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第三章

84.

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✴︎
 勇者は、後ずさろうとして手を後ろにすると何かに手が当たった。
 それを見て勇者は、焦った。
 それは、壁だった。
 勇者は、追い込まれたのだ。
「さて、どうすんの?私さ、別にあんたが剣抜いたら、見逃してあげるんだけどさ、抜くの?抜かないの?」
 ヘスティアは、勇者に向かってそう言った。
 しかし、勇者は、動かない。
「てかさ、あんたって確かもう勇者じゃないよね?じゃあさ、勝ち目なくない?どうやって勝たせるつもりなんだろうな~」
 ヘスティアは、一人でぶつぶつと独り言を言っている。
 勇者は、この隙を見て、
「ガジェットッ!」
 そう叫び、前方にぶっ飛ぶ。
 前方には、よそ見したヘスティアがいる。
 勇者は、ここを切り抜けられると踏んだ。
 しかし、現実は、そう甘くない。
「いやぁ、案はいいけど、行動力がその案を全て消してるよね。いや、逆に悪くなってるんじゃない?」
 そう言って、ヘスティアは、勇者が真下に来た時に鎌を振り下ろす。
 しかし、当たったのは、
「床?」
 ヘスティアは、目を見開いた。
「ガジェット二段構えは、流石にきついね」
 勇者は、そう言って魔王の間の扉のとこに立っていた。
「勇者……」
「僕は、今、勇者じゃない。僕は、今、王国の道具じゃない。だから、僕の名前は、カロン・アルバート。カロンでいいや……」
「喋ってる暇あんなら、剣を抜きな」
 ヘスティアは、そう言って、鎌を再び構え、振りかざす。
 しかし、その鎌は、勇者に当たらず壁を打ち抜いた。
「人の話最後まで聞きなよ。でも、僕は、勇者の力がまだある。ならさ、これで、魔王を殺すよ」
 そう言って、勇者否、カロンは、魔王の間をを飛び出した。
 その後をヘスティアが追う。
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