19 / 132
〈お菓子の魔女〉と呪いの少女
お家おぅいえー!
しおりを挟む
明るい空は暗くなっていき、1日の終わりは漆黒の闇に包まれて。
そんな言葉を何となく思いながら一真は那雪を連れて刹菜と共にアパートの一室へと入っていく。そこで待っていた2人の男、50は過ぎているであろう人生に疲れたかのように痩せこけた男と優しそうな顔をした一真と同じくらいの歳の男。那雪にとっては完全な初対面であった。
「おい、満明。そっちの若いの誰だよ」
そう訊ねた辺り、一真も若い男の方は知らないということ。若い男は深々とお辞儀をして自己紹介を始めた。
「俺は若葉 勇人。21歳の無気力大学生」
「無気力大学生? もしかしたら私と仲良くなれるかも知れないな。大学若葉マークさん」
「普通に大学入ったからもう4回生だけど?」
「はっ、自称無気力が笑わせてくれる。私こそが真の無気力さ、きっと留年」
「おっと刹菜、悪いがこの満明さまと真昼さんの財力じゃあ合わせても大した額にならないから本当の親を見つけでもしない限り留年したら終わりだぞ」
「えぇ。じゃあ最初から行かない」
そんな言葉の一つで刹菜の受験がなくなり就職へと舵を切るのであった。
「で、永遠の人生若葉マークさんはなんでこんな実績調整故の底辺魔法使いの集いなんかを尋ねてるのだか」
勇人は那雪を指して言った。
「そこのは呪いの一族唐津家だよな? だったら気を付けて。唐津家のある人物がある儀式をしたらしいからそれを倒しに〈南の呪術師〉がこの極東の地まで来てるらしいから」
「えらく不明瞭な情報だな。もしかして情報収集も若葉マークかな?」
那雪はこの状況に呆れていた。そして思わず言葉をこぼす。
「また呪われるかも知れないの、ホントやめてよもう」
そんな言葉聞きもしないで勇人は立ち上がって立ち去る。その去り際に一つだけ言葉を置いて行ったのであった。
「情報は渡したからお金ちょうだい、育てている子を大学にやるのも一苦労な満明さん」
勇人がいなくなったのを確認して刹菜は満明に思い切り飛びつき抱きつくのであった。
「満明大好きあぁ、会いたかったよ、何日ぶりかな私寂しくて死んじゃうところだったよ」
「刹菜、俺も愛してるぞ、会えない間何度枕を涙で濡らした事か」
「えっ、何これ一真」
「年の差カップル」
「そのくらいは分かってるわ」
那雪は物珍しいものでも見ているのかこの2人を奇妙なものを見つめるような目で眺めていた。
✡
勇人はそれなりの大きさの一軒家の食事台で待っていた。
「勇人……出来た……よ。好き……だよね? ……コーヒー」
「ありがとう鈴香、愛が籠ったいい色だね」
のんびり話す幼い少女、鈴香は笑顔で勇人にコーヒーを出した。勇人は漂って来るはずの香りを楽しむ仕草をしてコーヒーを口に含む。
「うん、中々の苦味だね」
その言葉を聞いた鈴香は困惑した表情で勇人に指摘した。
「今回の豆は……キリマンジャロ……なんだけど。……酸味が……強いの」
勇人は目を丸くして、しかしすぐにいつもの表情に戻す。
「そっか、前から長引いてる風邪が治らないみたいだ」
そんな嘘も見抜けない鈴香は勇人の頭を撫でて祈るのであった。
「早く……治って。お願い……だから」
「ありがと。ところで鈴香は中学楽しく過ごせてるかな」
「ううん……いつも一人だよ。でも……いいの。……お兄ちゃんが……いるから」
勇人は頭を掻きながら照れた顔を見せていた。
「お兄ちゃんって呼ぶの恥ずかしいからやめて欲しいな。呼び捨てでいいよ」
「ごめんね……勇人」
勇人は中学一年生の妹が淹れてくれたコーヒーを一気に飲み干して立ち上がる。
「ごめんね鈴香。今から出かけるから」
「うん……分かった。……今度は……美味しいコーヒー……淹れるから」
家を後にして狙いの魔女の元へと向かって夜の闇の中を歩いて行く途中で立ち止まる。その頬を涙が伝った。勇人の悲しみの想いはあまりにも大きかった。いつもコーヒーを淹れてくれる鈴香、かつてはそれを愉しみ堪能していた勇人。しかしもう本当の意味でそんな日が訪れる事などないのだから。勇人は戦いの為の力を使い始めてから幾年重ねたのだろうか、能力の副作用なのか勇人の味覚と嗅覚は薄れて行って今はもうどちらも失われてしまっているのだから。
そんな言葉を何となく思いながら一真は那雪を連れて刹菜と共にアパートの一室へと入っていく。そこで待っていた2人の男、50は過ぎているであろう人生に疲れたかのように痩せこけた男と優しそうな顔をした一真と同じくらいの歳の男。那雪にとっては完全な初対面であった。
「おい、満明。そっちの若いの誰だよ」
そう訊ねた辺り、一真も若い男の方は知らないということ。若い男は深々とお辞儀をして自己紹介を始めた。
「俺は若葉 勇人。21歳の無気力大学生」
「無気力大学生? もしかしたら私と仲良くなれるかも知れないな。大学若葉マークさん」
「普通に大学入ったからもう4回生だけど?」
「はっ、自称無気力が笑わせてくれる。私こそが真の無気力さ、きっと留年」
「おっと刹菜、悪いがこの満明さまと真昼さんの財力じゃあ合わせても大した額にならないから本当の親を見つけでもしない限り留年したら終わりだぞ」
「えぇ。じゃあ最初から行かない」
そんな言葉の一つで刹菜の受験がなくなり就職へと舵を切るのであった。
「で、永遠の人生若葉マークさんはなんでこんな実績調整故の底辺魔法使いの集いなんかを尋ねてるのだか」
勇人は那雪を指して言った。
「そこのは呪いの一族唐津家だよな? だったら気を付けて。唐津家のある人物がある儀式をしたらしいからそれを倒しに〈南の呪術師〉がこの極東の地まで来てるらしいから」
「えらく不明瞭な情報だな。もしかして情報収集も若葉マークかな?」
那雪はこの状況に呆れていた。そして思わず言葉をこぼす。
「また呪われるかも知れないの、ホントやめてよもう」
そんな言葉聞きもしないで勇人は立ち上がって立ち去る。その去り際に一つだけ言葉を置いて行ったのであった。
「情報は渡したからお金ちょうだい、育てている子を大学にやるのも一苦労な満明さん」
勇人がいなくなったのを確認して刹菜は満明に思い切り飛びつき抱きつくのであった。
「満明大好きあぁ、会いたかったよ、何日ぶりかな私寂しくて死んじゃうところだったよ」
「刹菜、俺も愛してるぞ、会えない間何度枕を涙で濡らした事か」
「えっ、何これ一真」
「年の差カップル」
「そのくらいは分かってるわ」
那雪は物珍しいものでも見ているのかこの2人を奇妙なものを見つめるような目で眺めていた。
✡
勇人はそれなりの大きさの一軒家の食事台で待っていた。
「勇人……出来た……よ。好き……だよね? ……コーヒー」
「ありがとう鈴香、愛が籠ったいい色だね」
のんびり話す幼い少女、鈴香は笑顔で勇人にコーヒーを出した。勇人は漂って来るはずの香りを楽しむ仕草をしてコーヒーを口に含む。
「うん、中々の苦味だね」
その言葉を聞いた鈴香は困惑した表情で勇人に指摘した。
「今回の豆は……キリマンジャロ……なんだけど。……酸味が……強いの」
勇人は目を丸くして、しかしすぐにいつもの表情に戻す。
「そっか、前から長引いてる風邪が治らないみたいだ」
そんな嘘も見抜けない鈴香は勇人の頭を撫でて祈るのであった。
「早く……治って。お願い……だから」
「ありがと。ところで鈴香は中学楽しく過ごせてるかな」
「ううん……いつも一人だよ。でも……いいの。……お兄ちゃんが……いるから」
勇人は頭を掻きながら照れた顔を見せていた。
「お兄ちゃんって呼ぶの恥ずかしいからやめて欲しいな。呼び捨てでいいよ」
「ごめんね……勇人」
勇人は中学一年生の妹が淹れてくれたコーヒーを一気に飲み干して立ち上がる。
「ごめんね鈴香。今から出かけるから」
「うん……分かった。……今度は……美味しいコーヒー……淹れるから」
家を後にして狙いの魔女の元へと向かって夜の闇の中を歩いて行く途中で立ち止まる。その頬を涙が伝った。勇人の悲しみの想いはあまりにも大きかった。いつもコーヒーを淹れてくれる鈴香、かつてはそれを愉しみ堪能していた勇人。しかしもう本当の意味でそんな日が訪れる事などないのだから。勇人は戦いの為の力を使い始めてから幾年重ねたのだろうか、能力の副作用なのか勇人の味覚と嗅覚は薄れて行って今はもうどちらも失われてしまっているのだから。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる