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四重奏連続殺人事件
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盗聴・盗撮について
二日目の講義は「盗聴関連」だ。もちろん、盗聴ではなく、盗聴・盗撮発見の方法を教えるのだ。
「盗聴」「盗撮」なる言葉が、神秘的? に響くのか、受講生が強く興味を覚える科目の一つである。おそらく、人には未知の世界を覗いてみたい願望があるのだろう。
盗聴・盗撮の原理と実態を知れば、それほど不可思議な世界でもないのだが……。探偵だけでなく盗聴・盗撮発見を生業とする業者が、商売のネタにするため、世間に対し神秘的な匂いを振り撒き過ぎていることも事実である。
倉科はこれらの探偵、業者とは反対の立場であり、盗聴・盗撮関連の知識を広く一般に公開して、正しい認識を持ってもらうことが、盗聴・盗撮発見業務のニーズを拡大し、業界の発展には欠かせないと考えている。
いつまでも。「盗聴されていませんか?」「盗撮されたら困るでしょう?」等との脅迫的営業手法に頼っていては市場の拡大につながらないことは明白だと、経験上から断言できる。
盗聴・盗撮に関する正しい知識を持った依頼者からの要請であれば、余計な説明や手間をかけずに迅速な作業ができ、調査料金も安くなり、一挙に需要が伸びるのではないだろうか。倉科は、盗聴・盗撮関連のノウ・ハウ公開を積極的に進めるべきだとの構想を常に抱いている。
例えば、アメリカでは「赤ちゃん監視用マイク」なるものがあり、別の部屋にいる赤ちゃんの様子を確認するもので、部屋数の多い家庭では、わりと一般的に使用されているとのことである。 このように盗聴・盗撮と同じ原理の機械が生活に密着した用途で使用されている場合もある。盗聴・盗撮が犯罪的にのみ使用されているのではないことを覚えておいて欲しい。マスコミ等で盗聴・盗撮がさしたる根拠もなく誇張されていることが、一般人に誤解を与えているのだろう。
倉科は数多くの盗聴・盗撮発見調査に関わったが、まだ、一度も盗聴・盗撮器を発見したことがない。手腕がない、技術が未熟なのでは決してない。殆どの場合、設置されていないのだ。少し考えれば判ることだが、政界、財界、高級官僚等の重要人物ならいざ知らず一介の市民を盗聴・盗撮の対象とする必要性は極めて低いからである。
しかし、盗聴・盗撮されてないのに、盗聴・盗撮器の存在を訴える依頼者が多いのも事実である。何らかの強迫観念に囚われているようである。我々、探偵は、このようなケースを「脳内盗聴」、頭の中に盗聴器が仕掛けられていると、冗談めかして話す。
講義は「盗聴・盗撮の技術」と「盗聴・盗撮の発見方法」の二部から成っている。「盗聴・盗撮の技術」とはどのような機材が、どこに設置されているかについてだ。これらの技術を知らずして、発見は覚束ない。
倉科はホワイトボードに「電話盗聴」と「室内盗聴・盗撮」と書いて説明を始める。
「盗聴には電話と室内」の二種類があります。まず、電話盗聴から話しますが、その場合、まず、電話回線がアナログかデジタルまたは光ファイバーなのかの区別から始めます。
なぜなら、デジタル、光ファイバー回線の場合盗聴は極めて困難、まあ、不可能だと考えていいです。アナログ回線の部分が盗聴の対象となります」
アナログ、デジタル、光ファイバーの意味、否、言葉さえも理解できない受講生がおおいようだ。目を白黒させている。
「難しく考えなくとも大丈夫です。大抵の家庭電話はアナログ回線です。この頃は、デジタル回線もすくなくないようですが、ISDN、ビジネスフォンなんてきいたことがあるでしょう? それがデジタル回線です。光ファイバー回線も電話会社が、盛んに宣伝しているでしょう?」
多くが頷いたが、何人かは依然としてポカーンとしている。この程度の常識的知識がない者に探偵は勤まらない。
倉科は図を描いた。電話局から居宅に至る回線の略図である。
「いいですか? アナログ回線の場合、盗聴器が仕掛けられるのは、この三個所です」
倉科は略図に描かれた「保安器」「コンセント」「電話機」をそれぞれ指さしている。電話線を居宅内部に引き入れる室外の箇所にあるのが保安器で、この部分に盗聴器が仕掛けられる確率が最も高い。電話線と電話機を接続しているのがコンセントです。電話機の内部に仕掛ける盗聴器もあります。しかし、保安器以外に仕掛けるためには室内へ侵入しなければならないので、リスクが高い。
「デジタル、光回線の場合は、アナログ回線に切り替わる部分が狙われます。ISDN、光回線ではT・A即ち、ターミナル・アダプターです。T・Aから電話機までがアナログ回線となるからです。企業で使われるビジネスフォンではPBXと呼ばれるアナログ変換機から電話機までの間です」
また、新しい専門用語が出てきた。倉科の説明について行けず、とっくに理解をあきらめた表情をしている受講生もいる。
倉科は彼らを慰めるように、
「この頃は、携帯電話、スマホが主流なので、イエデンはあまり使用されないので、まあ、知識として知っていればいいでしょう。でも、会社・企業から盗聴発見を依頼された時は、思い出してください。それと、電話機自体に仕掛けられているかも知れません」
次は、室内盗聴・盗撮だ。家庭・会社に備え付けられているあらゆる什器備品の形状に似せたり、または、それ自体の内部に盗聴・盗撮器が組み込まれている可能性がある。
仕掛ける方法として考えられるのは、室内にアクセスできる人物か、贈り物と称して室内に置かせるかである。ただ、いずれにしても見ず知らずの家庭・会社を盗聴・盗撮することはあまり考えられない。公衆トイレ、カラオケボックス、ラブ・ホテルのように不特定多数が利用し、かつ、管理の甘い特殊な場所は別だが……。
倉科は縦5センチ、横2センチ、厚さ1センチ程の黒色をした直方体を取り出して提示した。
「これが、従来使われているボックス型と呼ばれる盗聴器です。今現在、電波を発信しています」
全員の目が黒い小さい箱に注がれている。
「この箱から盗聴電波が発信されているんです。ですから、盗聴発見は、まず、電波が出ているかを確かめることから始めます。電話盗聴も盗撮も同じです」
倉科の講義は、盗聴発見作業へと進んでいき、広帯域受信機を取り出し、
「この受信機はFMを含むラジオ電波から、盗聴に使用されるVHF(超短波)、UHF(極超短波)まで受信できます。盗撮電波については後で触れることにします」
受講生全員に盗聴器と広帯域受信機を回覧して、実際に手で触れさせた。回覧後、倉科は受信機の電源を入れ、盗聴電波の探知を始めた。ディスプレイに表示された数値が猛烈な勢いで動き始める。盗聴波を検知するためのサーチが始まったのだ。399・030MHZ(メガヘルツ)でカウンターが停止した。倉科は受信機を持って受講生の間を回り、ディスプレイに表示された周波数の値を見せている。
「現在、市販されている盗聴器の大部分はUHF帯を使用していますので、300から600MHZ(メガヘルツ)の周波数帯をチェックすればいいのです」
あまりも簡単に盗聴波をキャッチすることができるので、一同は、本当だろうか? との表情を浮かべている。
倉科は盗聴器を指先でコツコツと叩いて、その音が、受信機から聞こえることを示した。注意深く耳をそばだてていた受講生達が、納得して頷いた。
「どうですか? 盗聴波を拾うのは簡単でしょう。この広帯域受信機には、予め盗聴に使用される周波数帯が組み込まれているからです。もちろん、市販されていて、誰でも買うことができます。探偵専用に改造したなんてことはありませんよ」
改めて、盗聴器と受信機を受講生の間に回し、周波数と受信機から聞こえる音を確認させた。受講生達はコツコツと盗聴器を指先で叩き、受信機から聞こえる音を確認している。
二日目の講義は「盗聴関連」だ。もちろん、盗聴ではなく、盗聴・盗撮発見の方法を教えるのだ。
「盗聴」「盗撮」なる言葉が、神秘的? に響くのか、受講生が強く興味を覚える科目の一つである。おそらく、人には未知の世界を覗いてみたい願望があるのだろう。
盗聴・盗撮の原理と実態を知れば、それほど不可思議な世界でもないのだが……。探偵だけでなく盗聴・盗撮発見を生業とする業者が、商売のネタにするため、世間に対し神秘的な匂いを振り撒き過ぎていることも事実である。
倉科はこれらの探偵、業者とは反対の立場であり、盗聴・盗撮関連の知識を広く一般に公開して、正しい認識を持ってもらうことが、盗聴・盗撮発見業務のニーズを拡大し、業界の発展には欠かせないと考えている。
いつまでも。「盗聴されていませんか?」「盗撮されたら困るでしょう?」等との脅迫的営業手法に頼っていては市場の拡大につながらないことは明白だと、経験上から断言できる。
盗聴・盗撮に関する正しい知識を持った依頼者からの要請であれば、余計な説明や手間をかけずに迅速な作業ができ、調査料金も安くなり、一挙に需要が伸びるのではないだろうか。倉科は、盗聴・盗撮関連のノウ・ハウ公開を積極的に進めるべきだとの構想を常に抱いている。
例えば、アメリカでは「赤ちゃん監視用マイク」なるものがあり、別の部屋にいる赤ちゃんの様子を確認するもので、部屋数の多い家庭では、わりと一般的に使用されているとのことである。 このように盗聴・盗撮と同じ原理の機械が生活に密着した用途で使用されている場合もある。盗聴・盗撮が犯罪的にのみ使用されているのではないことを覚えておいて欲しい。マスコミ等で盗聴・盗撮がさしたる根拠もなく誇張されていることが、一般人に誤解を与えているのだろう。
倉科は数多くの盗聴・盗撮発見調査に関わったが、まだ、一度も盗聴・盗撮器を発見したことがない。手腕がない、技術が未熟なのでは決してない。殆どの場合、設置されていないのだ。少し考えれば判ることだが、政界、財界、高級官僚等の重要人物ならいざ知らず一介の市民を盗聴・盗撮の対象とする必要性は極めて低いからである。
しかし、盗聴・盗撮されてないのに、盗聴・盗撮器の存在を訴える依頼者が多いのも事実である。何らかの強迫観念に囚われているようである。我々、探偵は、このようなケースを「脳内盗聴」、頭の中に盗聴器が仕掛けられていると、冗談めかして話す。
講義は「盗聴・盗撮の技術」と「盗聴・盗撮の発見方法」の二部から成っている。「盗聴・盗撮の技術」とはどのような機材が、どこに設置されているかについてだ。これらの技術を知らずして、発見は覚束ない。
倉科はホワイトボードに「電話盗聴」と「室内盗聴・盗撮」と書いて説明を始める。
「盗聴には電話と室内」の二種類があります。まず、電話盗聴から話しますが、その場合、まず、電話回線がアナログかデジタルまたは光ファイバーなのかの区別から始めます。
なぜなら、デジタル、光ファイバー回線の場合盗聴は極めて困難、まあ、不可能だと考えていいです。アナログ回線の部分が盗聴の対象となります」
アナログ、デジタル、光ファイバーの意味、否、言葉さえも理解できない受講生がおおいようだ。目を白黒させている。
「難しく考えなくとも大丈夫です。大抵の家庭電話はアナログ回線です。この頃は、デジタル回線もすくなくないようですが、ISDN、ビジネスフォンなんてきいたことがあるでしょう? それがデジタル回線です。光ファイバー回線も電話会社が、盛んに宣伝しているでしょう?」
多くが頷いたが、何人かは依然としてポカーンとしている。この程度の常識的知識がない者に探偵は勤まらない。
倉科は図を描いた。電話局から居宅に至る回線の略図である。
「いいですか? アナログ回線の場合、盗聴器が仕掛けられるのは、この三個所です」
倉科は略図に描かれた「保安器」「コンセント」「電話機」をそれぞれ指さしている。電話線を居宅内部に引き入れる室外の箇所にあるのが保安器で、この部分に盗聴器が仕掛けられる確率が最も高い。電話線と電話機を接続しているのがコンセントです。電話機の内部に仕掛ける盗聴器もあります。しかし、保安器以外に仕掛けるためには室内へ侵入しなければならないので、リスクが高い。
「デジタル、光回線の場合は、アナログ回線に切り替わる部分が狙われます。ISDN、光回線ではT・A即ち、ターミナル・アダプターです。T・Aから電話機までがアナログ回線となるからです。企業で使われるビジネスフォンではPBXと呼ばれるアナログ変換機から電話機までの間です」
また、新しい専門用語が出てきた。倉科の説明について行けず、とっくに理解をあきらめた表情をしている受講生もいる。
倉科は彼らを慰めるように、
「この頃は、携帯電話、スマホが主流なので、イエデンはあまり使用されないので、まあ、知識として知っていればいいでしょう。でも、会社・企業から盗聴発見を依頼された時は、思い出してください。それと、電話機自体に仕掛けられているかも知れません」
次は、室内盗聴・盗撮だ。家庭・会社に備え付けられているあらゆる什器備品の形状に似せたり、または、それ自体の内部に盗聴・盗撮器が組み込まれている可能性がある。
仕掛ける方法として考えられるのは、室内にアクセスできる人物か、贈り物と称して室内に置かせるかである。ただ、いずれにしても見ず知らずの家庭・会社を盗聴・盗撮することはあまり考えられない。公衆トイレ、カラオケボックス、ラブ・ホテルのように不特定多数が利用し、かつ、管理の甘い特殊な場所は別だが……。
倉科は縦5センチ、横2センチ、厚さ1センチ程の黒色をした直方体を取り出して提示した。
「これが、従来使われているボックス型と呼ばれる盗聴器です。今現在、電波を発信しています」
全員の目が黒い小さい箱に注がれている。
「この箱から盗聴電波が発信されているんです。ですから、盗聴発見は、まず、電波が出ているかを確かめることから始めます。電話盗聴も盗撮も同じです」
倉科の講義は、盗聴発見作業へと進んでいき、広帯域受信機を取り出し、
「この受信機はFMを含むラジオ電波から、盗聴に使用されるVHF(超短波)、UHF(極超短波)まで受信できます。盗撮電波については後で触れることにします」
受講生全員に盗聴器と広帯域受信機を回覧して、実際に手で触れさせた。回覧後、倉科は受信機の電源を入れ、盗聴電波の探知を始めた。ディスプレイに表示された数値が猛烈な勢いで動き始める。盗聴波を検知するためのサーチが始まったのだ。399・030MHZ(メガヘルツ)でカウンターが停止した。倉科は受信機を持って受講生の間を回り、ディスプレイに表示された周波数の値を見せている。
「現在、市販されている盗聴器の大部分はUHF帯を使用していますので、300から600MHZ(メガヘルツ)の周波数帯をチェックすればいいのです」
あまりも簡単に盗聴波をキャッチすることができるので、一同は、本当だろうか? との表情を浮かべている。
倉科は盗聴器を指先でコツコツと叩いて、その音が、受信機から聞こえることを示した。注意深く耳をそばだてていた受講生達が、納得して頷いた。
「どうですか? 盗聴波を拾うのは簡単でしょう。この広帯域受信機には、予め盗聴に使用される周波数帯が組み込まれているからです。もちろん、市販されていて、誰でも買うことができます。探偵専用に改造したなんてことはありませんよ」
改めて、盗聴器と受信機を受講生の間に回し、周波数と受信機から聞こえる音を確認させた。受講生達はコツコツと盗聴器を指先で叩き、受信機から聞こえる音を確認している。
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