聖女様かと思ったら、パーティーメンバーのお母さん(しかも伝説の魔女)でした ~

さかーん

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第40話 明かされた情報と、影への扉を開く覚悟

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 工房から出てきたエレオノラさんの手には、あの不気味なロックピックと、何枚かの羊皮紙が握られていた。彼女の表情は、疲労の色を隠せないものの、それ以上に強い決意と、わずかな興奮すら感じさせるものだった。俺とリリアは、息を詰めて彼女の言葉を待つ。

「まず、このロックピックについてですが……」
 エレオノラさんは、テーブルの上にそれを置いた。
「材質は、やはり特殊な『影鉄鋼(えいてっこう)』でした。光や魔力を吸収・拡散させる性質があり、隠密行動に非常に適しています。そして、この『流れ紋』……これは、わたくしの知る限り、『月影のギルド』の中でも、特に腕利きの者、あるいは特定の家系にのみ伝わる様式のはず」

「じゃあ、やっぱり……!」
 リリアが声を上げる。

「ええ。これを使用したのが、かの『サイラス』である可能性は、極めて高いと言えるでしょう。さらに……」
 エレオノラさんは、羊皮紙の一枚を指差す。そこには、ロックピックの先端部分の拡大図と、複雑な魔術回路のようなものが描かれていた。
「この先端部分には、微弱ながらも高度な解呪・探知妨害の魔法が付与されています。物理的な錠前だけでなく、魔術的な封印や結界をも突破するためのものでしょう。……彼らが、魔法的な罠の解除に長けているという情報とも一致しますわ」

 魔法的な罠解除のプロ……。ますます厄介な相手だ。

「わたくしのルートで得た情報も、それを裏付けています」
 エレオノラさんは続ける。
「『サイラス』の名は、やはり裏社会ではアーティファクト専門の『回収屋』として知られていました。特に、魔法的な防御が施された場所を好んで狙うとか。そして……ここ数週間、この街の周辺で、彼のものらしき『影』が目撃されたという情報も、いくつか掴みましたわ」

「じゃあ、やっぱりまだこの街に……!?」
「その可能性は高いですわね。おそらく、次の『仕事』の準備、あるいは……あの『綺麗な通路』をアジトか隠れ家として利用しているか……」

 全ての情報が、あの旧水道遺跡の通路へと繋がっていく。

「……分かりました」
 俺は、覚悟を決めて言った。
「行きましょう、あの通路へ。手がかりがあるなら、確かめないと」
 もう、怖がってばかりもいられない。俺だって、やるときは……やる(はず)!

「カイト……」
 リリアが、少し驚いたように俺を見る。
「ふふ、頼もしいですわね、カイトさん」
 エレオノラさんは、満足そうに微笑んだ。
「ですが、もちろん、無策で突入するわけではありません」

 彼女は、新たな羊皮紙を広げた。そこには、旧水道遺跡の、例の通路周辺のより詳細な地図と、いくつかの注意書きが記されている。
「あの通路の入り口付近には、やはり魔術的な『隠蔽』と『警報』の結界が張られている可能性が高いです。わたくしがこれを解除、あるいは一時的に無力化します」
「おおっ!」
「リリア、あなたは先頭で物理的な罠や、万が一の伏兵に備えてください。あなたの戦闘能力が頼りですわ」
「任せて!」
 リリアが、力強く頷く。

「そして、カイトさん」
 エレノラさんが、俺に向き直る。
「あなたには、これを」
 そう言って、彼女は小さな水晶のペンダントを俺に手渡した。
「これは、『魔力感知の水晶』です。微弱な魔力の流れや、隠された罠などを感知する助けになるでしょう。あなたのその妙な『勘』と合わせれば、あるいはわたくしたちが見落とすようなものに気づけるかもしれません」
「魔力感知……俺に使いこなせるか分かりませんけど……」
「大丈夫ですわ。強く念じれば、反応があるはず。そして……これを」
 エレノラさんは、さらに数種類の、小さな護符のようなものを取り出した。
「対幻術、対呪詛、そして……これは、緊急脱出用の転移の護符です。万が一の時に、ためらわずに使いなさい」
 用意周到すぎる……! それだけ、危険だということか。

「作戦開始は、今夜。月が最も高く昇る頃……敵が最も油断しやすい時間帯を狙います」
 エレノラさんの声に、俺たちは静かに頷いた。

「準備はよろしいですわね?」
「うん!」
「……はい!」

 俺は、渡された水晶のペンダントと護符を、しっかりと握りしめる。
 これから始まるのは、ただの遺跡探索じゃない。危険な裏組織の、それも凄腕の実行犯のアジト(かもしれない場所)への潜入調査だ。

 もう後戻りはできない。
 俺は、腹の底から込み上げてくる緊張と、ほんの少しの武者震い(恐怖かもしれない)を感じながら、決戦(?)の時を待つ。

 エレノラさん、リリア、そして俺。
 俺たち三人の、運命やいかに……!
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