山羊頭の魔神

焼魚圭

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悪魔憑きの掃除屋さん

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 それは安心感を与えてくれる暖かな想いが閉じ込められた白い壁に囲まれた真昼の家の中での話。
「お疲れさん。右腕から闇のチカラが撃てるようになったのね。これで魔法使いの仲間入りね。銃は新しいのあげるからもし良かったらそれ使って」
 とても見てなどいられない不可視の右腕にはそれを覆い隠す包帯が巻かれていた。それを見た少女、怪しい雰囲気満載のいかにもな魔女のローブを纏った〈東の魔女〉東院 奈々美が包帯に巻かれた満明の腕を触りながら言う。
「瘴気は完全に隠れてるね……満明さん、宜しく」
「おっ、よろしくな。三原色魔法の使い手さん」
 その歓迎の言葉を直接放り込まれた奈々美は顔を赤くして頬を膨らませる。
「四大元素の内の火属性が使えない落ちこぼれだから三原色魔法とか言われてるの知ってるよね?やめてよね?お願いね?悪魔憑きの掃除屋さん」
「おい!人に嫌な事言うなとか言って人の嫌な事言ってんじゃねえ」
 落ちこぼれ人生、底辺と嘲笑われるような清掃職の男の人生の終着点。初めての魔法も失敗したがために悪魔の力を持ってしまい魔法人生を終わらせられなかった男。そんな意味を込めて満明の事をそう呼ぶ人が真昼のせいで増えていた。
「ほら、早くしないと3人でご飯行く時間なくなるじゃない!」
 真昼の言う通り、これから3人でご飯を食べに行く予定である。真昼は続けて言った。
「サインは左手で書いて。利き手じゃなくて書きづらいだろうけど右よりは書けるでしょ。さっきのサイン、凄く酷かった……〈分散〉の力の使用に失敗したらこうなるなんて……ゴメンなさいね」
 私の責任だ、と悲しげな表情で言った真昼を見て満明は言葉を返す。
「気にするな。失敗したのは俺だ。真昼は堂々としているのがお似合いだぞ」
「そうね。分かったわ」
 満明は利き手では無い左手でペンを扱う苦労による疲れを感じながらもどうにか左手でサインを記入した。そこに並ぶ2枚の紙、真昼の仲間として働く事を誓う契約書。その内の1枚は破棄された。
 いずれ燃やされ消えるであろうその紙には満明が右手で書いた名が記されていた。人である限り誰であれども瞳に写す事すら心から拒むあの嫌でも理解出来てしまう穢れた字で書かれた満明本人の名が。
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