呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

文字の大きさ
20 / 132
〈お菓子の魔女〉と呪いの少女

〈お菓子の魔女〉

しおりを挟む
 月明かりに照らされる市街地の中に広がる人通りもなければ車も通らない程に寂れた田畑広がるアスファルトの道路にて、優しそうな顔をした青年、若葉 勇人は目の前に立つ美少女と向かい合っていた。栗色の髪はまるでモンブランのような色、着ているドレスは白と黒の二色で彩られ、被っている帽子に付いている白いリボンは飴玉の包み紙のようにも見えた。
「キミがここで倒すべき魔女かな」
 しかし、その言葉が目の前の虚ろな目の魔女に届くはずもありはしない。勇人は手を上げて1度後ろへと引き下げる。引き下げる前に手のあった虚ろな空間には周囲より紫色の鋭い輝きを持つ稲妻が集まっていた。
「魔女に鈴香は利用させない渡さない。喰らえ〈分散〉!」
 引いた手を突き出すと共に紫色の稲妻は雷特有の曲線を描きながら空間を割いてひび割れのように広がりながら魔女の元へと襲いかかる。目の前の魔女は美しい顔が崩れる程に口が裂けて見えるくらいに思い切り横に広げて醜い笑みを見せて一度、可愛らしい靴を履いた足を上げてそのつま先で地を踏み鳴らす。足と地が触れたそこから黒い星が散って稲妻を吸い取り金平糖へと姿を変える。宙を舞って魔女の手の平へと飛んで来た金平糖を口に入れようとしたその時、金平糖は弾けて消えた。
「言った通りだよ、それは〈分散〉の術式だって」
 勇人は再び手を後ろへと引く。
「周囲の魔力を手で引き込んだその空間に負の魔力がプラズマの姿で集まる。そして俺が引き込んだ魔力を使ってプラズマを勢い良く放出する」
 周囲の稲妻はプラズマ。勇人は勢い良く手を突き出す。
「周囲の魔力を扱う……キミたち魔女と同じ性質だよ」
 押し出されたプラズマは空間に紫色の禍々しいひび割れを作りながら素早く進んで魔女へと喰らい付く。魔女はその痛みに胸を押さえて転がるように地に身体を落とす。
「次でトドメを刺す」
 みたび引かれたその手、稲妻は手を突き出す事で放たれて魔女へと向かって行く。それを見た魔女は転がるように避けて逃げ出し、闇に消え去ったのであった。
 勇人は己の右手の感覚が薄れている事を確かめた。
「いつまで生きてられるだろうね、せめて鈴香が魔女に利用されないように全員狩りたい」
 桁並み外れた魔力の持ち主である鈴香。周囲の魔力を扱う事で魔法を撃つ魔女からすれば鈴香がそばにいるだけでいつでも強力な魔法が使える。中には直接交渉しに来た魔女もいたが当然全て断っていたのであった。
「鈴香、キミがウエディングドレスを着た姿だけでも見たいな」
 勇人はそれだけの言葉を残して振り返って立ち去るのであった。



 夜の闇の中、畑を抜けて胸を押さえ、今にも倒れそうな程にもつれる足で歩道を歩いている魔女。このままでは常人ならざる者であれども生命は長くはもたないであろう。息を吸うのも苦しく、歩くのがやっと。正気でなくとも生命の危機は理解出来ていた。死を覚悟した魔女だったが、歩いている先にあるものを見付けて口を裂け目のように大きく横に広げて美貌を崩す程の醜い笑みを浮かべる。目の前に生命をこの世に繋ぎ止めるためのお菓子があったのだから。肉という名の果実と血という名の紅茶を持った人という名のお菓子が一つ、脅威がすぐそこに来ている事も知らずに夜道を一人、鼻歌混じりにのうのうと歩いているのだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...