呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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ホムンクルス計画

魔導教団

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 魔導教団の名を知り、次の朝に刹菜が攫われた事を満明の口から知らされた一真、そんな彼は今日の夜は確実に家にいるであろう奈々美の元を訪ねて喧嘩をして真昼と満明のいるアパートへと疲れた足を運んでいた。
 足取りは重く、頭は時折フラついていた。
 歩いて歩いて歩いて歩いて、それしか考える事も出来なくて、目的地にたどり着いたという実感も湧かない。
「着いたのか」
 その一言と共に呼び鈴を押す。その行動までにかかったその時間は約7秒。あまりにも疲れていた一真は開かれるドアに対しても何の反応もしない。
「お帰り。どうだった」
「喧嘩した」
 ただ事実を一言で伝えるだけの余裕しか持ち合わせていなくて出来る事だけをする。
「そう。じゃあ仕方ない、協力はしてもらえないと思った方が良いわね」
 それから真昼は明日魔導教団の布教演説会場に行くとだけ伝えて一真の身体を肩に預けさせて風呂場へと運ぶ。
「シャワーくらい浴びてから寝てね」
 ただそれだけの言葉を残して風呂場を去るのであった。



 次の日の昼、一真はビニール傘を手によく晴れた道を歩いていた。
 魔導教団の演説会、どのようなものであろう。真昼曰く表では変わったカルト教団として活動しているというものであるが恐らく一真たち魔法使いにとっては裏の顔の方が知られているであろう。
 遠く、学校では那雪が心の中で咽び泣いている事も知らずに一真は目の前の問題を解決すべく乗り込んでいく。
 恐らく刹菜は魔女研究所に捕らえられているのだろうがしかし、一真たちにはその研究所の場所が分からないのだ。頼りの奈々美は最早口すらもきかない程。
 ごくごく普通の白い建物で行われているという演説。
 一真はその建物に入ってパイプ椅子に腰掛ける。
 ステージに立って男が魔法の事実と嘘を混ぜながら話していた。魔法は誰にでも何不自由なく扱える。確かに勇人のように薬か何かを飲めば魔法は扱えるだろう。しかし、そこにデメリットが無いのか、否。勇人の悲惨な状態は何不自由ないなどと口が裂けても言えない。
 今日は土曜日、恐らく学校の授業が終わった頃であろう。那雪を迎えに行きたいという気持ちを抑える。一真は知らない事だが私立中学に通う鈴香は今頃妹思いの暇人大学生の勇人と共に帰りの電車に乗り込んでいるところであろう。
 魔導教団の演説の中に「死者の復活」の言葉を耳にした一真。
ーそんなの絶対に不可能だー
 一真は知っていた。この世界の魔法に肉体という複雑怪奇なものを本物と寸分違わぬ形で再生させる方法などないということを。
 故に立ち上げられたホムンクルス計画。新たに創り上げた人類の魂をかき消し死者の魂を入れ込む狂気的な計画。しかしあれは机上の空論。警戒するに値しない、そう思いつつも魔女研究所から逃げ出したのだと奈々美が見え見えの嘘を言ったあのホムンクルスの事を思い出す。
ーまさかー
 一真は演説が終わるまでの間、ビニール傘を持つ手に入る力が抜けないでいた。
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