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ホムンクルス計画

動き始める者

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 刹菜が攫われてから数時間後の出来事。闇に包まれた静かな空気の中、静寂がうるさく果てしない。目を開いた満明は手に力を入れて起き上がろうとする。身体の節々が痛みを訴えて満明は起き上がらせつつある身体を再び地に伏せる。
ーくそっ、どうなってんだー
 あの時殴られたのはみぞおちのみ。しかし全身が痛み、満明は何をする事も出来ないままうつ伏せで寝転がっているというこの状態。
ー敵の詳しい素性だけでも知っておかねばー
 満明はポケットから携帯電話を取り出してある番号にかける。
「もしもし、げほっげほっ、すま……ん、一真。アパートで、魔法……使いどもの、ポッケを調べてく……れ」
 それから安心したようにその場で眠りにつく満明であった。そこは外、それも地面であるにも関わらず安心した暖かな表情で倒れて眠っているのであった。



 誰も彼もが眠っているように見える街、街すらもが眠っているのかも知れない。そんな街の中、一真は目的地まで歩いていた。
 満明が待っているはずのアパートまで。
「倒れているっ!」
 倒れた満明を見てそんなコメントを思わず言ってしまったあと、一真は満明を放置して魔法使いたちのポケットを調べていく。
「一攫千金だな、ははは」
 魔法使いたちの財布を取り出してそこに眠りし金銭の全てを手中に収める一真、そのついでにある紙を取り出して目を通す。
「魔導教団? とんだカルトだな、刹菜ならオカルトは御カルトだからカルトの丁寧語で狂ってるのは当たり前ってジョーク飛ばしそうだな」
 その名刺を手に、満明を背負ってアパートの中へと入っていくのであった。
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