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── ラウルとセレスティアの急接近とフィオナの策略 ──
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夕暮れどきの宮殿は、長い廊下に差し込む最後の陽光を受けて、静かな赤みを帯びていた。幾重にも敷かれた絨毯が足音を吸い取り、人々の行き交いもまばらになった頃――ラウルはいつになくゆっくりと歩いていた。
彼の胸には、最近拭いきれない違和感がある。セレスティアの存在が日増しに気になるようになっているのだ。思えば、はじめは“政略結婚の相手”以上の興味など持っていなかった。何かとせっせと勉強し、礼儀正しく振る舞う姿を“形だけ”だと片付けていたはずなのに、いつの間にか彼女の優しさや誠実さが、そっと心の奥へ入り込んできている。
――こんなはずではなかった。愛など誓うつもりはない、とまで口にしたのに。
1. ラウルの変化
・セレスティアへの意識
ある日の午後、ラウルは外出から戻ると、宮殿の図書室に立ち寄った。軍事や財政面について、追加で確認しておきたい記録があったからだ。しかし静まり返った図書室の奥で、本を抱えたまま考え込んでいるセレスティアの姿を見つけるとは思っていなかった。
セレスティアはその時、貴族たちの権力構造や地方領主の税収などについてまとめられた書物を熟読し、さらにはノートに細かく整理していた。それをちらりとのぞき込んだラウルは、その几帳面な筆跡と細やかなメモの多さに目を見張る。
「……そんなに、必死に読んでいるのか」
不意にかけられた声に、セレスティアははっと身を硬くする。
「ラ、ラウル様。お帰りなさいませ。お疲れのところ、失礼を……」
慌てて起立するセレスティアを、ラウルは手で制するように軽く振る。そして、机上のノートへ視線を落とした。そこには「地方領主別の課税一覧表」や「公国軍の配置と物資流通」など、専門的な言葉がずらりと並んでいる。
「これを全部、理解しているのか?」
「できる範囲で……まだ分からない点も多いです。でも少しでも国の状況を把握したくて……」
セレスティアは恥ずかしそうに言ったが、その瞳は決して弱気ではない。ラウルは一瞬だけ胸が熱くなるのを感じた。まるで“私はこの国の一員になりたいのです”と叫んでいるように思えたからだ。
「……そうか」
それだけ呟いて、ラウルは遠慮がちにセレスティアの席の向かいに腰を下ろした。そして、何気なく机上の資料を手に取る。
「ここにある地方領主だが……こいつは税を誤魔化してる噂が絶えない。どこかで締め上げないといけないが、下手をすれば反乱の火種になる。扱いが難しい相手だ」
淡々と語るラウルの横顔は、いつも通り無表情に見える。しかしセレスティアには、ほんの少しだけ柔らかな空気が感じられた。
「つまり、その方と交渉するときに注意が必要、ということですね」
「そうだな。……セレスティア、おまえはどう思う?」
「私、ですか?」
意外な問いに目を見開くセレスティア。ラウルは書物に視線を落としながらも、ごく自然に言葉を重ねた。
「俺はこの国を束ねる立場上、いろいろと判断を急がなければならない。だが、おまえのように外から来た視点で見ると、何か違った考えがあるかもしれないだろう」
“俺はおまえを必要としている”とまでは言わない。だがその言葉は、セレスティアの心に温かな感情を呼び起こす。ラウルが自分に意見を求めている――それは、これまでになかった“信頼”の兆しだと思えた。
セレスティアは胸の高鳴りを抑え、まっすぐラウルを見つめる。
「まだ勉強不足で充分な助言はできませんが……もし少しでもお力になれるのなら、全力を尽くしたいです」
細い唇が小さく微笑む。ラウルは、その笑顔がまぶしく感じるほど自分の心が揺れ動いていることに気づき、そっと目を伏せた。
些細な言葉や行動が生む恋心
以降、ラウルは余裕があるときにセレスティアに“国政の資料”を届けたり、“貴族の動向”について耳打ちしたりするようになった。それは公務を手伝わせるというより、いつしか一緒に問題を考えたいという感情に近くなっていく。
セレスティアもまた、わずかながら積極的に意見を述べるようになった。ときに言葉足らずで後悔することもあるが、それでもラウルは珍しく「なるほど」とか「もっと詳しく聞かせろ」と返してくれる。
そんな関係に変化が訪れるほど、ラウルの胸にはセレスティアに対する敬意と、そして甘く切ない感情が芽生えていく。
“あの母を救えなかった虚しさ”を埋めるものではないが、セレスティアがいると少しだけ心が楽になる。何より、彼女の言葉には欺きや裏表が感じられない。そんな誠実さが、ラウルの閉ざされた心を少しずつ溶かしていくのだ。
2. フィオナによる妨害
・不穏な気配
ところが、ラウルとセレスティアがわずかでも距離を縮め始めたことを快く思わない者がいた。言うまでもなく、聖女フィオナである。
フィオナは近ごろ疲れを隠せないようだが、表向きはいつも通り優雅に振る舞い、ラウルの周囲に寄り添っている。だが、ラウルの視線がセレスティアに向かう瞬間を目撃するたび、心の奥底に暗い嫉妬が渦巻いていた。
「……セレスティアに、これ以上好き勝手させないほうがよさそうね」
フィオナは人目のない一室で、険しい表情のまま呟く。傍らには、彼女に心酔する侍女が一人、フィオナの疑念を聞きながら恐る恐る言葉を返した。
「たしかに、最近のラウル様はセレスティア様と話し込むことも増えているようです。……でも、それは公務の一貫ではないのでしょうか?」
「いいえ、違うわ。ラウル様はあの子に心を許しつつある。……それを見て分からないようじゃ、まだまだね」
フィオナの目がぎらりと光る。“聖女”の優美な仮面をかなぐり捨てたかのような、その鋭い表情に侍女は息を呑む。
「では、どうなさるおつもりで……」
「簡単よ。あの子がラウル様にふさわしくない存在だと、周囲に植えつければいい。ついでに……少しばかり“力”を使って、あの子を痛い目に遭わせてやるわ」
フィオナは閉じられた扉の向こうを睨みつけるように見据え、渇いた笑みを浮かべた。誰も知らない小さな“呪印”が彼女の手のひらに浮かんでは消える。まるで、セレスティアを陥れるための“魔道”が静かに呼応しているかのように――。
・仕組まれた罠
数日後、宮廷ではいつになくひやりとした噂が立ち始めた。
「最近、貴族の館で紛失事件が相次いでいるそうだ。……大した物ではないが、宝石箱から指輪が消えたり、金貨が少しずつ減っていたり」
「しかも、噂によると……セレスティア様が公子妃になったあたりから増えているらしいわ。まさかとは思うけど、アストリアの王女が下々のものを盗むなんて……」
誰が言い出したのか分からないが、この“セレスティアが盗みを働いているのでは”というデマは、瞬く間に貴族たちの間に広まっていった。もちろん、多くの者は真に受けてはいない。しかし、セレスティアがもともとアストリアの辺境王女ということもあり、彼女に根強い偏見を抱く者たちは、面白がるように噂を拡散する。
セレスティア自身もちらりと耳にするようになり、困惑の色を隠せなかった。
「どうしてそんな噂が……私はそんなこと、絶対にしません!」
憤りを口にするセレスティアを、侍女のクレアが必死に慰める。
「分かっていますよ。殿下がそんなことをするわけありません。……でも、このままだと、王宮内の一部の方々が真に受けてしまうかもしれません」
重い沈黙が落ちる。おそらく、これは誰かによる陰謀だ――セレスティアも察していた。だが、何の目的でこんな卑劣な噂を流すのか。
(いったい誰が……まさか、フィオナ様?)
一瞬、頭をかすめたが、確証があるわけではない。ましてや“聖女”を疑うことがどれほど危険な行為か、セレスティアは重々承知していた。
・魔道による邪魔
噂話に悩まされるなか、セレスティアの体調にも奇妙な異変が起こり始めた。夜眠りにつこうとすると、頭痛や悪寒に襲われ、悪夢を見て飛び起きることが増えたのだ。
ある深夜、意識が朦朧としている中で目を開けると、部屋の隅に怪しい黒い気配が蠢いているようにも見える。闇の中でそっと囁く声が聞こえた気がして、セレスティアは悲鳴を上げそうになるが、目を瞬くうちに“それ”は消えてしまう。
翌朝、何とか起き上がったセレスティアが鏡を覗くと、頬がひどく痩せ、顔色も悪い。夜の悪夢を何度も繰り返しているせいかもしれない。
(これも、フィオナ様の……? もし彼女が“魔道”を使っているとすれば、こんなことも可能なのかしら)
恐怖に震える思いを抱えつつも、セレスティアは弱音を吐くわけにはいかない。絶対に屈してはいけない――そう自分に言い聞かせ、歯を食いしばる。
3. 誤解と和解
・フィオナの策略による決定打
やがて事件が起こった。貴族の館で“大切な宝石箱がまるごと消えた”という報告が入り、それがセレスティアの仕業だと一部の者が声高に責め始めたのだ。
館の使用人の証言によれば、「夜中に公子妃殿下らしき女性がこっそりと敷地に入り込むのを見た」とか、「薄暗いローブを羽織っていたが声やシルエットが似ていた」などという曖昧な話が出ている。
そんな馬鹿げた話を、正式に取り合うほどラウルも愚かではなかった。だが、複数の証言が出てくるにつれ、ラウルの表情にも暗い影が落ちる。
「……セレスティアがそんなことをするだろうか。いや、しないだろうな」
自分で考えても答えは明白だ。しかし、貴族たちが騒ぎ立て、さらにフィオナまで「心配ですわ。セレスティア様がお辛いのかもしれません。もしや、不遇な境遇の反動で……」などと言い募る始末。
次第にラウルの胸には妙な不安が芽生え始める。もし、セレスティアがアストリアのために何らかのスパイ活動をしているのではないか――そんな疑念まで耳に入ってくるのだ。
(まさか……あの時、彼女はこの国の実情を探りたいと言っていた。でも、それは国を思ってのことだと俺は信じたんだが……)
揺れる心。何よりラウル自身、セレスティアを信じたい気持ちと、噂という現実のはざまで苦しんでいた。
・すれ違い
その夜、セレスティアは廊下で偶然ラウルに出会った。暗い面持ちのまま、ラウルは切り出す。
「……セレスティア、少し話がある」
胸をざわつかせながら、セレスティアはこくりと頷く。いつもならわずかでも彼の声を聞くことに喜びを感じるが、今夜ばかりはそうはいかなかった。
ふたりは人気のない一角へ移動し、正面から向き合う。ラウルの瞳にはどこか険しさが混じり、セレスティアはその気配だけで胸が苦しくなる。
「最近、宮廷でよからぬ噂が立っているのは知っているな」
「……はい。私が盗みをしているとか、スパイだとか……」
セレスティアは歯を食いしばりながら答える。ラウルは微かな怒りをにじませつつ、言葉を続けた。
「もちろん、俺は信じていない。だが、このままでは……貴族たちがますます騒ぎ立て、国政に支障をきたす恐れがある。おまえには、しばらく表立った行動を控えてもらいたい」
「それは……私を疑っているのですか? ラウル様まで……」
思わず、涙が滲むような声が漏れた。ラウルは一瞬、躊躇したように見えたが、すぐにきっぱりと否定する。
「疑ってはいない。ただ、今は噂を沈静化させるためにも、おまえが不用意に動くのは危険だ。……だから、少しだけ大人しくしていてほしい」
「……分かりました」
セレスティアは唇をかみ、視線を落とす。彼の言葉が自分を思ってのものだとは理解している。それでも、疑いを晴らすどころか“表舞台から引く”形になるのは、なんともやりきれない思いだった。
そのままラウルは踵を返し、足早に去っていく。セレスティアは彼の背中を見つめながら、冷たい涙が頬を伝うのを止められなかった。
真実を伝えるために
翌朝、セレスティアは決意を固める。
「このまま黙っていれば、私への疑いは晴れないどころか、さらに拡がってしまうわ。皆さんにも迷惑がかかる……。私が動かなければならない」
とはいえ、ラウルの言う通り、表立った行動は危険だ。そこで彼女は信頼のおけるハルトやクレア、レベッカらに助力を仰ぎ、貴族館で起きた“紛失事件”の真相を探ることにした。誰が目撃証言を捏造しているのか、盗品がどこへ消えたのかを突き止めるのだ。
そして、その最中で、セレスティアはフィオナの侍女が貴族の一人に大金を渡している現場を“偶然目撃”する。侍女は慌てて逃げ去ったが、そのやり取りはどう見ても不自然であり、まるで“証言”を操作しているかのように見えた。
(やはり、これはフィオナ様の差し金……。私を貶めるための罠だったのね)
確信を得たセレスティアは、証拠を掴もうと懸命に動く。そんな彼女の姿を見て、ハルトたちも奮闘を誓った。
誤解の解消と、むしろ絆が深まる
その後、ハルトらの調査により紛失した宝石箱が別の場所から見つかり、しかも“公子妃殿下が盗んだ”と証言した使用人に不正な金の流れがあったことが判明する。これにより、セレスティアは完全に嫌疑が晴れ、むしろ嘘の噂を流した者たちが処罰の対象となって宮廷を去る結果となった。
ラウルは真相が判明したとき、ほっと安堵しながらも、彼女に申し訳なさそうに頭を下げた。
「……すまない。おまえを傷つけるような真似をしてしまった」
その姿にセレスティアは瞳を見開く。ラウルが謝罪の言葉をかけるなんて想像もしていなかったのだ。
「ラウル様、ご安心ください。私も未熟でしたし、周囲を混乱させてしまったことは事実です。でも、私を疑わないでくださったこと……本当にうれしかった。ありがとうございます」
そう言って微笑むセレスティアの目に浮かぶ涙は、悲しみよりも喜びの色に近かった。ラウルはその涙に胸を締めつけられ、そっと彼女の肩に手を置く。
「おまえがいなければ、いったいどれほど俺は孤立していただろう……。俺は公子として、国を守るためにいつも心を張り詰めていたが、最近はおまえの姿に救われることが多い」
その言葉は、ほとんど“愛の告白”に等しいようにも聞こえる。セレスティアは頬を染めながら、ラウルの瞳をしっかりと見つめ返した。
「私も、ラウル様のお力になれるのが幸せです。……これからは、もう少しだけ私を頼ってくださいね」
お互いの視線が重なり合い、意識していなかった距離が縮まる。ラウルは微かに喉を鳴らすと、セレスティアの手を握りしめた。
「……ああ。分かった」
その時、ふたりの間を通っていた冷たい風が消え、温もりが生まれたかのような錯覚を覚える。少なくとも、以前とはまったく違う関係へと変わり始めていることを、ふたりは確信した。
・結び
ラウルとセレスティアの絆が深まるほど、フィオナは苛立ちを募らせていた。盗みの一件は失敗に終わり、逆にセレスティアが誠実さを示したことで、宮廷内での好感度を上げてしまった。
(思いのほか、やるじゃない……。だが、まだ終わりじゃないわ)
フィオナは“聖女”の仮面を被りながらも、心の奥でさらなる策略を練り始める。ラウルを自分の傍に繋ぎ止めるためなら、どんな手段でも厭わないつもりなのだ。
一方で、ラウルとセレスティアは紛失事件を乗り越えたことで、互いをより深く理解できるようになっていた。まだ素直に愛を告げ合うには至らないが、その距離は確実に縮んでいる。
――だが、フィオナが動く限り、ふたりの平穏は長くは続かないだろう。宮廷には数々の思惑が渦巻き、フィオナの魔道の影がじわじわと広がっている。
ラウルの冷えた心に芽生えた、小さくて確かな想い。そして、セレスティアを陥れようとするフィオナの策略――。すれ違いと和解を経て、ふたりの絆は一歩前に進んだが、ここからさらに大きな波乱の予感が宮廷を包み始めていた。
彼の胸には、最近拭いきれない違和感がある。セレスティアの存在が日増しに気になるようになっているのだ。思えば、はじめは“政略結婚の相手”以上の興味など持っていなかった。何かとせっせと勉強し、礼儀正しく振る舞う姿を“形だけ”だと片付けていたはずなのに、いつの間にか彼女の優しさや誠実さが、そっと心の奥へ入り込んできている。
――こんなはずではなかった。愛など誓うつもりはない、とまで口にしたのに。
1. ラウルの変化
・セレスティアへの意識
ある日の午後、ラウルは外出から戻ると、宮殿の図書室に立ち寄った。軍事や財政面について、追加で確認しておきたい記録があったからだ。しかし静まり返った図書室の奥で、本を抱えたまま考え込んでいるセレスティアの姿を見つけるとは思っていなかった。
セレスティアはその時、貴族たちの権力構造や地方領主の税収などについてまとめられた書物を熟読し、さらにはノートに細かく整理していた。それをちらりとのぞき込んだラウルは、その几帳面な筆跡と細やかなメモの多さに目を見張る。
「……そんなに、必死に読んでいるのか」
不意にかけられた声に、セレスティアははっと身を硬くする。
「ラ、ラウル様。お帰りなさいませ。お疲れのところ、失礼を……」
慌てて起立するセレスティアを、ラウルは手で制するように軽く振る。そして、机上のノートへ視線を落とした。そこには「地方領主別の課税一覧表」や「公国軍の配置と物資流通」など、専門的な言葉がずらりと並んでいる。
「これを全部、理解しているのか?」
「できる範囲で……まだ分からない点も多いです。でも少しでも国の状況を把握したくて……」
セレスティアは恥ずかしそうに言ったが、その瞳は決して弱気ではない。ラウルは一瞬だけ胸が熱くなるのを感じた。まるで“私はこの国の一員になりたいのです”と叫んでいるように思えたからだ。
「……そうか」
それだけ呟いて、ラウルは遠慮がちにセレスティアの席の向かいに腰を下ろした。そして、何気なく机上の資料を手に取る。
「ここにある地方領主だが……こいつは税を誤魔化してる噂が絶えない。どこかで締め上げないといけないが、下手をすれば反乱の火種になる。扱いが難しい相手だ」
淡々と語るラウルの横顔は、いつも通り無表情に見える。しかしセレスティアには、ほんの少しだけ柔らかな空気が感じられた。
「つまり、その方と交渉するときに注意が必要、ということですね」
「そうだな。……セレスティア、おまえはどう思う?」
「私、ですか?」
意外な問いに目を見開くセレスティア。ラウルは書物に視線を落としながらも、ごく自然に言葉を重ねた。
「俺はこの国を束ねる立場上、いろいろと判断を急がなければならない。だが、おまえのように外から来た視点で見ると、何か違った考えがあるかもしれないだろう」
“俺はおまえを必要としている”とまでは言わない。だがその言葉は、セレスティアの心に温かな感情を呼び起こす。ラウルが自分に意見を求めている――それは、これまでになかった“信頼”の兆しだと思えた。
セレスティアは胸の高鳴りを抑え、まっすぐラウルを見つめる。
「まだ勉強不足で充分な助言はできませんが……もし少しでもお力になれるのなら、全力を尽くしたいです」
細い唇が小さく微笑む。ラウルは、その笑顔がまぶしく感じるほど自分の心が揺れ動いていることに気づき、そっと目を伏せた。
些細な言葉や行動が生む恋心
以降、ラウルは余裕があるときにセレスティアに“国政の資料”を届けたり、“貴族の動向”について耳打ちしたりするようになった。それは公務を手伝わせるというより、いつしか一緒に問題を考えたいという感情に近くなっていく。
セレスティアもまた、わずかながら積極的に意見を述べるようになった。ときに言葉足らずで後悔することもあるが、それでもラウルは珍しく「なるほど」とか「もっと詳しく聞かせろ」と返してくれる。
そんな関係に変化が訪れるほど、ラウルの胸にはセレスティアに対する敬意と、そして甘く切ない感情が芽生えていく。
“あの母を救えなかった虚しさ”を埋めるものではないが、セレスティアがいると少しだけ心が楽になる。何より、彼女の言葉には欺きや裏表が感じられない。そんな誠実さが、ラウルの閉ざされた心を少しずつ溶かしていくのだ。
2. フィオナによる妨害
・不穏な気配
ところが、ラウルとセレスティアがわずかでも距離を縮め始めたことを快く思わない者がいた。言うまでもなく、聖女フィオナである。
フィオナは近ごろ疲れを隠せないようだが、表向きはいつも通り優雅に振る舞い、ラウルの周囲に寄り添っている。だが、ラウルの視線がセレスティアに向かう瞬間を目撃するたび、心の奥底に暗い嫉妬が渦巻いていた。
「……セレスティアに、これ以上好き勝手させないほうがよさそうね」
フィオナは人目のない一室で、険しい表情のまま呟く。傍らには、彼女に心酔する侍女が一人、フィオナの疑念を聞きながら恐る恐る言葉を返した。
「たしかに、最近のラウル様はセレスティア様と話し込むことも増えているようです。……でも、それは公務の一貫ではないのでしょうか?」
「いいえ、違うわ。ラウル様はあの子に心を許しつつある。……それを見て分からないようじゃ、まだまだね」
フィオナの目がぎらりと光る。“聖女”の優美な仮面をかなぐり捨てたかのような、その鋭い表情に侍女は息を呑む。
「では、どうなさるおつもりで……」
「簡単よ。あの子がラウル様にふさわしくない存在だと、周囲に植えつければいい。ついでに……少しばかり“力”を使って、あの子を痛い目に遭わせてやるわ」
フィオナは閉じられた扉の向こうを睨みつけるように見据え、渇いた笑みを浮かべた。誰も知らない小さな“呪印”が彼女の手のひらに浮かんでは消える。まるで、セレスティアを陥れるための“魔道”が静かに呼応しているかのように――。
・仕組まれた罠
数日後、宮廷ではいつになくひやりとした噂が立ち始めた。
「最近、貴族の館で紛失事件が相次いでいるそうだ。……大した物ではないが、宝石箱から指輪が消えたり、金貨が少しずつ減っていたり」
「しかも、噂によると……セレスティア様が公子妃になったあたりから増えているらしいわ。まさかとは思うけど、アストリアの王女が下々のものを盗むなんて……」
誰が言い出したのか分からないが、この“セレスティアが盗みを働いているのでは”というデマは、瞬く間に貴族たちの間に広まっていった。もちろん、多くの者は真に受けてはいない。しかし、セレスティアがもともとアストリアの辺境王女ということもあり、彼女に根強い偏見を抱く者たちは、面白がるように噂を拡散する。
セレスティア自身もちらりと耳にするようになり、困惑の色を隠せなかった。
「どうしてそんな噂が……私はそんなこと、絶対にしません!」
憤りを口にするセレスティアを、侍女のクレアが必死に慰める。
「分かっていますよ。殿下がそんなことをするわけありません。……でも、このままだと、王宮内の一部の方々が真に受けてしまうかもしれません」
重い沈黙が落ちる。おそらく、これは誰かによる陰謀だ――セレスティアも察していた。だが、何の目的でこんな卑劣な噂を流すのか。
(いったい誰が……まさか、フィオナ様?)
一瞬、頭をかすめたが、確証があるわけではない。ましてや“聖女”を疑うことがどれほど危険な行為か、セレスティアは重々承知していた。
・魔道による邪魔
噂話に悩まされるなか、セレスティアの体調にも奇妙な異変が起こり始めた。夜眠りにつこうとすると、頭痛や悪寒に襲われ、悪夢を見て飛び起きることが増えたのだ。
ある深夜、意識が朦朧としている中で目を開けると、部屋の隅に怪しい黒い気配が蠢いているようにも見える。闇の中でそっと囁く声が聞こえた気がして、セレスティアは悲鳴を上げそうになるが、目を瞬くうちに“それ”は消えてしまう。
翌朝、何とか起き上がったセレスティアが鏡を覗くと、頬がひどく痩せ、顔色も悪い。夜の悪夢を何度も繰り返しているせいかもしれない。
(これも、フィオナ様の……? もし彼女が“魔道”を使っているとすれば、こんなことも可能なのかしら)
恐怖に震える思いを抱えつつも、セレスティアは弱音を吐くわけにはいかない。絶対に屈してはいけない――そう自分に言い聞かせ、歯を食いしばる。
3. 誤解と和解
・フィオナの策略による決定打
やがて事件が起こった。貴族の館で“大切な宝石箱がまるごと消えた”という報告が入り、それがセレスティアの仕業だと一部の者が声高に責め始めたのだ。
館の使用人の証言によれば、「夜中に公子妃殿下らしき女性がこっそりと敷地に入り込むのを見た」とか、「薄暗いローブを羽織っていたが声やシルエットが似ていた」などという曖昧な話が出ている。
そんな馬鹿げた話を、正式に取り合うほどラウルも愚かではなかった。だが、複数の証言が出てくるにつれ、ラウルの表情にも暗い影が落ちる。
「……セレスティアがそんなことをするだろうか。いや、しないだろうな」
自分で考えても答えは明白だ。しかし、貴族たちが騒ぎ立て、さらにフィオナまで「心配ですわ。セレスティア様がお辛いのかもしれません。もしや、不遇な境遇の反動で……」などと言い募る始末。
次第にラウルの胸には妙な不安が芽生え始める。もし、セレスティアがアストリアのために何らかのスパイ活動をしているのではないか――そんな疑念まで耳に入ってくるのだ。
(まさか……あの時、彼女はこの国の実情を探りたいと言っていた。でも、それは国を思ってのことだと俺は信じたんだが……)
揺れる心。何よりラウル自身、セレスティアを信じたい気持ちと、噂という現実のはざまで苦しんでいた。
・すれ違い
その夜、セレスティアは廊下で偶然ラウルに出会った。暗い面持ちのまま、ラウルは切り出す。
「……セレスティア、少し話がある」
胸をざわつかせながら、セレスティアはこくりと頷く。いつもならわずかでも彼の声を聞くことに喜びを感じるが、今夜ばかりはそうはいかなかった。
ふたりは人気のない一角へ移動し、正面から向き合う。ラウルの瞳にはどこか険しさが混じり、セレスティアはその気配だけで胸が苦しくなる。
「最近、宮廷でよからぬ噂が立っているのは知っているな」
「……はい。私が盗みをしているとか、スパイだとか……」
セレスティアは歯を食いしばりながら答える。ラウルは微かな怒りをにじませつつ、言葉を続けた。
「もちろん、俺は信じていない。だが、このままでは……貴族たちがますます騒ぎ立て、国政に支障をきたす恐れがある。おまえには、しばらく表立った行動を控えてもらいたい」
「それは……私を疑っているのですか? ラウル様まで……」
思わず、涙が滲むような声が漏れた。ラウルは一瞬、躊躇したように見えたが、すぐにきっぱりと否定する。
「疑ってはいない。ただ、今は噂を沈静化させるためにも、おまえが不用意に動くのは危険だ。……だから、少しだけ大人しくしていてほしい」
「……分かりました」
セレスティアは唇をかみ、視線を落とす。彼の言葉が自分を思ってのものだとは理解している。それでも、疑いを晴らすどころか“表舞台から引く”形になるのは、なんともやりきれない思いだった。
そのままラウルは踵を返し、足早に去っていく。セレスティアは彼の背中を見つめながら、冷たい涙が頬を伝うのを止められなかった。
真実を伝えるために
翌朝、セレスティアは決意を固める。
「このまま黙っていれば、私への疑いは晴れないどころか、さらに拡がってしまうわ。皆さんにも迷惑がかかる……。私が動かなければならない」
とはいえ、ラウルの言う通り、表立った行動は危険だ。そこで彼女は信頼のおけるハルトやクレア、レベッカらに助力を仰ぎ、貴族館で起きた“紛失事件”の真相を探ることにした。誰が目撃証言を捏造しているのか、盗品がどこへ消えたのかを突き止めるのだ。
そして、その最中で、セレスティアはフィオナの侍女が貴族の一人に大金を渡している現場を“偶然目撃”する。侍女は慌てて逃げ去ったが、そのやり取りはどう見ても不自然であり、まるで“証言”を操作しているかのように見えた。
(やはり、これはフィオナ様の差し金……。私を貶めるための罠だったのね)
確信を得たセレスティアは、証拠を掴もうと懸命に動く。そんな彼女の姿を見て、ハルトたちも奮闘を誓った。
誤解の解消と、むしろ絆が深まる
その後、ハルトらの調査により紛失した宝石箱が別の場所から見つかり、しかも“公子妃殿下が盗んだ”と証言した使用人に不正な金の流れがあったことが判明する。これにより、セレスティアは完全に嫌疑が晴れ、むしろ嘘の噂を流した者たちが処罰の対象となって宮廷を去る結果となった。
ラウルは真相が判明したとき、ほっと安堵しながらも、彼女に申し訳なさそうに頭を下げた。
「……すまない。おまえを傷つけるような真似をしてしまった」
その姿にセレスティアは瞳を見開く。ラウルが謝罪の言葉をかけるなんて想像もしていなかったのだ。
「ラウル様、ご安心ください。私も未熟でしたし、周囲を混乱させてしまったことは事実です。でも、私を疑わないでくださったこと……本当にうれしかった。ありがとうございます」
そう言って微笑むセレスティアの目に浮かぶ涙は、悲しみよりも喜びの色に近かった。ラウルはその涙に胸を締めつけられ、そっと彼女の肩に手を置く。
「おまえがいなければ、いったいどれほど俺は孤立していただろう……。俺は公子として、国を守るためにいつも心を張り詰めていたが、最近はおまえの姿に救われることが多い」
その言葉は、ほとんど“愛の告白”に等しいようにも聞こえる。セレスティアは頬を染めながら、ラウルの瞳をしっかりと見つめ返した。
「私も、ラウル様のお力になれるのが幸せです。……これからは、もう少しだけ私を頼ってくださいね」
お互いの視線が重なり合い、意識していなかった距離が縮まる。ラウルは微かに喉を鳴らすと、セレスティアの手を握りしめた。
「……ああ。分かった」
その時、ふたりの間を通っていた冷たい風が消え、温もりが生まれたかのような錯覚を覚える。少なくとも、以前とはまったく違う関係へと変わり始めていることを、ふたりは確信した。
・結び
ラウルとセレスティアの絆が深まるほど、フィオナは苛立ちを募らせていた。盗みの一件は失敗に終わり、逆にセレスティアが誠実さを示したことで、宮廷内での好感度を上げてしまった。
(思いのほか、やるじゃない……。だが、まだ終わりじゃないわ)
フィオナは“聖女”の仮面を被りながらも、心の奥でさらなる策略を練り始める。ラウルを自分の傍に繋ぎ止めるためなら、どんな手段でも厭わないつもりなのだ。
一方で、ラウルとセレスティアは紛失事件を乗り越えたことで、互いをより深く理解できるようになっていた。まだ素直に愛を告げ合うには至らないが、その距離は確実に縮んでいる。
――だが、フィオナが動く限り、ふたりの平穏は長くは続かないだろう。宮廷には数々の思惑が渦巻き、フィオナの魔道の影がじわじわと広がっている。
ラウルの冷えた心に芽生えた、小さくて確かな想い。そして、セレスティアを陥れようとするフィオナの策略――。すれ違いと和解を経て、ふたりの絆は一歩前に進んだが、ここからさらに大きな波乱の予感が宮廷を包み始めていた。
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