? 大丈夫ですか?」

 「大丈夫!! レイナを抱えながらでも戦えそうなくらいだよ」

 そっと微笑んで返事を返すと、レイナの頬が少し赤い気がしたが直ぐに正面を向く。

 「ごめんレイナ。 少し速度を上げながら向かうからしっかりと掴まっててね」

「あちこちの森から、少しずつイストへ向かってトロールが進軍してきてます!! どうされますかレキ様?」

「取り敢えずはイストの守りが大優先だね。 今、可能なら狙える範囲でレイナの魔法で攻撃出来たりしないかな?」

 「レキ様の速度が早いので、流石に厳しいですね。 ですが、イスト到着に合わせて詠唱はしておきます!!」

「宜しく頼むよ!!」

 イストへと全力で向かうのであったが、途中の舗装された街道など滅茶苦茶に荒らされ、被害は拡大するのであった。


ーーーーーーーー
「ルインズ様、戦線を維持が崩壊します!!」

 一人の兵士が全力で叫ぶのと同時に、障壁が破られ、トロールが一斉になだれ込んむ。

 一人、また一人と兵士が犠牲になっていく。

 兵士達の悲鳴と絶望が入り混じっていく。

「糞っ!! ここまでなのか…」

どこからか声が聞こえた。

「ルインズ様ぁーーーー!!!! 伏せてください!!!!」

 レイナの声だった。

「我に争う者を大いなる流れによって押し戻せ!! ウォーターハザード!!!!」

 詠唱と共に空からレイナ舞い降り、地面に手を置いた瞬間大量の水が門へとトロールを押し流していった。

「危なかったな、ルインズ遅れてすまない」

「本当に危なかったが、まだ終わっていないが奴らをどうする?」

「そうだな、ルインズは疲弊した兵士達を連れて下がってくれないか?」

 予想もしていなかった返答にルインズが固まった。

「何を言っているんだね? まだ百程の数はいるんだぞ? 二人で何が出来るのだ?」

「それがっ!!!! 俺の役目だっ!!!!」

レキは市場だった場所で目一杯叫んだ。

「 ここからは、誰一人として殺させはしない!! 全員救ってやるよ!!」

「いいえ、レキ様!!私も一緒にですよ!!」

「ああ!!任せるよ!!」

 二人同時に押し流されて体制崩したトロールの群れを目掛けて走り出した。

「ルインズ様宜しいのですか?」

 不安そうに兵士が尋ねる。

「全部任せはしないが、怪我人を回収しつつ後退するぞ!! 用意が出来次第に、全戦力を遠距離装備へと換装しあの二人のサポートをする!! 急げっ!!!!!!」

「ハッ!!!!」

 ルインズの掛け声と共に兵士全員が後退を開始する。

「鋼よ剣となりて我が身に纏え!!」

 レキが叫ぶと、周囲を十数本の大剣がレキを中心に踊っているかの様に空を舞う。

「属性憑依発展・モード剣聖」

「レキ様コンビネーションでいきますか?」

「そうだな…体勢を崩している敵をまず一掃しようか」

「かしこまりました!!」

 レイナは、レキが生み出した剣を持ち駆け出す。

「身体強化!!」

 続いて全力で駆け出す。

 「立ち上がろうとするトロールを優先的に仕留めるぞ!!」

「はい!! 我が身を加速させよ!! シルフィード!!」

 レイナは自分の身体を加速させ、その勢いで自分の足らない筋力を補いながら、トロールの喉元へ刃を突き立てる。

「次です!!」

「任せろ!!」

 レイナの背後に転がっているトロールの脳天を目掛け剣を振り下ろし、レキが腕振り抜くと別のトロールへ向けて剣が突き刺さる。

「次だ!!」

「はい!! 前方へ三本お願いします!!」

 掛け声と同時にレイナが走り始める。

 それに合わせる様に、腕を振り剣を飛ばし前方のトロールへと剣を飛ばし突き刺す。

「シルフィードダブルアクセル!!」

 更に加速を行い、その加速で突き刺さっている剣を引き抜き別のトロールへと投げる。

「レイナ飛ぶんだ!!」

 レイナが高く跳躍すると、レキが手にした大剣が更に大きくなり、半円を描く様にトロールを半分に両断しレイナが背後に着地する。

「レキ様、今ので合計二十体です」

「思った以上に残ったな…立ち上がった奴も結構いるし、通常装備に切り替えていくか」

「わかりました」

 レイナは太ももに巻いてあるホルダーから、小型ナイフとショートソードを抜き出した。

「黒炎を使うからレイナは後ろの警戒を頼むよ」

 そう言って、目を閉じてレキの腰から魔鉱剣を引き抜く。

「行くぞ!!」

 魔鉱剣が黒く輝きだし、覆う様に黒炎が発生し、そのままトロール群の中央まで跳躍する。

「斬っ!!!!」

 剣から炎を振り払う勢いで、斬撃は物理的に何も切らずして円を描いた。

 そうすると、火の粉が周囲へと飛び、火の粉に触れたトロールは触れた箇所から黒炎があがった。

 「グオオオオ!!!!」

 トロールは慌てながら炎を振り払おうとするが、炎は消える事無く絶命を迎えるトロールの悲鳴事飲み込んでいった。

「レキ様!! 援軍が来たみたいです!! 急いで後退を!!」

 後方から、レイナの声が聞こえた。

「わかった!!」

 再び跳躍し遠方にかなり大きなトロールが確認出来たが、今はレイナを抱えて門まで戻った。

「ルインズ様!! レキ様及びレイナの二名がもどりました!!」

 ルインズへ向けて兵士から高らかに、声が響いた。

「全軍!! 魔導型バリスタ全弾発射!!」

 ルインズの号令と共に砲台へ、魔法陣が展開され残り五十程のトロールへ目掛け巨大な矢が放たれるのであった。


 
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