呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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〈お菓子の魔女〉と呪いの少女

聖女さま

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 何一つと進展のなかった探索を中断して、遅めの昼ごはんを食べる事にした。
 老人はおにぎりを握り、ふたりに振る舞う。
「野菜と肉とおにぎりくらいしかないが満足してもらえれば嬉しいのう」
「くらいしかない。それは間違いと思う。それだけあれば充分じゃない?真昼」
 ヴァレンシアの言葉に声もなく頷く真昼。
 ふたりして頬張るおにぎりは塩が効いていて疲れた身体を癒してくれた。そして山の水は綺麗で澄んだ味、それはとても清らかな想いを持っていただくことが出来たのであった。
 そんな昼食の間に老人は語る。
「我々はもう長らく外を見ていないのだよ。この集落から出るのは肉を確保する時くらいなのだからのう」
 ヴァレンシアは顔を上げ、それを注意深く聴いていた。
「この辺はいつでも霧が深くて遠くへ行くのはあまりにも危険過ぎるのだから」
 ヴァレンシアは空色の瞳で老人を睨み付け、問い詰める。
「じゃああのおにぎりの味は? どうして塩が効いてた。この辺から出ないのに」
 老人は目を見開き黙り込んでいた。ヴァレンシアはその様子を見ても尚、問い詰める姿勢は崩さない。
「どうして答えない。海は近くない。そこまで行くのは危険なはず」
 老人は狼狽えていたがやがて観念して口を割る。
「それは聖女さまのおかげだ。聖女さまが塩や胡椒、砂糖にこの辺では採れない野菜を持って来て下さるのだ」
 ヴァレンシアはしばらく老人を睨み付けていたが、その表情はこれ以上変わることが無い、そう悟って真昼の方に目を向ける。
「真昼、聖女さまとやらが怪しい。ここに魔法使いの気配は無い。〈森の魔女〉の他には」
 真昼はヴァレンシアの肩に手を置いた。
「でかしたヴァレンシア! いいじゃない。面白くなって来たわ」
 そして真昼はメモ用紙にその事実を書き綴っていく。
「手帳は使わない。どうして真昼」
 真昼はポケットより手帳を取り出して言った。
「これは別の使い道があるの。ヒントは刹菜が何をどう使っていたのか」
「これ以上考えても仕方ない。刹菜がヒントなら」
 それから真昼は老人に集落の外の話をしていた。しばらくそれを眺めていたヴァレンシアであったが、やがて立ち上がり欠伸をしながら外へと歩き出すのであった。
「退屈だったかしら。本当にネコみたいに自由な子」
「若い者にはこんなところ退屈で仕方ないのだろう」
 真昼と老人は世間話に花を咲かせているのであった。



 ヴァレンシアは霧に包まれたこの集落を眺め歩いていた。
 老人しかいない集落、野菜を育てる畑、霧に遮られ、日を浴びる事が叶わないにも関わらず老人たちはそれといった病気に一切かかる事もなく、野菜も育っている。

 あまりにも歪み切っている

 それがヴァレンシアが抱いた感想。神秘と日常の同居。神秘、妖しい存在が強いその場所はあまりにも不自然な現象とおかしな平常が目に付く。
 ヴァレンシアは空色の瞳を閉じ、意識を研ぎ澄ます。
 そうしていること数十秒。ヴァレンシアは瞳を開き、2振りの光の剣を両手に握り締め、走り出した。
 目指すはある地点の上空。切り開くのは閉じられた状況。
 ヴァレンシアは褐色の脚に力を入れて飛び上がる。人では有り得ないほどの高さの跳躍。その果てより始まる落下。ヴァレンシアは意識を研ぎ澄まし、落ちる途中に見付けた歪みを両手に握る天使のように輝く剣を交差させて斬り裂いた。
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