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本編
7、ご主人様を探せ
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職員室から教室までの道のりで確認したように、まずは涼風先生が先に入り、その後呼ばれたら教室に入って自己紹介の流れだ。
少し緊張し、床を見つめ教室のドアの前で待つ。
その時だった。
1人の生徒が足早に前を通ったかと思えば、ひらりと一枚の紙が落ちたのが見えた。
自身の足元に落ちた紙を拾い、顔を上げると、落とし物をした事に気づいた生徒が振り向きこちらに体を向けた。
「拾ってくれたんだ。ありがとう。」
声をかけられ、紙を受け取ろうと伸ばされた手に、…その人に。俺はつい動作を止めてしまった。
「…い、いえ。」
随分と素っ気ない言葉になってしまった。
目を伏せながら紙を渡す。
この声、姿。ご主人様だ。
会おうとはしていたが、まずは遠目で観察しようと思っていたため偶然の出会いに動揺してしまう。
自分は姿を変えている。気付かれていないはずだ。
大丈夫、と自分に言い聞かせる。
バレれば即注意され家に戻されるだろう。
勝手に学園まで追いかけて来てしまったのだ。
疲れた様子のご主人様をどうにかしないとと決心した気持ちが、実際に姿を見た途端約束をたがえた罪悪感に揺れはじめた。
動揺すればするほど相手には怪しく見えるだろう。
手をぎゅっと結び、早く去ってくれと願う。
しかし、創哉様は先ほど急いでおられた様子なのに、立ち去ろうとはせず、こちらを見たまま、口を開き何か俺に話そうとした時だった。
教室の中から、俺を呼ぶ先生の声が聞こえた。
ハッとして、創哉様へお辞儀をしてから逃げるように教室へ入った。
「…。」
その後ろで、ご主人様が顔をしかめていた事に俺は気づかなかった。
……
………
…………
「…今日からよろしくお願いします。」
自己紹介を終え、好奇の目で見られながら、案内された席へと着く。
未だ動揺をし、握りしめていた手を解くと爪痕がついていた。
こんな事で決意が揺れ、果たしてサポートができるのかとため息を吐く。
「なぁ、大丈夫か?緊張が解けた感じ?」
俺の様子を隣の席から覗かれていたようだ。
一言で表現すると爽やかという言葉が
似合うような青年が、こちらを気遣うような視線を向けている。
「うん、流石に緊張しちゃってて。」
「そうなるのも分かるわ。…俺、椎葉。椎葉勇祐(しいば ゆうすけ)。これからよろしくな。」
歯を見せ笑いかけられる。
「こちらこそよろしく。」
「おぅ。」
にこと微笑み返した。
左斜め後ろからガタッと音が聞こえ、視線を向けると同室者の八重坂の姿があった。
俺と椎葉を見て、何やら口を手で押さえている。
まだ日は浅いが見知った顔に、小さく手を振った。
「八重坂と知り合い?」
「うん、同室者なんだ。」
ボリュームを落とし、椎葉からの問いかけに答える。
「あいつ、面白いよな。なんか1人で楽しそうで。」
「椎葉くん、八重坂くんのお友達?」
「んー、俺はそう思ってるけど、1軍とは関わらないって避けられてる。」
「何それ。」
「さぁ、よく分からないけど、気にせず声かけしてる。」
「それもそれですごいね。」
ふふ、と思わず笑う。
前を向くと、涼風先生から視線を向けられている事に気付き姿勢を正した。
「さて、授業をはじめます。教科書を用意してください。」
涼風先生の声かけと共に、チャイムが鳴って、授業が始まり、俺の学生生活が本格的にスタートした。
少し緊張し、床を見つめ教室のドアの前で待つ。
その時だった。
1人の生徒が足早に前を通ったかと思えば、ひらりと一枚の紙が落ちたのが見えた。
自身の足元に落ちた紙を拾い、顔を上げると、落とし物をした事に気づいた生徒が振り向きこちらに体を向けた。
「拾ってくれたんだ。ありがとう。」
声をかけられ、紙を受け取ろうと伸ばされた手に、…その人に。俺はつい動作を止めてしまった。
「…い、いえ。」
随分と素っ気ない言葉になってしまった。
目を伏せながら紙を渡す。
この声、姿。ご主人様だ。
会おうとはしていたが、まずは遠目で観察しようと思っていたため偶然の出会いに動揺してしまう。
自分は姿を変えている。気付かれていないはずだ。
大丈夫、と自分に言い聞かせる。
バレれば即注意され家に戻されるだろう。
勝手に学園まで追いかけて来てしまったのだ。
疲れた様子のご主人様をどうにかしないとと決心した気持ちが、実際に姿を見た途端約束をたがえた罪悪感に揺れはじめた。
動揺すればするほど相手には怪しく見えるだろう。
手をぎゅっと結び、早く去ってくれと願う。
しかし、創哉様は先ほど急いでおられた様子なのに、立ち去ろうとはせず、こちらを見たまま、口を開き何か俺に話そうとした時だった。
教室の中から、俺を呼ぶ先生の声が聞こえた。
ハッとして、創哉様へお辞儀をしてから逃げるように教室へ入った。
「…。」
その後ろで、ご主人様が顔をしかめていた事に俺は気づかなかった。
……
………
…………
「…今日からよろしくお願いします。」
自己紹介を終え、好奇の目で見られながら、案内された席へと着く。
未だ動揺をし、握りしめていた手を解くと爪痕がついていた。
こんな事で決意が揺れ、果たしてサポートができるのかとため息を吐く。
「なぁ、大丈夫か?緊張が解けた感じ?」
俺の様子を隣の席から覗かれていたようだ。
一言で表現すると爽やかという言葉が
似合うような青年が、こちらを気遣うような視線を向けている。
「うん、流石に緊張しちゃってて。」
「そうなるのも分かるわ。…俺、椎葉。椎葉勇祐(しいば ゆうすけ)。これからよろしくな。」
歯を見せ笑いかけられる。
「こちらこそよろしく。」
「おぅ。」
にこと微笑み返した。
左斜め後ろからガタッと音が聞こえ、視線を向けると同室者の八重坂の姿があった。
俺と椎葉を見て、何やら口を手で押さえている。
まだ日は浅いが見知った顔に、小さく手を振った。
「八重坂と知り合い?」
「うん、同室者なんだ。」
ボリュームを落とし、椎葉からの問いかけに答える。
「あいつ、面白いよな。なんか1人で楽しそうで。」
「椎葉くん、八重坂くんのお友達?」
「んー、俺はそう思ってるけど、1軍とは関わらないって避けられてる。」
「何それ。」
「さぁ、よく分からないけど、気にせず声かけしてる。」
「それもそれですごいね。」
ふふ、と思わず笑う。
前を向くと、涼風先生から視線を向けられている事に気付き姿勢を正した。
「さて、授業をはじめます。教科書を用意してください。」
涼風先生の声かけと共に、チャイムが鳴って、授業が始まり、俺の学生生活が本格的にスタートした。
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