異世界探索記録

土方かなこ

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1章

生ける厄災

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男性が日本語を話したことに驚き思わず瓶を落としてしまう
さっきまで全く耳にしたことがない言語を話していたのに
一体なぜ…

「そんなに警戒しないでくれ
おそらく言語が通じなかった君が、私の言うことがわかるようになったのは、先ほど飲んでもらったカルワ液の影響さ」

「カルワ液…」

「どんな言語も理解できるようになる魔法道具だ
一度くらいは目にしたことがあるんじゃないか?」

「へ?」

「その服装を見るに遠い国の方なのかな?」
ゆっくりと僕を見つめ問いかける

「ルチオ様 この少年は怪しすぎますっ!」
ふと女性の警戒した声が草原に響く

気づくとルチオのそばに控えていた甲冑姿の兵士から出された声であった
甲冑のせいで顔があまりわからないが、女性だったのか

「イオ、いきなり失礼だろう」

「いいえ ルチオ様
そもそも本日この草原の門を通る許可が降りたのは、我らのみ
おまけにこんな軽装で寝ているなど、明らかにおかしすぎます」

イオと呼ばれた兵士をたしなめるように一瞥したのち、こちらを見やる

「君が一体何者かは私には想像もつかないが、なぜこの草原で寝ていたのだろう
ここはホーリー草原 別名ドラゴンの聖地だ
いつドラゴンが現れてもおかしくない危険な場所なのだよ」

「いつ現れてもおかしくないって…」

「とても危険な地ゆえ、ここに入るための入り口はすべて門番が存在し、許可が下りねば入れない
そして本日は私達しか許可が下りたものはいないと聞いていたのだが」

こ、困った
話を聞くに完全に僕は不審者だ
しかし自分自身でさえ、なぜここにいるのかわからないのに、どうやって説明していいものか

「あの、僕本当になぜここにいるのかわからないんです」

「わからない?」

「とぼけるなっ ホーリー草原は人間を拒む伝説の地
我らとて光の加護を受けているから、ここでも生きていられのだ

ルチオ様 新しい幻術の類か、擬態が得意な魔物やもしれません
即刻処罰するべきです」

「処罰って」
一体何の罪を俺が犯したというのだろう
しかし黙っていたら本当に殺されてしまいそうな勢いだ

「僕は本当になぜここにいるのかわかりません
そもそもドラゴンだなんて、そんな 
すくなくとも僕が住んでいたところでは聞いたこともありません」

「ドラゴンを知らないなど
どんな田舎者でもドラゴンを知らぬなど聞いたことがない」

「聞いたことはあるけど本当に存在するなんて さっき飲んだ液体だって初めて見たし…」

「確かに君のうろたえぶりは演技には見えなかった

カルワ液は貴重ではあるが、たいていの町にそれなりの値段で取引されているものだ
それなのに、あの反応は少しひっかかるものがある」

「あの、僕は先ほどまでここを夢の世界だと思っていたんです」

これで違かったらかなり恥ずかしい発言だ
しかし夢の中とはいえ、追い詰められているには違いない

「ここに来る前の記憶もないし何が何だか…」
「記憶が?」

「多分制服を着ているので今日は学校に行くはずだったと思うのですが」

「学校?どこかの国の貴族かなにかだったのかしら?そうは見えないけど
それにそんな制服の学校なんて見たことがないわ
余りにも質素じゃない」

質素と言われてもこれは日本じゃ一般的なブレザーのはずだ
装飾は少ないが質素といわれるのは初めてだ

「うーん
なんだか話がかみ合わないことが多いな
ドラゴンの存在を知らないのも、なかなか聞かない話だ」

「僕のいた場所ではドラゴンは架空の存在でした
本の中の生物であるはず
それにカルワ液なんて便利なものだって、きいたこともない」

「つまり君にとってドラゴンも魔法も架空のものであると?」

「そのとおりです」
うそを言っても仕方がない
幸いなのはこのルチオという男性は僕の話をちゃんと聞いてくれそうであるということだ
イオしかいなかったらおそらく生きてはいなかった

さっきから見ないようにしていても二人の腰に差された剣が目に入る
あんなの日本でしてたら即効逮捕されるだろう

「なるほど
にわかに信じがたいが君はうそをついてはいない」

「ルチオ様っ」

「これはあくまで私の仮説だが、君は異世界から来た可能性がある」

「異世界から?僕は地球に住んでいたはずです」

ちきゅう、と小さくつつぶやくと興味深げにこちらをみる

「聞いたことがある
しかしそれは…」




その瞬間 天地を割くような咆哮が、大地を震わせた



最初に見えたのは、こちらを射殺さんとする黄金の目玉

口から爆ぜる金色の炎

ここからでもわかるほど鋭く大きなかぎづめ

そして大空を覆う鈍色の翼




まさに生ける厄災




 

   「…ドラゴンだ」




ーねぇねぇ


「ねぇ、パパ このこはだあれ?」

「これはねドラゴンって言うんだ」

「どらこん?」

「そう なかなか会えないんだけどね」


「えー!!でもぼくどらごんさんと、おはなししてみたいなぁ」

「それはどうして?」

「だってかわいいもの」

ふふっとほっぺたをを赤らめて話す少年を、いつくしむように頭をなでる
そっか、とつぶやいてしばらく柔らかい髪に指を通す

「…じゃあいつか パパと一緒にドラゴンさんと遊ぼうか」

「ええッ そんなことできるの?」

「できるさ こんなにかわいい、サクラの頼みだもの それにね、ドラゴンとなかよくなれる秘密の魔法があるんだよ」

「まほう?」

「そう、魔法 でもそんなものも必要ないかな


「えへへへっ パパ、だいすきっ!」

満面の笑みのサクラを抱き上げて額を合わせた

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