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第三章 傲慢なる王の会議
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朝食を終えた私は、魔王陛下の“教育係”として行動を共にすることになった。具体的には、彼が城内で行う軍議や政務の場に同席し、必要に応じて助言をする――あるいは、彼の横暴な態度が過ぎるようであれば、注意して改めさせるのが役目だという。
しかし、さっそく壁にぶち当たった。魔王はどこまでも「自分は絶対だ」という空気をまとっており、周囲の魔族たちもその威圧感に押されている。
「本日の議題は“人間界との小競り合い”について。国境付近での紛争を鎮圧するため、兵を動かすべきかどうか……」
玉座の間よりやや小規模の、十数名ほどが入れる“会議室”に私と魔王、幹部クラスの魔族数名、そして魔王の側近が集まっていた。長テーブルに向かい合うように座っているのだが、魔族たちの多くは私のことを不審そうに見てくる。
人間の女が、なぜこんな場に混じっているのか――。彼らの視線には明らかに敵意と嫌悪が含まれていた。
一方、魔王は椅子にもたれかかりながら、不機嫌そうにテーブルを指でトントンと叩いている。
幹部の一人、筋骨隆々の男――角が突き出し、暗い赤色の肌をした魔族が立ち上がった。
「魔王様、人間どもは国境付近で我らの物資輸送を妨害しているとの報告がございます。ここはひとつ、討伐軍を差し向けて一掃するのが得策では?」
「馬鹿を言うな。余計な消耗を避けるために、兵の投入は最小限にすべきだろう。無駄な流血は望まぬ」
魔王はあくまで落ち着いた口調で返すが、その目には明らかな苛立ちが見えた。このやり取りは今日だけで何度目なのか。強硬派の幹部たちは「人間なんぞ皆殺しにすべき」と主張するのに対し、魔王は「そこまでの大規模作戦は不要」と突っぱねる。
問題は、魔王の言い方がいちいち高圧的すぎることだった。兵や幹部が納得するどころか、「気に入らないなら黙れ」とでも言わんばかりの態度をとるので、ますます彼らは反発を募らせる。
私は隣に座りながら、そっと口を挟む。
「あの、陛下……もし紛争地域を落ち着かせたいのであれば、先に情報収集をしっかり行うのはいかがでしょう? 一方的に攻め込むより、被害も少なく……」
「……うるさい。これは俺の国の問題だ。おまえは黙っていろ」
魔王は私に視線すら寄越さない。少し前まで「人間界の知恵を見せてみろ」なんて言っていたくせに、まるで私の発言に聞く耳を持とうとしないのだ。
会議室の空気がピリリと凍る。強硬派の魔族たちからは嘲笑に似た小声が聞こえてきた。「所詮、人間の女には分からぬ」「どんな口を挟もうと無駄だ」と。
私は悔しくて胸がざわつく。確かに、ここは悪魔王国の内政問題だ。でも、私なりに“話し合い”で解決する道を探りたい。魔王が本当に「無駄な争いを望んでいない」なら、彼の指揮がうまく回るようサポートすべきだ。
けれど、あまりに魔王の態度がわがまま過ぎる。私は思い切って、少し声を上げてみることにした。
「陛下、失礼ながら一言申し上げます。わたしは、ただ《兵力を注ぎ込むよりもまず交渉の余地を探るべき》という一般的な提案を差し上げたつもりです。周囲の方々が納得しやすい説明を……」
「……黙れと言っただろう!」
ドンッ! 魔王が机を叩きつけると同時に、部屋全体にビリビリとした魔力のような衝撃が走った。
息苦しいほどの圧迫感が襲い、他の魔族たちもわずかに身をすくめる。だが、その場で唯一正面から魔王を見返したのは私だった。
「……あなたは、私を城に呼びつけて“教育係をやれ”と言いましたよね? それなのに、こうやって意見するたびに黙れと一蹴するのはおかしくないですか?」
「貴様……どこまで不遜な……!」
魔王の青い瞳が怒りに燃える。私は手のひらが汗ばんでくるのを感じながらも、一歩も引かずに言い切る。
「言いたいことがあるなら、冷静に言葉で伝えてください。周りの皆さんだって、あなたの命令だけで動いているわけではないはず。もっと意見を聞いて、必要な説明をして……」
「黙れと……言っている……!」
凍りついた空気がさらに張り詰める。魔王は今にも私を威圧で押し倒そうとするが、ふとした拍子に私の視線とバチッと交わり、一瞬言葉に詰まったようだった。
その隙に、側近が慌てて口をはさんだ。
「陛下、本日はここまでといたしましょう。皆さま、お疲れさまでした……」
側近が強制的に会議を打ち切る形で、魔族たちは一斉に立ち上がる。私も安堵を覚えると同時に、魔王からの凄まじい圧力で体がこわばっていたことに気づく。唇が震えていた。
正直、怖い。魔王は私に対し、今のところ“見せしめ”のようなことをしてこないが、ひとつ間違えれば私の命は簡単に奪われてしまうかもしれない。
それでも、負けてばかりはいられない。私は頭の中で、会社の嫌な上司に食ってかかった記憶を思い出していた——今までだって、最初は「生意気な部下め」と罵られたが、正論を突きつけるうちに少しずつ変化をもたらすことができたじゃないか。
ならば、魔王も同じ……とはいかないだろうが、私の“社畜コミュ力”を駆使してやるしかない。
しかし、さっそく壁にぶち当たった。魔王はどこまでも「自分は絶対だ」という空気をまとっており、周囲の魔族たちもその威圧感に押されている。
「本日の議題は“人間界との小競り合い”について。国境付近での紛争を鎮圧するため、兵を動かすべきかどうか……」
玉座の間よりやや小規模の、十数名ほどが入れる“会議室”に私と魔王、幹部クラスの魔族数名、そして魔王の側近が集まっていた。長テーブルに向かい合うように座っているのだが、魔族たちの多くは私のことを不審そうに見てくる。
人間の女が、なぜこんな場に混じっているのか――。彼らの視線には明らかに敵意と嫌悪が含まれていた。
一方、魔王は椅子にもたれかかりながら、不機嫌そうにテーブルを指でトントンと叩いている。
幹部の一人、筋骨隆々の男――角が突き出し、暗い赤色の肌をした魔族が立ち上がった。
「魔王様、人間どもは国境付近で我らの物資輸送を妨害しているとの報告がございます。ここはひとつ、討伐軍を差し向けて一掃するのが得策では?」
「馬鹿を言うな。余計な消耗を避けるために、兵の投入は最小限にすべきだろう。無駄な流血は望まぬ」
魔王はあくまで落ち着いた口調で返すが、その目には明らかな苛立ちが見えた。このやり取りは今日だけで何度目なのか。強硬派の幹部たちは「人間なんぞ皆殺しにすべき」と主張するのに対し、魔王は「そこまでの大規模作戦は不要」と突っぱねる。
問題は、魔王の言い方がいちいち高圧的すぎることだった。兵や幹部が納得するどころか、「気に入らないなら黙れ」とでも言わんばかりの態度をとるので、ますます彼らは反発を募らせる。
私は隣に座りながら、そっと口を挟む。
「あの、陛下……もし紛争地域を落ち着かせたいのであれば、先に情報収集をしっかり行うのはいかがでしょう? 一方的に攻め込むより、被害も少なく……」
「……うるさい。これは俺の国の問題だ。おまえは黙っていろ」
魔王は私に視線すら寄越さない。少し前まで「人間界の知恵を見せてみろ」なんて言っていたくせに、まるで私の発言に聞く耳を持とうとしないのだ。
会議室の空気がピリリと凍る。強硬派の魔族たちからは嘲笑に似た小声が聞こえてきた。「所詮、人間の女には分からぬ」「どんな口を挟もうと無駄だ」と。
私は悔しくて胸がざわつく。確かに、ここは悪魔王国の内政問題だ。でも、私なりに“話し合い”で解決する道を探りたい。魔王が本当に「無駄な争いを望んでいない」なら、彼の指揮がうまく回るようサポートすべきだ。
けれど、あまりに魔王の態度がわがまま過ぎる。私は思い切って、少し声を上げてみることにした。
「陛下、失礼ながら一言申し上げます。わたしは、ただ《兵力を注ぎ込むよりもまず交渉の余地を探るべき》という一般的な提案を差し上げたつもりです。周囲の方々が納得しやすい説明を……」
「……黙れと言っただろう!」
ドンッ! 魔王が机を叩きつけると同時に、部屋全体にビリビリとした魔力のような衝撃が走った。
息苦しいほどの圧迫感が襲い、他の魔族たちもわずかに身をすくめる。だが、その場で唯一正面から魔王を見返したのは私だった。
「……あなたは、私を城に呼びつけて“教育係をやれ”と言いましたよね? それなのに、こうやって意見するたびに黙れと一蹴するのはおかしくないですか?」
「貴様……どこまで不遜な……!」
魔王の青い瞳が怒りに燃える。私は手のひらが汗ばんでくるのを感じながらも、一歩も引かずに言い切る。
「言いたいことがあるなら、冷静に言葉で伝えてください。周りの皆さんだって、あなたの命令だけで動いているわけではないはず。もっと意見を聞いて、必要な説明をして……」
「黙れと……言っている……!」
凍りついた空気がさらに張り詰める。魔王は今にも私を威圧で押し倒そうとするが、ふとした拍子に私の視線とバチッと交わり、一瞬言葉に詰まったようだった。
その隙に、側近が慌てて口をはさんだ。
「陛下、本日はここまでといたしましょう。皆さま、お疲れさまでした……」
側近が強制的に会議を打ち切る形で、魔族たちは一斉に立ち上がる。私も安堵を覚えると同時に、魔王からの凄まじい圧力で体がこわばっていたことに気づく。唇が震えていた。
正直、怖い。魔王は私に対し、今のところ“見せしめ”のようなことをしてこないが、ひとつ間違えれば私の命は簡単に奪われてしまうかもしれない。
それでも、負けてばかりはいられない。私は頭の中で、会社の嫌な上司に食ってかかった記憶を思い出していた——今までだって、最初は「生意気な部下め」と罵られたが、正論を突きつけるうちに少しずつ変化をもたらすことができたじゃないか。
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