四重奏連続殺人事件

エノサンサン

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四重奏連続殺人事件

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盗聴器の探し方

「盗聴波の存在が確認されたら、次はどこに仕掛けられているかを調べます」
受講生全員が、身を乗り出すようにして倉科の言葉を聞いている。
「音源探査とハウリングの二つの方法があります」
倉科は受信機を持ち、盗聴器は教卓に置き、教室の一番後ろまで移動し、そこの机をコツコツと爪先で弾いた。受信機から小さくではあるが音が聞こえる。倉科は、徐々に前方の教卓に向かいながら、次々と机を弾いた。盗聴器の置いてある教卓に近づくに従って弾いた音が大きく聞こえるようになる。
「こうやって、聞こえてくる音の大きさで探すのが音源探査法です」
続いて、倉科は受信機のボリュームを大きくしながら盗聴器に近づけた。ウォーン、ピューッと不快な音が鳴り響く。
「これが、ハウリングです。カラオケで経験したことがあるでしょう? 大体の位置が確認できても、盗聴器が巧妙に隠されている場合に威力を発揮します」
皆が食い入るように見つめている。倉科は全員に実験させることにした。これが一番理解を早める方法だ。難しい専門用語も要らないし、目と耳を使えば足りるので、少々とろい人間にでも習得が可能である。受講生達が、嬉々として実験に励んでいる。教室が一気に活気づいた。
倉科は実験風景を眺めながら、一連の案件を思い返していた。榊江利子、鈴木正恵、三村里香の三件は必ず関連性がある。その確信は揺るがなかったが、未だに三村里香に関する犯人の動機について説明をつけることができない。前の二件についてはおぼろげながら、動機が推察されるが……。
(同一犯ではないのかも知れない? いや奴が関与していることは確実だ)
全員の実験が終わったのだろうか、喧騒が静けさに変わった。
倉科はホワイトボードに大きく盗撮と書いた。
「次は、盗撮発見の方法について説明します。原理は盗聴と同じですが、音が出ないので、盗聴のような方法は使えません。もっともこの頃は、盗聴器と盗撮器が一つになった複合器が主流なので、盗聴発見と同じ手法が使えます。しかし、盗撮だけの場合は、盗撮波の検知から始めます」
倉科は広帯域受信機よりやや大きめの機材を取り出した。盗撮カメラ発見器だ。盗撮画像を映し出す液晶モニターが付いている。
「盗撮されていれは、このモニターに画像が表示されます」
倉科がスイッチを入れて、受講生達に示すと、教室全体の画像が映し出された。
「エエッー?!ウァー!」
声にならないどよめきが響く。相当に驚いたようだ。
「ハッ、ハッ、ハーッ」倉科が大声で、面白そうに笑った。
「盗撮カメラは、ここですよ」
スーツの胸ポケットから、やや太めのボールペンを取り出して左右に翳した。動きに従って液晶モニターの画像が変わる。
「盗撮波は、1200MHZ(メガヘルツ)から2500MHZ(メガヘルツ)が主なので、盗聴発見に使う広帯域受信機では対応できないので、この盗撮カメラ発見器を使用します。もちろん、盗聴器と一体型なら音声も聞けます」
受講生たちは呆然としている。盗聴盗撮がこんなにも身近なものだと実感したのだろう。
「但し、この盗撮カメラ発見器は高価なので、専門業者に近い人しか所有していないのじゃないかと思います」
「安いのはないのですか?」
教卓のすぐ前に陣取って座っている中年男性が、不平そうに質問した。
「このタイプではなく電波だけで盗撮波を捜す安い機材もありますが、使用方法が難しく、性能もあまりよくありません」
皆が、このタイプの安価な機材を欲しがっている様子だ。
「中古ならあるかもしれませんね。ネットででも探してみてください。盗聴盗撮機材関係で中古市場が形成されているかどうか分かりませんがね」
倉科は一気にここまで話すと、少し間合いを置いて、
「費用が掛からず、且つ、簡単に盗撮カメラを見つける方法があります。皆さんが持っているスマホを使うのです。搭載されているカメラを起動して、仕掛けられている可能性がある場所、例えば、壁、天井等にカメラを向けるのです。設置されていたら光が反射し
ます。どうです? かんたんでしょう。但し、スマホのカメラが赤外線対応、即ち、夜間対応機能が付いていることが条件です。あっ、それから室内の照明を落とすことも必要です」
 倉科が、盗撮器になっているボールペンペンを頭上高く持ち上げると、皆がスマホを取り出して、カメラ設定を始めた。
 「光ってみえる! 本当だ」
 「あっ! 私も見えた」
 最後に、倉科は盗聴器・盗撮器を発見した場合の注意を与えた。
 「発見しても、むやみに触れないこと。特に電話回線に仕掛けられているときは、必ず電話会社に連絡して取り外してもらうこと。電気通信事業法と言う法律があって、一般人が電話回線に手を掛けると処罰される恐れがあります。二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金とされていますので、十分、気を付けてください」
 更に一呼吸おいて、続けた。
「室内で盗聴器・盗撮器を発見したときは、絶対に素手で触れないこと。あなたの指紋が付着して、後で困った状況になるかも知れないですからねぇ……。また、それらの機器の処分については、依頼者にお伺いを立てて、どうするか聞いてください。決して、自分勝手に判断しないこと」
講義は終わった。受講生達は満足そうな表情で教室から出て行く。倉科は廊下に出ってタバコに火を点けた。


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