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「君は、娘のためなら死ねるかね?」
「はい! もちろんです! 僕はメイちゃんが大好きですから!」
そう答えたのは、いつの事だっただろうか。
幼馴染であり、恋人でもあった彼女、秋葉芽衣の父親に対してそんなことを、かつての俺は言った。
その事に、きっと後悔はなかったのだろう。なにせそのことが理由で親に交際を認めて貰えたのだから。
だが、今の俺は違う。答えを間違えたと断言できる。
メイのことは愛していた。けれどそれが理由で全てを捨てさせられる事になったのだから。
機械の体に戦うための装備たち、そして無機質なオーダーを下す指揮AIが俺の持ってる全てだ。大好きだったメイの隣には、“俺がいる”。
生身で、こんなクソみたいな苦しみを背負ってもいない、オリジナルの俺が。
そう、暗く思っていると自室のドアが開く。やってきたのは、同僚のヒューズ。自ら志願してサイボーグとなり、この戦争に参加を決めた奴だ。
「2号、時間だ」
「わかってる。けど、少しくらいはこの世を呪わせてくれ」
「世界のために戦えるのは栄誉な事だろう?」
「それが、納得しての話だったならな」
「……わからんな」
「俺もお前ら志願組がわかんねぇよ」
そんな会話をしながら、ヒューズと共に警備任務に入る。
ここは、決戦都市新宿。
この日本に残された少ない都市の一つであり、技術の倫理を捨てた地獄の一歩手前。
襲いくるエイリアンから、サイボーグ化や強化手術、そしてクローン技術により強化された人類が防衛する都市だった。
■□■
「相変わらず仕事は見事なものだな」
「じゃなきゃ今頃スクラップだっての」
撃退に成功した事で敵方が撤退を始め、指揮AIからの指示でのエイリアンの遺体の回収を手早く行いながら俺とヒューズは話す。
幸いな事に今回の襲撃は軽いもので、互いに損傷はなかった。
「そういえば、これらの遺体はどう使われれのだろうな」
「肉になるんだとさ。新しいクローンか、街の人間の食肉かはしらねぇけど」
「……彼らは、食えるのか」
「昔食ったが、生でも食えなくはなかった」
「今度試してみよう。感謝するぞ2号」
「どこに感謝してんだよお前は」
「この戦争も長くなった。ベテランの知恵が失われているのが他所の戦線からはよく伝わってくるぞ」
「死ぬ気で試せばどうにもなるさ。お前はまだ生身が残ってるんだからな」
「後悔しているのか? 全身機械化をした事を」
「してるよ、風呂に入れなくなった」
「それは人生の損失だな」
「そこは分かり合えるんだよなぁ、お前と」
そうしていると回収作業は終わり、自分たちも他の部隊の連中も帰還する。
今日も生き延びることができたのか、今日も生き延びてしまったのか、実際のところよくわからない。
だが、俺にはまだ明日という地獄が残っているようだ。
■□■
そうして部隊の詰め所に帰還すると、夜中にアラートが鳴った。
指揮AIによると、街の中へとエイリアンの部隊が侵入していたらしい。
上手いこと陽動に引っかかってしまったとは思うが、どうせ指揮AIに行動は縛られている。指令通りに動くしかないのだ。
「ヒューズ、B装備で行くぞ」
「火力足りないのではないか?」
「その時は内蔵火器を使う。今はスピード優先だ」
「理解した。行くぞ2号」
「ああ、さっさと終わらせよう。早く寝たい」
そうして、俺とヒューズは街の中へと入っていく。
そこは、やはり地獄だった。
建物の多くは新宿臨時政府に戦争のための資材として扱われ、奪い取られた。
残った人間は、ありあわせのテントでどうにか暮らしているらしい。あるいは権力者に傅いてその傘下で暮らしている者もいるらしい。
そして、飢えで死んだ者の死体は運ばれて、新たなクローン兵士の材料にされている。
そんな、地獄だった。
「様子に大きな変わりはないな。目は死んでいるが、多くの者は生きている」
「こんな目で生き残って、なんになるのかね?」
「それはわからない。だが、死ぬよりはマシだろう」
「そんなもんか?」
「さてな、己は彼らではない」
そう無駄話をしていると、自分の全身義体がバレたのか、ヒューズのサイボーグ部分がバレたのか知らないが、ざわざわと人々が騒ぎ始めた。
あんな目でも噂話を止めないとは、人間とは案外しぶといのかもしれない。
「ヒューズ、どうする?」
「正面から行こう。話くらいは聞けるはずだ」
そうしてヒューズを前に、俺が警戒のシフトで前に進むと
そこには、俺がよく覚えている人物の姿があった。
メイの、父親だ。
「だれか、軍に伝えてくれ! 研究所が乗っ取られた! エイリアンに!」
「なるほど、理解した。2号、行くぞ」
「……ああ」
「その機械の体、君たちは! 軍の!」
「ええ、ですが時間もないので手短に、研究所とは秋葉研究所でよろしいですか?」
「ああ! 頼む!」
そんな救われたような顔をする男に心底吐き気がする。
彼は、クローン兵士を最初に実用化したこの街の地獄を作り出したクズの一人だ。可能ならば殺してしまいたい。指揮AIはそれを許してはくれないが。
「行くぞ、2号」
「ああ、さっさと始末を付ける」
「……その、声は?」
「誰でもない、ただの2号だよ」
そうして、研究所へと向かう。
この街の最新技術を作り出している最重要拠点である、その場所に。
■□■
殺す、殺す、殺す。
侵入してきたエイリアン達は一個中隊程度の数らしい。そう指揮AIが述べているのをとりあえず信じてライフルで的確に頭を潰していく。
エイリアンの体は、4つ足に4本の腕となかなかに奇妙な作りであるが、頭は一つ。ヘルメットなどで守ってはいるが、その程度は最新式の銃弾を使えば軽々と貫ける。
「2号、パワードスーツが居ないぞ」
「……破壊工作の跡も見えない。何をしに来たんだコイツら」
疑問を覚えつつも、とりあえず進む。
そうしていると、集団が集まっている部屋が一つあった。どうやら、その奥の部屋に施設の生き残りの人間が立て籠もっているらしい。
無言でヒューズと頷き合い、俺の内蔵火器をスタンバイ状態に移行する。それの完了とともにヒューズがスモークグレネードを投げる。
それが起動して視界が切れたところで、起動した内蔵火器、“レーザーブレード”にて扉の前にいた奴らを軒並み殺していく。
何人かは避けようとしたし、防ごうとした。
しかし、熱の塊である剣から逃れることは出来ず、真っ二つにされて絶命した。
「冷却開始、これで最後か?」
「指揮AI曰く、もう1匹いるそうだ」
「応援を呼ぶ必要はないな」
「念のためレーザーブレードの冷却が終わってから行こう。B装備でパワードスーツ相手は面倒極まりない」
「いや、もう一本はある。行こう」
「……どうした? 2号」
「どうもしてない、さっさと帰りたいだけだ」
そうして、指揮AIの指示のもと動いたところで、屋上にたどり着く。
そこには、エイリアンが侵略するときに使われる転移装置、ポータルが置かれていた。
そして、それを守るのは一体のパワードスーツ。四本ずつの手足それぞれから火器や近接武器を使用してくる強敵だ。
そして、そんなパワードスーツの足元には“俺”が転がっていた。
それを遠くから見るのは、今でも忘れられない恋心の向く先。メイがいた。
人間の可聴音域から外れている声にならない言葉で何かを言いながら、倒れている“俺”に銃口を突きつけるパワードスーツ。
それを見て、ヒューズは躊躇った。民間人を危険には巻き込めないのだとか思っているのだろう。コイツは意外と騎士らしく生きているのだから。
だが、これは好機だ。
俺が、“俺”を殺すことができるまたとない機会。これを逃せばもう二度とそんなものは存在しないだろう。
だから、俺は躊躇わなかった。
左腕のレーザーブレードを起動して接近する。
その起動音で気づいたパワードスーツは俺に向かって銃口を向けてくる。
そうするだろうとは思っていた。レーザーブレードで接近してくる機械人間は、最優先で対処しなければならない相手だからだ。
だが、それだけだった。
目を、合わせてはいない。
合図を、出したわけではない。
だが、俺が好きになった彼女なら、こんなときに動かないわけはないのだから。
メイは、ちょっと人としてどうかと思うくらいには肝が据わっているのだ。
「ぁあああああああ!」
そんな声と共に、メイの足元に転がっていた重ライフルをめちゃくちゃな構えで構えて、放つ。
恐らくあれは脱臼するだろうなと思いながら、その着弾によりぐらついたパワードスーツをぶった切る。
そして、爆発するパワードスーツから、自然に動いた位置にて破片をブレードで防いだ。背中の人物には、新たな怪我はない。
街に侵入してきたエイリアン達は全滅し、ポータルも起動する前に破壊された。
故に、俺とヒューズは去っていく。仕事は終わったのだから、俺たち兵士は街の中にいてはならない。そういうルールだからだ。
だが、そんな俺達に声をかける奇特な奴はいた。
メイと、俺が守ってしまった“俺”だ
「ありがとうございました! 兵隊さん!」
「ありがとございました!」
「ヒーローだな、2号」
「なら、一つだけ言わせてくれ」
俺は、そんな浮かれている“俺”に、俺に憧れの目すら見せてくる“俺”に対してありったけの呪いを込めてこんなことを言ってしまった。
「お前は、その娘を隣で守っていろ。その程度が似合いだ」
「……はい!」
だが、その呪いは伝わらず、変わらぬ憧れの元で“俺”は元気な声で言ってくる。
その事に殺意すらも覚えながら、それでも俺はそれ以上言う気はなかった。
それよりも、もう二度と会うことはないメイの事を想っていたかった。機械の体で、機械の心に残った最後の人間らしさに従って。
「帰るぞ」
「……ああ」
そんな言葉と共に、詰め所への帰路に着く。
“俺”に対しての殺意や妬みは消えることはないだろう。しかし、あの一瞬で俺は“俺”を守るために動いてしまった。
それほどまでに、俺は俺が幸せになるよりもメイに幸せであって欲しかったらしい。
「2号、今日はなにか奢ろうか?」
「あいにくと、栄養剤以外食えない体だよ」
「……そうか、こういう時は酒に行くのが決まりだと聞いたのだがな」
「それならさ……戦争が終わって、俺とお前がまだ生きてたら、そん時は奢ってくれや」
そんな会話をしながら、俺とヒューズは帰っていくのだった。
まだ、終わりの見えない戦いの日々の中に。
「はい! もちろんです! 僕はメイちゃんが大好きですから!」
そう答えたのは、いつの事だっただろうか。
幼馴染であり、恋人でもあった彼女、秋葉芽衣の父親に対してそんなことを、かつての俺は言った。
その事に、きっと後悔はなかったのだろう。なにせそのことが理由で親に交際を認めて貰えたのだから。
だが、今の俺は違う。答えを間違えたと断言できる。
メイのことは愛していた。けれどそれが理由で全てを捨てさせられる事になったのだから。
機械の体に戦うための装備たち、そして無機質なオーダーを下す指揮AIが俺の持ってる全てだ。大好きだったメイの隣には、“俺がいる”。
生身で、こんなクソみたいな苦しみを背負ってもいない、オリジナルの俺が。
そう、暗く思っていると自室のドアが開く。やってきたのは、同僚のヒューズ。自ら志願してサイボーグとなり、この戦争に参加を決めた奴だ。
「2号、時間だ」
「わかってる。けど、少しくらいはこの世を呪わせてくれ」
「世界のために戦えるのは栄誉な事だろう?」
「それが、納得しての話だったならな」
「……わからんな」
「俺もお前ら志願組がわかんねぇよ」
そんな会話をしながら、ヒューズと共に警備任務に入る。
ここは、決戦都市新宿。
この日本に残された少ない都市の一つであり、技術の倫理を捨てた地獄の一歩手前。
襲いくるエイリアンから、サイボーグ化や強化手術、そしてクローン技術により強化された人類が防衛する都市だった。
■□■
「相変わらず仕事は見事なものだな」
「じゃなきゃ今頃スクラップだっての」
撃退に成功した事で敵方が撤退を始め、指揮AIからの指示でのエイリアンの遺体の回収を手早く行いながら俺とヒューズは話す。
幸いな事に今回の襲撃は軽いもので、互いに損傷はなかった。
「そういえば、これらの遺体はどう使われれのだろうな」
「肉になるんだとさ。新しいクローンか、街の人間の食肉かはしらねぇけど」
「……彼らは、食えるのか」
「昔食ったが、生でも食えなくはなかった」
「今度試してみよう。感謝するぞ2号」
「どこに感謝してんだよお前は」
「この戦争も長くなった。ベテランの知恵が失われているのが他所の戦線からはよく伝わってくるぞ」
「死ぬ気で試せばどうにもなるさ。お前はまだ生身が残ってるんだからな」
「後悔しているのか? 全身機械化をした事を」
「してるよ、風呂に入れなくなった」
「それは人生の損失だな」
「そこは分かり合えるんだよなぁ、お前と」
そうしていると回収作業は終わり、自分たちも他の部隊の連中も帰還する。
今日も生き延びることができたのか、今日も生き延びてしまったのか、実際のところよくわからない。
だが、俺にはまだ明日という地獄が残っているようだ。
■□■
そうして部隊の詰め所に帰還すると、夜中にアラートが鳴った。
指揮AIによると、街の中へとエイリアンの部隊が侵入していたらしい。
上手いこと陽動に引っかかってしまったとは思うが、どうせ指揮AIに行動は縛られている。指令通りに動くしかないのだ。
「ヒューズ、B装備で行くぞ」
「火力足りないのではないか?」
「その時は内蔵火器を使う。今はスピード優先だ」
「理解した。行くぞ2号」
「ああ、さっさと終わらせよう。早く寝たい」
そうして、俺とヒューズは街の中へと入っていく。
そこは、やはり地獄だった。
建物の多くは新宿臨時政府に戦争のための資材として扱われ、奪い取られた。
残った人間は、ありあわせのテントでどうにか暮らしているらしい。あるいは権力者に傅いてその傘下で暮らしている者もいるらしい。
そして、飢えで死んだ者の死体は運ばれて、新たなクローン兵士の材料にされている。
そんな、地獄だった。
「様子に大きな変わりはないな。目は死んでいるが、多くの者は生きている」
「こんな目で生き残って、なんになるのかね?」
「それはわからない。だが、死ぬよりはマシだろう」
「そんなもんか?」
「さてな、己は彼らではない」
そう無駄話をしていると、自分の全身義体がバレたのか、ヒューズのサイボーグ部分がバレたのか知らないが、ざわざわと人々が騒ぎ始めた。
あんな目でも噂話を止めないとは、人間とは案外しぶといのかもしれない。
「ヒューズ、どうする?」
「正面から行こう。話くらいは聞けるはずだ」
そうしてヒューズを前に、俺が警戒のシフトで前に進むと
そこには、俺がよく覚えている人物の姿があった。
メイの、父親だ。
「だれか、軍に伝えてくれ! 研究所が乗っ取られた! エイリアンに!」
「なるほど、理解した。2号、行くぞ」
「……ああ」
「その機械の体、君たちは! 軍の!」
「ええ、ですが時間もないので手短に、研究所とは秋葉研究所でよろしいですか?」
「ああ! 頼む!」
そんな救われたような顔をする男に心底吐き気がする。
彼は、クローン兵士を最初に実用化したこの街の地獄を作り出したクズの一人だ。可能ならば殺してしまいたい。指揮AIはそれを許してはくれないが。
「行くぞ、2号」
「ああ、さっさと始末を付ける」
「……その、声は?」
「誰でもない、ただの2号だよ」
そうして、研究所へと向かう。
この街の最新技術を作り出している最重要拠点である、その場所に。
■□■
殺す、殺す、殺す。
侵入してきたエイリアン達は一個中隊程度の数らしい。そう指揮AIが述べているのをとりあえず信じてライフルで的確に頭を潰していく。
エイリアンの体は、4つ足に4本の腕となかなかに奇妙な作りであるが、頭は一つ。ヘルメットなどで守ってはいるが、その程度は最新式の銃弾を使えば軽々と貫ける。
「2号、パワードスーツが居ないぞ」
「……破壊工作の跡も見えない。何をしに来たんだコイツら」
疑問を覚えつつも、とりあえず進む。
そうしていると、集団が集まっている部屋が一つあった。どうやら、その奥の部屋に施設の生き残りの人間が立て籠もっているらしい。
無言でヒューズと頷き合い、俺の内蔵火器をスタンバイ状態に移行する。それの完了とともにヒューズがスモークグレネードを投げる。
それが起動して視界が切れたところで、起動した内蔵火器、“レーザーブレード”にて扉の前にいた奴らを軒並み殺していく。
何人かは避けようとしたし、防ごうとした。
しかし、熱の塊である剣から逃れることは出来ず、真っ二つにされて絶命した。
「冷却開始、これで最後か?」
「指揮AI曰く、もう1匹いるそうだ」
「応援を呼ぶ必要はないな」
「念のためレーザーブレードの冷却が終わってから行こう。B装備でパワードスーツ相手は面倒極まりない」
「いや、もう一本はある。行こう」
「……どうした? 2号」
「どうもしてない、さっさと帰りたいだけだ」
そうして、指揮AIの指示のもと動いたところで、屋上にたどり着く。
そこには、エイリアンが侵略するときに使われる転移装置、ポータルが置かれていた。
そして、それを守るのは一体のパワードスーツ。四本ずつの手足それぞれから火器や近接武器を使用してくる強敵だ。
そして、そんなパワードスーツの足元には“俺”が転がっていた。
それを遠くから見るのは、今でも忘れられない恋心の向く先。メイがいた。
人間の可聴音域から外れている声にならない言葉で何かを言いながら、倒れている“俺”に銃口を突きつけるパワードスーツ。
それを見て、ヒューズは躊躇った。民間人を危険には巻き込めないのだとか思っているのだろう。コイツは意外と騎士らしく生きているのだから。
だが、これは好機だ。
俺が、“俺”を殺すことができるまたとない機会。これを逃せばもう二度とそんなものは存在しないだろう。
だから、俺は躊躇わなかった。
左腕のレーザーブレードを起動して接近する。
その起動音で気づいたパワードスーツは俺に向かって銃口を向けてくる。
そうするだろうとは思っていた。レーザーブレードで接近してくる機械人間は、最優先で対処しなければならない相手だからだ。
だが、それだけだった。
目を、合わせてはいない。
合図を、出したわけではない。
だが、俺が好きになった彼女なら、こんなときに動かないわけはないのだから。
メイは、ちょっと人としてどうかと思うくらいには肝が据わっているのだ。
「ぁあああああああ!」
そんな声と共に、メイの足元に転がっていた重ライフルをめちゃくちゃな構えで構えて、放つ。
恐らくあれは脱臼するだろうなと思いながら、その着弾によりぐらついたパワードスーツをぶった切る。
そして、爆発するパワードスーツから、自然に動いた位置にて破片をブレードで防いだ。背中の人物には、新たな怪我はない。
街に侵入してきたエイリアン達は全滅し、ポータルも起動する前に破壊された。
故に、俺とヒューズは去っていく。仕事は終わったのだから、俺たち兵士は街の中にいてはならない。そういうルールだからだ。
だが、そんな俺達に声をかける奇特な奴はいた。
メイと、俺が守ってしまった“俺”だ
「ありがとうございました! 兵隊さん!」
「ありがとございました!」
「ヒーローだな、2号」
「なら、一つだけ言わせてくれ」
俺は、そんな浮かれている“俺”に、俺に憧れの目すら見せてくる“俺”に対してありったけの呪いを込めてこんなことを言ってしまった。
「お前は、その娘を隣で守っていろ。その程度が似合いだ」
「……はい!」
だが、その呪いは伝わらず、変わらぬ憧れの元で“俺”は元気な声で言ってくる。
その事に殺意すらも覚えながら、それでも俺はそれ以上言う気はなかった。
それよりも、もう二度と会うことはないメイの事を想っていたかった。機械の体で、機械の心に残った最後の人間らしさに従って。
「帰るぞ」
「……ああ」
そんな言葉と共に、詰め所への帰路に着く。
“俺”に対しての殺意や妬みは消えることはないだろう。しかし、あの一瞬で俺は“俺”を守るために動いてしまった。
それほどまでに、俺は俺が幸せになるよりもメイに幸せであって欲しかったらしい。
「2号、今日はなにか奢ろうか?」
「あいにくと、栄養剤以外食えない体だよ」
「……そうか、こういう時は酒に行くのが決まりだと聞いたのだがな」
「それならさ……戦争が終わって、俺とお前がまだ生きてたら、そん時は奢ってくれや」
そんな会話をしながら、俺とヒューズは帰っていくのだった。
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