魔女に心を奪われて

焼魚圭

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雑草抜き

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 アジサイの花が頼りない日差しにアテられて元気を失い始めていた。そんな中、しぶとく生え続けて勢い良く広がり増えている雑草たちを引き抜き取り除いていく。奈々美は文句を零していた。
「どうしてこんなにも増えてしまうまで放置していたのかしら。たまに手入れくらいしていればもっと楽に終わるのに」
 十也はそんな愚痴を洩らす奈々美に前向きな言葉を捧げる。
「でも、それのおかげでこんなに簡単な事でボクの戸籍が手に入るんでしょ? なら良かったよ」
 まだまだ夏は本格的なものではないとは言えども降り注ぐ熱は確実にふたりの体力を奪っていく。
 魔法使いのお偉いさんの広大な庭、そこの雑草を引き抜くだけで十也の戸籍を作ってもらえるのだという。学校に行くためには必要な事。
 奈々美は目を閉じて立っていた。
「どうしたの?」
 それから妖しい笑みを浮かべ、右手の指を動かし始める。
 するとどうであろう、雑草たちがみるみる内に抜けていく。そして左手を上に上げるだけで抜けた雑草たちは何処か遠くへと吹き飛んでいった。
「私は〈東の魔女〉よ。火、水、風、土の四大元素の内の三つを操ることが出来るの、決して〈エッチの魔女〉ではないわ、ハハハ」
「全部じゃないんだ……」
 十也の純粋な言葉が奈々美の心を抉る。
「火が……苦手でね。ひとつ使えないのをいい事にアホの子の企画で〈三原色の魔女〉なんて不名誉な二つ名をいただいたこともあったものよ」
 奈々美が凹んだところで休憩時間として、十也は奈々美の頭を優しく撫でるのであった。
「ありがとう、十也は優しいのね」
「優しくなんかないよ、奈々美が好きなだけ」
 奈々美は日射と心の熱で茹で上がりそうになっていた。



 それから1時間程で戸籍をいただいた十也。それは公からこの国この街の住民として見つけられた証。これでようやく実験台以上の者として認識されたらしいのだが、十也にとっては特に何かが変わった気がしたわけでもなかった。実験台以上の価値、そんなものは隣りで魅惑的な大人の笑みを浮かべる魔女が既に見付けていて、そして愛しているのだから。
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