33 / 101
第33話 繋がる過去と、動き出す影
しおりを挟む
埃まみれの俺とリリアがエレノアさんの店に戻ると、彼女は工房から出てきて、淹れたてのハーブティーを用意して待っていてくれた。その表情は落ち着いているが、どこか遠くを見ているような……彼女もまた、独自の調査で何かを掴んだのかもしれない。
「おかえりなさい、二人とも。……何か分かりましたか?」
エレノアさんが尋ねる。
「うん! 見てよ母さん、これ!」
リリアが、興奮気味に記録庫で見つけた古い事件記録の写しをテーブルに広げる。俺も隣で、発見に至った経緯を説明した。
『大商人ヨハンセン邸 地下宝物庫への侵入窃盗事件』――数十年前の未解決事件。厳重な罠の突破、痕跡なし、そして盗まれたのは『時の砂時計』(星屑とは別の古代遺物)。
エレノアさんは、羊皮紙に書かれた内容を、鋭い目でじっくりと読んだ。そして、深く息をついた。
「……やはり、そうですか」
その声には、確信と、わずかな険しさが含まれている。
「この手口……そして、盗まれた品……。間違いありませんわ。今回の『星屑の砂時計』の窃盗と、同一犯……あるいは、同じ組織による犯行でしょう」
「やっぱり……! じゃあ、あの『サイラス』って奴、何十年も前からこの辺りで……!?」
リリアが、驚きと怒りの入り混じった声を上げる。
「可能性は高いですわね。記録によれば、ヨハンセン邸の宝物庫には、当時最新鋭の『魔力格子』や『自動迎撃ゴーレム』まで配備されていたとか……。それを単独(あるいは少数)で突破するなど、並大抵の腕ではありません。サイラスの『罠解除の達人』という評判とも一致します」
エレオノラさんは、腕を組んで分析する。
「ちなみに、わたくしの方でも、少しだけ情報が得られましたわ」
彼女は、そう言って一枚のメモを取り出した。
「わたくしの古い知人に確認したところ、『サイラス』という名の腕利きは、確かに裏の世界では有名で……特に、古代文明の遺物や、時空に関わる魔道具の『回収』を専門にしている、とのことです」
古代遺物、時空魔道具……。今回の『星屑の砂時計』も、過去の『時の砂時計』も、まさにそれだ! 点と点が、線で繋がった瞬間だった。
「……ってことは、サイラスって奴、ただの泥棒じゃなくて、そういうヤバいブツ専門の……トレジャーハンターみたいな?」
リリアが言う。
「トレジャーハンター、というには、少々やり方が汚すぎますけれどね……。ですが、彼の目的が特定の種類のアーティファクトにあることは、ほぼ間違いないでしょう」
「じゃあ、あいつ、また何か狙ってるかもしれないってことか……!?」
俺は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。今回の砂時計を盗んだのも、何らかの目的のため……そして、それはまだ終わっていないのかもしれない。
「その可能性は、十分に考えられますわね」
エレオノラさんは、厳しい表情で頷く。
「これまでの情報を統合すると……『月影のギルド』に所属するサイラスという男が、数十年前から、この地域で時空関連のアーティファクトを狙って暗躍している。そして、最近『星屑の砂時計』を盗み出した……」
彼女は、テーブルの上に広げられた街の地図を指差す。
「問題は、彼が『次』に何を狙うか、ですわ」
「次のターゲット……?」
「ええ。この街、あるいは近郊には、まだ彼らの食指を動かすような『お宝』が眠っているかもしれません。例えば……市立博物館の地下収蔵庫、有力貴族の個人コレクション、あるいは忘れられた古代遺跡……」
エレノアさんの言葉に、俺たちは息を呑む。もし、サイラスがまだこの街に潜んでいて、次の犯行を計画しているとしたら……?
「……方針を変更しますわ」
エレオノラさんは、きっぱりと言った。
「サイラス本人を直接追うのは、現状では難しい。ですが、彼が次に狙いそうな場所を予測し、先回りすることはできるかもしれません」
「先回り……って、待ち伏せするってこと!?」
リリアが、目を輝かせる。
「待ち伏せ、というよりは『監視』、そして可能であれば『妨害』ですわね。うまくいけば、そこでサイラス本人か、あるいは少なくともギルドの尻尾を掴むことができるかもしれない」
エレオノラさんの瞳に、鋭い光が宿る。
(……なんか、とんでもなく大事になってきたぞ……)
俺は、もはや逃げ出すことも忘れ、この危険な作戦の行方に、ただただ不安と、ほんの少しの好奇心を感じていた。
「まずは、この街にある、サイラスが狙いそうな『候補地』をリストアップしましょう。博物館、貴族の屋敷、遺跡……心当たりを洗い出すのです」
エレオノラさんの指示で、俺たちは再び顔を突き合わせる。
魔法窃盗事件の捜査は、過去の解明から、未来の阻止へとシフトした。
影に潜む暗殺ギルドの専門家を相手に、俺たちは果たして太刀打ちできるのだろうか?
俺は、これから始まるであろう、更に危険な探索に備え、無意識のうちに、新調したばかりの革鎧の胸元をぎゅっと握りしめていた。
「おかえりなさい、二人とも。……何か分かりましたか?」
エレノアさんが尋ねる。
「うん! 見てよ母さん、これ!」
リリアが、興奮気味に記録庫で見つけた古い事件記録の写しをテーブルに広げる。俺も隣で、発見に至った経緯を説明した。
『大商人ヨハンセン邸 地下宝物庫への侵入窃盗事件』――数十年前の未解決事件。厳重な罠の突破、痕跡なし、そして盗まれたのは『時の砂時計』(星屑とは別の古代遺物)。
エレノアさんは、羊皮紙に書かれた内容を、鋭い目でじっくりと読んだ。そして、深く息をついた。
「……やはり、そうですか」
その声には、確信と、わずかな険しさが含まれている。
「この手口……そして、盗まれた品……。間違いありませんわ。今回の『星屑の砂時計』の窃盗と、同一犯……あるいは、同じ組織による犯行でしょう」
「やっぱり……! じゃあ、あの『サイラス』って奴、何十年も前からこの辺りで……!?」
リリアが、驚きと怒りの入り混じった声を上げる。
「可能性は高いですわね。記録によれば、ヨハンセン邸の宝物庫には、当時最新鋭の『魔力格子』や『自動迎撃ゴーレム』まで配備されていたとか……。それを単独(あるいは少数)で突破するなど、並大抵の腕ではありません。サイラスの『罠解除の達人』という評判とも一致します」
エレオノラさんは、腕を組んで分析する。
「ちなみに、わたくしの方でも、少しだけ情報が得られましたわ」
彼女は、そう言って一枚のメモを取り出した。
「わたくしの古い知人に確認したところ、『サイラス』という名の腕利きは、確かに裏の世界では有名で……特に、古代文明の遺物や、時空に関わる魔道具の『回収』を専門にしている、とのことです」
古代遺物、時空魔道具……。今回の『星屑の砂時計』も、過去の『時の砂時計』も、まさにそれだ! 点と点が、線で繋がった瞬間だった。
「……ってことは、サイラスって奴、ただの泥棒じゃなくて、そういうヤバいブツ専門の……トレジャーハンターみたいな?」
リリアが言う。
「トレジャーハンター、というには、少々やり方が汚すぎますけれどね……。ですが、彼の目的が特定の種類のアーティファクトにあることは、ほぼ間違いないでしょう」
「じゃあ、あいつ、また何か狙ってるかもしれないってことか……!?」
俺は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。今回の砂時計を盗んだのも、何らかの目的のため……そして、それはまだ終わっていないのかもしれない。
「その可能性は、十分に考えられますわね」
エレオノラさんは、厳しい表情で頷く。
「これまでの情報を統合すると……『月影のギルド』に所属するサイラスという男が、数十年前から、この地域で時空関連のアーティファクトを狙って暗躍している。そして、最近『星屑の砂時計』を盗み出した……」
彼女は、テーブルの上に広げられた街の地図を指差す。
「問題は、彼が『次』に何を狙うか、ですわ」
「次のターゲット……?」
「ええ。この街、あるいは近郊には、まだ彼らの食指を動かすような『お宝』が眠っているかもしれません。例えば……市立博物館の地下収蔵庫、有力貴族の個人コレクション、あるいは忘れられた古代遺跡……」
エレノアさんの言葉に、俺たちは息を呑む。もし、サイラスがまだこの街に潜んでいて、次の犯行を計画しているとしたら……?
「……方針を変更しますわ」
エレオノラさんは、きっぱりと言った。
「サイラス本人を直接追うのは、現状では難しい。ですが、彼が次に狙いそうな場所を予測し、先回りすることはできるかもしれません」
「先回り……って、待ち伏せするってこと!?」
リリアが、目を輝かせる。
「待ち伏せ、というよりは『監視』、そして可能であれば『妨害』ですわね。うまくいけば、そこでサイラス本人か、あるいは少なくともギルドの尻尾を掴むことができるかもしれない」
エレオノラさんの瞳に、鋭い光が宿る。
(……なんか、とんでもなく大事になってきたぞ……)
俺は、もはや逃げ出すことも忘れ、この危険な作戦の行方に、ただただ不安と、ほんの少しの好奇心を感じていた。
「まずは、この街にある、サイラスが狙いそうな『候補地』をリストアップしましょう。博物館、貴族の屋敷、遺跡……心当たりを洗い出すのです」
エレオノラさんの指示で、俺たちは再び顔を突き合わせる。
魔法窃盗事件の捜査は、過去の解明から、未来の阻止へとシフトした。
影に潜む暗殺ギルドの専門家を相手に、俺たちは果たして太刀打ちできるのだろうか?
俺は、これから始まるであろう、更に危険な探索に備え、無意識のうちに、新調したばかりの革鎧の胸元をぎゅっと握りしめていた。
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる