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〈お菓子の魔女〉と呪いの少女
〈お菓子の魔女〉
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月明かりに照らされる市街地の中に広がる人通りもなければ車も通らない程に寂れた田畑広がるアスファルトの道路にて、優しそうな顔をした青年、若葉 勇人は目の前に立つ美少女と向かい合っていた。栗色の髪はまるでモンブランのような色、着ているドレスは白と黒の二色で彩られ、被っている帽子に付いている白いリボンは飴玉の包み紙のようにも見えた。
「キミがここで倒すべき魔女かな」
しかし、その言葉が目の前の虚ろな目の魔女に届くはずもありはしない。勇人は手を上げて1度後ろへと引き下げる。引き下げる前に手のあった虚ろな空間には周囲より紫色の鋭い輝きを持つ稲妻が集まっていた。
「魔女に鈴香は利用させない渡さない。喰らえ〈分散〉!」
引いた手を突き出すと共に紫色の稲妻は雷特有の曲線を描きながら空間を割いてひび割れのように広がりながら魔女の元へと襲いかかる。目の前の魔女は美しい顔が崩れる程に口が裂けて見えるくらいに思い切り横に広げて醜い笑みを見せて一度、可愛らしい靴を履いた足を上げてそのつま先で地を踏み鳴らす。足と地が触れたそこから黒い星が散って稲妻を吸い取り金平糖へと姿を変える。宙を舞って魔女の手の平へと飛んで来た金平糖を口に入れようとしたその時、金平糖は弾けて消えた。
「言った通りだよ、それは〈分散〉の術式だって」
勇人は再び手を後ろへと引く。
「周囲の魔力を手で引き込んだその空間に負の魔力がプラズマの姿で集まる。そして俺が引き込んだ魔力を使ってプラズマを勢い良く放出する」
周囲の稲妻はプラズマ。勇人は勢い良く手を突き出す。
「周囲の魔力を扱う……キミたち魔女と同じ性質だよ」
押し出されたプラズマは空間に紫色の禍々しいひび割れを作りながら素早く進んで魔女へと喰らい付く。魔女はその痛みに胸を押さえて転がるように地に身体を落とす。
「次でトドメを刺す」
みたび引かれたその手、稲妻は手を突き出す事で放たれて魔女へと向かって行く。それを見た魔女は転がるように避けて逃げ出し、闇に消え去ったのであった。
勇人は己の右手の感覚が薄れている事を確かめた。
「いつまで生きてられるだろうね、せめて鈴香が魔女に利用されないように全員狩りたい」
桁並み外れた魔力の持ち主である鈴香。周囲の魔力を扱う事で魔法を撃つ魔女からすれば鈴香がそばにいるだけでいつでも強力な魔法が使える。中には直接交渉しに来た魔女もいたが当然全て断っていたのであった。
「鈴香、キミがウエディングドレスを着た姿だけでも見たいな」
勇人はそれだけの言葉を残して振り返って立ち去るのであった。
✡
夜の闇の中、畑を抜けて胸を押さえ、今にも倒れそうな程にもつれる足で歩道を歩いている魔女。このままでは常人ならざる者であれども生命は長くはもたないであろう。息を吸うのも苦しく、歩くのがやっと。正気でなくとも生命の危機は理解出来ていた。死を覚悟した魔女だったが、歩いている先にあるものを見付けて口を裂け目のように大きく横に広げて美貌を崩す程の醜い笑みを浮かべる。目の前に生命をこの世に繋ぎ止めるためのお菓子があったのだから。肉という名の果実と血という名の紅茶を持った人という名のお菓子が一つ、脅威がすぐそこに来ている事も知らずに夜道を一人、鼻歌混じりにのうのうと歩いているのだから。
「キミがここで倒すべき魔女かな」
しかし、その言葉が目の前の虚ろな目の魔女に届くはずもありはしない。勇人は手を上げて1度後ろへと引き下げる。引き下げる前に手のあった虚ろな空間には周囲より紫色の鋭い輝きを持つ稲妻が集まっていた。
「魔女に鈴香は利用させない渡さない。喰らえ〈分散〉!」
引いた手を突き出すと共に紫色の稲妻は雷特有の曲線を描きながら空間を割いてひび割れのように広がりながら魔女の元へと襲いかかる。目の前の魔女は美しい顔が崩れる程に口が裂けて見えるくらいに思い切り横に広げて醜い笑みを見せて一度、可愛らしい靴を履いた足を上げてそのつま先で地を踏み鳴らす。足と地が触れたそこから黒い星が散って稲妻を吸い取り金平糖へと姿を変える。宙を舞って魔女の手の平へと飛んで来た金平糖を口に入れようとしたその時、金平糖は弾けて消えた。
「言った通りだよ、それは〈分散〉の術式だって」
勇人は再び手を後ろへと引く。
「周囲の魔力を手で引き込んだその空間に負の魔力がプラズマの姿で集まる。そして俺が引き込んだ魔力を使ってプラズマを勢い良く放出する」
周囲の稲妻はプラズマ。勇人は勢い良く手を突き出す。
「周囲の魔力を扱う……キミたち魔女と同じ性質だよ」
押し出されたプラズマは空間に紫色の禍々しいひび割れを作りながら素早く進んで魔女へと喰らい付く。魔女はその痛みに胸を押さえて転がるように地に身体を落とす。
「次でトドメを刺す」
みたび引かれたその手、稲妻は手を突き出す事で放たれて魔女へと向かって行く。それを見た魔女は転がるように避けて逃げ出し、闇に消え去ったのであった。
勇人は己の右手の感覚が薄れている事を確かめた。
「いつまで生きてられるだろうね、せめて鈴香が魔女に利用されないように全員狩りたい」
桁並み外れた魔力の持ち主である鈴香。周囲の魔力を扱う事で魔法を撃つ魔女からすれば鈴香がそばにいるだけでいつでも強力な魔法が使える。中には直接交渉しに来た魔女もいたが当然全て断っていたのであった。
「鈴香、キミがウエディングドレスを着た姿だけでも見たいな」
勇人はそれだけの言葉を残して振り返って立ち去るのであった。
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夜の闇の中、畑を抜けて胸を押さえ、今にも倒れそうな程にもつれる足で歩道を歩いている魔女。このままでは常人ならざる者であれども生命は長くはもたないであろう。息を吸うのも苦しく、歩くのがやっと。正気でなくとも生命の危機は理解出来ていた。死を覚悟した魔女だったが、歩いている先にあるものを見付けて口を裂け目のように大きく横に広げて美貌を崩す程の醜い笑みを浮かべる。目の前に生命をこの世に繋ぎ止めるためのお菓子があったのだから。肉という名の果実と血という名の紅茶を持った人という名のお菓子が一つ、脅威がすぐそこに来ている事も知らずに夜道を一人、鼻歌混じりにのうのうと歩いているのだから。
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