呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

文字の大きさ
40 / 132
〈お菓子の魔女〉と呪いの少女

決戦!

しおりを挟む
 ヴァレンシアは地へと着地する。
 集落だったそこは姿を変えていた。
 突然さびれて今にも朽ちてしまいそうな家、野菜のなるはずだった腐り果てた茎、晴れない霧、そこに佇む少女は何者であろうか、聖女さま、否、そんな甘い存在などいやしない。それはまさに〈森の魔女〉であった。
 〈森の魔女〉はその手に持っているりんごを齧り、そしてヴァレンシアの方へと放り投げる。するとりんごは口を開けて奇妙な叫び声を上げながらヴァレンシアの方へと襲いかかる。それを光の剣で斬ってヴァレンシアは空色の瞳で〈森の魔女〉を睨むのであった。



 老人と話を続けていた真昼。しかし、その老人は突然苦しそうなうめき声を上げ始めた。
「大丈夫ですか」
 しかし、それには答えずに老人の身体は膨れ上がって行く。やがて色までもが緑色に変貌し、蔓が絡み合う植物の塊となった。植物は真昼の方へと襲いかかる。
「やれやれ、私に本気を出させたら後悔するって事、教えてあげなければね」
 真昼は手帳を取り出して開き、開かれたページに魔力を注ぎ込む。手帳は薄い青の光を放ち、そして空より降り注ぐ氷柱たちは植物を貫きその存在を殺したのであった。
「万年筆を使って戦う刹菜と手帳を魔導書にした私、結構似ていると思うけれど」
 その言葉に答える存在はこの部屋にはいなかった。



 〈森の魔女〉が振り上げた腕、それを合図に腐った植物たちが意識を持って動き始める。その狙いは全員ヴァレンシアであった。
 ヴァレンシアは2振りの光の剣を振り、植物たちを次から次へと切り裂いていく。裂けて行く植物たちは意思を失って断面を見せながら落ちて行くのであった。
 そうして次から次へと襲いそして果てて行く植物たち。ヴァレンシアの踏む華麗なステップと光の剣による輝く軌跡は美しき踊り。
 ヴァレンシアはそんなステップで〈森の魔女〉の元へと肉薄していく。
 それを眺めて〈森の魔女〉は鋭い笑みを浮かべた。
 途端、ヴァレンシアの動きは止まった。止められた。ヴァレンシアの身体に絡みついて動きを止めて縛るそれは禍々しい蔦、死へと導くべく放たれた魔女の刺客。
 ヴァレンシアは目の前の魔女を鬼のような形相で睨みつけていた。
 これでおしまい、そう思ったその時だ。
 ヴァレンシアを縛る蔦は突如冷たい刃によって引き裂かれた。
 手帳を咥えて澄んだ氷の剣を両手に持った美人の姿が飛び込んできた。
「真昼」
 かつてヴァレンシアの二刀流に憧れて真似を始めた真昼の姿は最早ヴァレンシア以上に様になっていた。
 行け、やれ。
 そんな合図を受けたように思えたヴァレンシアは目の前の〈森の魔女〉をその天使の翼から変わり果ててしまった2振りの剣で斬りつけて裁きを与えたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...