不幸のラブレター

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卒業

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待ちに待っていなかった卒業式が、予定通り開かれた。
番号順に並んで、校長先生の話を聞く。
「3年1組、赤中梨里杏さん。」
出席番号順に次々と人が呼ばれていく。
ただ、わたしはこの時間だけは好きだった。
自分が成長した、と実感できる唯一の時間なのだ。
わたしは2組の二十番だった。そろそろ…だな。
「3年2組、香川麗華さん。」
長い、長い、卒業証書授与の時間にふと沈黙が訪れた。
「3年2組、黒川美玲さん。」
春の暖かさの中に冷水が注がれた。
名簿表の彼女の名前は、消されていなかったのだろう。
虚しい沈黙、流れぬ涙。返事のない名前は闇の中に消えていった。
「失礼しました。3年2組、角川天馬さん。」
何事もなかったかのように振る舞う大人たち。
あの子の過去も苦しさも何も知らずに。
「3年2組、仲田香苗さん。」
「はい。」
右手、左手…授業で習ったことを思い出し、すべてを完璧に終わらせる。
ステージの中心で体育館を見下ろすと、これが本当の希望の光なのだよ、と訴えかけんばかりに、窓から差し込む光がみんなを照らしていた。


全員の卒業証書を渡し終えた校長先生は、咳払いをしてから、また話をし始めた。
本当は、そんなプログラムなんてなかったのに。

「みなさん。苦しいこともあるでしょう。迷うときもあるでしょう。いじめだって、ないとは言い切れないでしょう。だからこそ、みんなで支え合って生きていくんです。あの事件で、みなさんが驚いたことも、悲しんだことも知っています。でも、あれは過去としてこれからは前を向きなさい。」

誰も、泣いていなかった。泣けなかったんだ。
でも…私は泣いた。

私の鼻水をすする音だけが体育館に響き渡る。

「ねぇ、あの子がなんで泣いているの?」
「おかしいよね?」
「もしかして、うれし泣きとか?」

まわりでそうつぶやく声が聞こえる。
やっぱり…何も知らないんだね。

私と美玲は、いじめっ子といじめられっ子の関係にあった。
でも、その背景で私と美玲は、何があったのか。

これは、私の過去の話だ。
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