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第二章

61.

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✴︎
「おらっ!」
 魔王が放った一撃を俺は、かわした。
 しかし、俺は、その矛先が誰に向いているのか考えてなかった。
 その矛先は、後ろのミルだった。
 その一撃が不意となり、ミルは、かわせなかった。
「ミルっ!」
 俺は、剣を離し、ミルに駆け寄る。
 ミルの腹がざっくりと切れていた。
 その腹からは、血が溢れ出る。
「ミルっ!ミルっ!」
 何度も俺、名を叫ぶ。
 すると、目を少し開けて、
「ごめ、ん……わたし、死ん、じゃう、の、かな?」
「……」
「でも、わ、たし、か、ならず、戻っ、て、くる、か、ら……」
 そう言って、ミルは、目を閉じた。
「ミル……」
「グリッド様……ミルは、必ず戻って……」
「枷を放て」
 ヘスティアは、耳を押さえる。
「やめて……」
「枷を放て」
「うがぁっ!」
 ヘスティアは、叫びと共に禍々しい魔力を帯びる。
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