呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

文字の大きさ
103 / 132
風使いと〈斬撃の巫女〉

結局のところ

しおりを挟む
 少女が張り付く壁、慢心し過ぎて客人に被害を及ぼしてしまったお嬢さま、どちらもが汚れ穢れ澱んでいた。
 少女は壁から天井へと飛び移り、余裕の笑みを浮かべる。
「そろそろ終わりにするか、この屋敷ももう廃屋だな」
 お嬢さまは俯き身体を震わせる。
「こんな局面……私、初めてですわ!」
 そう語り顔を上げたお嬢さま、その表情はどこまでも輝いていた。
「何がこの屋敷ももう廃屋? 私のやる気が今ハイオク満タンでしてよ」
「金食うなコイツ」
 突然天井がひっくり返った。否、少女が何かに引っ張られて床に落ちたのだ。
「私の得意な魔法は基本私自身は動きませんの。だから運動になるかと思い力を使っていなかった……にも関わらずあなたの戦い方といいこの局面といい、どうしても私を動かしたがらなかった」
「それは偶然だ!」
 叫ぶ少女、その叫びの音源は振り回されて壁に床に天井に叩き付けられる。
「私に本気を出させた。それがどのようなことなのかその身に教育を施しますわ」
 振り回される少女、何に引っ張られているのか何が振り回しているのか、それすら分からない。
 少女は振り回され叩き付けられまた振り回され、そして床でくたばっているシャンデリアに叩き付けられる。
 結局のところ、少女の力ではお嬢さまには敵わないということであった。
 シャンデリアに叩き付けられて埋もれている少女の元へとお嬢さまは歩み寄り、手を伸ばす。
 少女の腕を掴み、その手で引き寄せる。
 そしてひとつのお願いをするのであった。
「一緒に住んで私と暮らして欲しい」
「なに故に?」
 人としてのお願い、それはあまりにも唐突で話の繋がりが見えない。
 お嬢さまは微笑んでワケを話すのであった。
「だって、カッコいいんですもの。執事のようなイケメンよりも断然好みのカッコよさですわ。あなたを彼氏に」
「私は女だ」
 少女は顔を赤くしてそう言うものの、お嬢さまにはそんな話は通用しない。
 顔を近付けて少女の顔を見つめていた。
「女の子を彼氏にしたって…………良いじゃない」
 お嬢さまの口調も声も柔らかく、その貌から分かること。その言葉の全てが本音。少女はあまりの恥ずかしさに身体中に熱を感じ、元々の口下手な自身以上に上手く話せない。
「お願い! 私の恋心の火を、その冷たい色をした目で燃やし続けて」
 敵地で敵に圧倒されながら告白される。そんな状況で上手く考えることも断ることもできず、魔導教団に対する裏切りの行為を実行するのであった。

 少女は、自身の心と立場を奪い取ったお嬢さまの心と唇をこの場で奪い取ったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...