二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花

文字の大きさ
61 / 64

生誕祭の晩餐4

しおりを挟む
 
「父上っ!! その男が兄上だという証拠はありません! 偽物に違いありません! よからぬ魔術師が犬を兄上に似せて見せているかもしれないのです!」

 ランベルト王子が全ての空気を無視して叫んだ。

「そうですわ、陛下。まずはクラウス様かどうかきちんと調査する必要がありますわ。陛下の跡継ぎを名乗る偽物だったら、大変な問題です」

 ゼルマ第二王妃も賛同する。

「そうだ父上、そこの兄上におかしな魔術がかかっていないかどうか、このフローラに見てもらいましょう。フローラのような本当の聖女ならば、きっと人を欺くような魔術は見事に見抜くことでしょう」

「まあランベルト様……。わかりました。私、ランベルト様のご期待に添えるよう一生懸命頑張ります!」

「まあさすが我が息子、名案です。陛下私からもお願いしますわ。聖女ならばきっと正しい判定をしてくれるでしょう」

 じりっとランベルト王子とフローラ妃がクラウス様に近づいた。
 しかし。

「まさか私が自分の息子を見間違えると? そう言うのか?」

 王妃様がそう言ったことで、全ての人の足が止まった。

「もちろん……そんなことはございません。しかし、他の人による確認もあったほうが、この場の人間全員が気持ちよく兄上を迎えられると思ったのです」

 ランベルト王子がそれでも食い下がる。

「私が息子だと言っているのに、まさか疑われるとはな。なんと悲しいことよのう。ねえ、陛下」

「うむ。王妃が言っているのだから間違いないだろう」

 王が即答したことに、マルガレーテは内心驚いていた。
 王様、ちょっと王妃様に対して盲目過ぎるのでは……?
 なんだろう、その信頼がすごい。

「しかし……」

 ランベルト王子がそれでも食い下がろうとして、しかし良い案が浮かばなかったらしい。
 そんなランベルト王子を見た王様は、クラウス様に向かって唐突に言った。

「クラウス、山」
「川」
「空は?」
「飛ぶもの」
「地は?」
「駆けるもの」

「うむ、余の息子だな。クラウスに間違いない」

「なんですかそれは」

 ランベルト王子が思わず全く解せないという顔で呟いたのだった。
 しかし王がはっきりと断言したことで、クラウス様は本物と認められたのだった。

「ではクラウス、その格好ではこのめでたい席には相応しくない。もう少しまともな服を着ておいで」

 王妃様のその言葉で、クラウス様は退場して、きちんと用意された服に着替えて再登場する予定だった。
 その予定だったのだが。

 そこに、「聖女フローラ」が、

「まあ、本当にクラウス様なのですね……! お帰りなさいませ! 私はランベルト様の妻でフローラと申します。これからぜひ仲良くしてくださいね……!」

 そう言ってクラウス様に近づき、クラウス様の手を握って魔術を流し込もうとしたのだった。

 クラウス様は、とっさにフローラの手を拒否して、

「もちろんです。ご結婚おめでとうございます」とだけ言った。
 なにしろフローラが黒魔術師だと知っているので、瞬時に危険だと判断したのだ。

 同じく危険を感じたマルガレーテは、クラウス様のそばに行って寄り添った。

 フローラの手の周りで、黒い魔術が行き場をなくしてぐるぐると回っているのが見えた。
 そしてその魔術が、突然行き場を求めてフローラに襲いかかったのだった。

「きゃああああ!」

 人を呪わば穴二つ。黒い魔術はコントロールに失敗すると、その魔術をかけた本人に襲いかかる。
 だからマルガレーテはイグナーツ先生から、口を酸っぱくして人を呪うような魔術は危険だから一切扱うなと言われていた。

 今回フローラは慌てていたようだ。
 随分強力な魔術を急いで作ってかけようとしたのだろう。もしかしたら焦りのあまり、思ったよりも強力になってしまったのかもしれない。

 その上きっと、今までは可憐な女性で聖女でもある彼女のことを、そこまできっぱりと拒否して触れないという人もいなかったのだろう。

 その結果、彼女は激しく動揺したようだった。
 そしてとうとう、魔術のコントロールを誤ったのだ。

 フローラは、クラウス様にかけようとした魔術を自らかぶることになった。
 フローラだった女性は、みるみる真っ黒な犬に姿を変えていく。

「フローラ……?」

 ランベルト王子が動揺して妻の名を呼んだまま固まった。

「キャン!」

 黒い犬の姿になったフローラが、悲痛な鳴き声を上げた。

「……っ! クラウス兄上がフローラに魔術をかけた!」

 ランベルト王子がやけくそな叫びを上げた。

「ランベルト、クラウスにはそんな魔術は使えないのはお前も知っているだろう」

 すかさず王様が訂正する。

「ではそこのマルガレーテがかけたんだ! レイテの魔女め!」

「彼女の魔力の判定の時にお前もいただろう。彼女は白だ」

「では何かの隠蔽工作を――」

「なにか? 私の息子と嫁に言いがかりか? ん? もちろん証拠はあるんだろうね?」

 その王妃様の言葉で、ランベルト王子も我に返ったようだ。
 さすがに王の前で兄王子と隣国の王女を愚弄したことに気がついたらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

処理中です...