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第7話: 新たな仲間、チーム結成!
しおりを挟むアメリアは朝の光に目を覚まし、簡単に身支度を整える。昨夜使った食器をさっと片付け、窓から差し込む光に街の色を確認しながら深呼吸する
リリアがアメリアの肩を軽く叩く。
「朝の支度は終わった?」
「うん。ばっちり!」
「街にも少し慣れてきたみたいだし、今日はギルドに行ってみない?」
「ギルド……?」アメリアが首をかしげる。
「冒険者の依頼を受けたり、情報を集めたりする場所よ。まぁ、行ってみれば分かるわ。面白いところだから」
二人は通りを歩きながら、街の雑踏を抜け、ギルドの建物へと向かった。外観は大きくて堂々としていて、看板には剣と盾の紋章が描かれている。
ギルドの受付に近づくと、制服姿の受付嬢がにこやかに迎えてくれた。
「初めての方ですか? こちらでは依頼の紹介や登録ができます。詳しくは中で案内しますので、どうぞごお進み下さい。」
中へと通され、アメリアは辺りを見回した。
広々とした石造りの広間には、巨大な掲示板が壁際に据えられ、そこには依頼の書状がびっしりと貼られている。木の机では屈強な冒険者たちが談笑し、酒の香りや革の匂いが漂っていた。ざわめきと笑い声の中に混じる金属音が、どこか心を浮き立たせる。
「こちらが冒険者ギルドです。冒険者として登録すれば、ここで依頼を受けたり、報酬を受け取ったりできます。基本的な流れはとてもシンプルですよ」
「依頼……!」アメリアが小さくつぶやく。
「そうです。依頼には討伐や護衛、物資の運搬など、さまざまな種類があります。ただし、危険度や難易度に応じて、受けられる依頼には制限があります。初めての方は、まずは簡単なものから挑戦していただくのが基本です」
リリアが横から口を挟む。「心配しなくていいわ。危ない依頼は、ちゃんと経験のある人が一緒についてくれるから」
アメリアは、掲示板を見上げた。
「ねえリリア、せっかくだし……依頼、受けてみようよ!」
唐突な言葉に、リリアは少し驚いたように眉を上げる。しかしすぐに、その瞳に浮かぶ真剣さと期待を込めた笑顔に気づいて、ふっと息を漏らした。
「……そうね。初めての体験としては悪くないわ。危険な依頼じゃなければ」
受付嬢が手元の書類に目を落としながら声をかける。
「初めて受けるなら、ギルドから先輩を紹介できます。チームに加わる際にサポートしてもらえるので安心ですよ」
「じゃあお願いします!」アメリアは元気に答えた。
受付嬢は小さく頷き、手元の紙にさらさらと記入した。
「では、広場の東側にて合流してください。ちょうど経験豊富な先輩方が待機していますから」
リリアと一緒に、指定された待ち合わせ場所へ向かう。広場を抜け、石畳の道を進むと、先に到着していた人物が見えた。
「おーっ!やっぱり来たな!」
ライオネルが手を振りながら駆け寄ってくる。日焼けした笑顔は相変わらずだ。
「新しく仲間が来るって聞いて、もしやと思ったらやっぱりリリア達だったか!」
「ふふ、気付いてたのね。待たせちゃったかしら?」リリアが柔らかく答える。
「ようやく揃ったか」
静かな声が背後から落ちてきた。そこに立っていたのは、深緑の髪を肩に流した少年だった。整った顔立ちに鋭い目つき。手に持った書類を既に一瞥している。
「僕はカイロン。今回の依頼を受けている者だ。君たちが加わると聞いている」
淡々とした口調に、アメリアは一瞬身を引き締める。だがその雰囲気とは裏腹に、リリアが小さく頷いた。
「ええ、よろしくね」
「おいカイロン、もう少し愛想よく言えよ!」ライオネルが肩を組もうとするが、カイロンはひらりと身をかわす。
「角度を考えれば、避けるのは簡単だ」
「うわっ、またそれだ!」
ライオネルが悔しそうに頭をかく様子に、アメリアは思わず笑ってしまった。
「仲がいいんですね」
「仲……っていうのかな」カイロンが小さくため息をつく。だがその表情には、ほんの僅かに苦笑が混じっていた。
リリアがそっと横に寄り、「ライオネルとカイロンは昔から一緒に活動してるの。性格は正反対だけど、意外と息が合うのよ」と教えてくれる。
「なるほど、確かに息ぴったり。」
「カイロンはな、頭が良くて戦術とかバッチリ考えてくれるんだ!」ライオネルが大きな声で割り込むように紹介する。
「余計なことを言うな」カイロンは淡々と受け流す。
「頼りになりそうね」リリアが目を細めて小さく微笑む。その言葉に、カイロンはわずかに視線を逸らし、短く「……当然だ」と返した。
「さあ、説明も終わったことだし、準備運動でもするか! オレはいつでも動けるぞ!」
カイロンは冷静に書類を片手に、「無駄口はいい。まずは依頼内容の確認だ。」と言うが、どこか楽しげな雰囲気も滲んでいる。
ライオネルとカイロンのやり取りを眺めながら、アメリアたちはギルドの広間へと案内された。
依頼内容を記した掲示板の前に立つと、受付の女性が丁寧に説明を始める。
「今回の依頼は、街外れの森で調査を行うことです。最近、野生の魔物が出没しているという情報があったので、被害が出る前に確認してきてほしいのです。危険は少なめですが、野生の魔物が出没することがありますので、注意してください」
アメリアは掲示板を見上げ、すぐにリリアに耳打ちする。
「リリア、野生の魔物って……」
「大丈夫よ、過去に街の人が遭遇した程度の危険しかないから。とはいえ、用心するに越したことはないわね」
カイロンはすでに依頼書に目を通しながら、「作戦は僕が立てる。まずは森への最短ルートを確認し、危険ポイントを予測する」と淡々と宣言する。
ライオネルはその横で「よっしゃ!オレに任せろ!」と元気よく胸を張る。
アメリアはふと二人を見比べ、思わず笑みをこぼす。
受付の女性が最後に、「準備が整ったら、こちらの地図を参考に森へ向かってください」と地図を手渡す。
アメリアは地図を受け取り、胸が少し高鳴るのを感じた。
――新しい仲間と一緒に、どんな冒険が待っているんだろう……
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