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第9話 不良少年の魂
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――昼過ぎに、メフィストから俺に頼みたい依頼があると連絡が来た。
見せたいものがあるらしく、例の建物に来てほしいらしい。
今回も、前回と同じぐらいの報酬を出せるという。おそらく、ターゲットはまた若者だろう。
「おや、お早いデスね。前回の報酬の多さに、味を占めてしまったでしょうか」
メフィストの元に到着し、さっそく依頼の件について聞く。
「お察しの通り、今回も若者……高校生の魂デス」
「今回も、その高校生は病気なのか?」
「いえ、いわゆる不良少年……デスかね」
「不良ってだけで魂を刈らなきゃいけないのか?」
さすがに、魂を刈る理由が納得できなければ断りたいぐらいだ。
不良というだけでは理由として弱い……と思う。
メフィストは少し悩んだ素振りを見せ、俺を地下室に案内した。
薄暗く広くはないが、最近も使われた痕跡があり、汚いという印象はなかった。
テーブルの上に占い師が使うような水晶玉がある。透明で、両手には全く収まらないほどの大きさ。
「では、今からターゲットに選ばれた理由となる映像をお見せします」
メフィストがブツブツと何かを唱えると、ターゲットと思わしき少年が映った。
~~~~~~~~~~
――ハッキリとは見えないが、おそらく家の中でヤンチャそうな少年が母親と口喧嘩をしているようだ。
「産んでくれなんて頼んでねぇ!」
「俺なんか生まれてこない方が良かったんだ!!」
~~~~~~~~~~
少年の口からは、母親が絶対に聞きたくない言葉が飛び出してきていた。
定番の台詞だとは思うが、絶対に言ってはいけないだろう。
「おわかり頂けましたか?」
「……反抗期で喧嘩してるだけだろ?」
「いえ、この少年は『産んでくれなんて頼んでいない』『生まれてこない方が良かった』と仰っていますね。つまり、この少年の魂を刈って、次の生命に――」
「マテまて待て、この少年が本気でその台詞を言ってるわけないだろ!?」
「死にたがっている少年、新鮮な若い魂を刈りたい我々、ウィンウィンな関係ってヤツじゃないデスか」
俺は耳を疑った。メフィストは、頭のネジが飛んでいるのか? 少なくとも、思考が普通ではない。
「まぁ、今回の件を拒否すると言うのであれば、他の死神に依頼しますが……?」
他の死神に仕事を取られては堪ったもんじゃない。
報酬もおそらく百万ぐらいだろう……金額がチラついて仕方ない。
「分かった、やるよ」
「そう言って頂けると信じてましたよ、さすがフブキさんデス」
――とはいえ、確認したいことがあった。
早めの時間、まだ寝ていないであろう夜の9時過ぎにターゲットの家に向かった。
俺はいつものように、家に侵入しターゲットを探したが、姿がどこにも見当たらない。
まだ帰ってきていないのか。とりあえず、一旦外に出ることにした。
ターゲットの家の玄関の前に立ち、少年の帰宅を待つ。
以外にも閑静な住宅街で、人通りが少ない。
空は曇っていて、月の明かりが無いせいか、街灯の光が余計に目立つ。
「そこ、どいてくれる?」
――見覚えがある、ターゲットの不良少年の帰宅だ。
ブレザーにカバン、学校の帰りにしては少し遅いか。
派手な格好をしているわけでもないが、着崩していたり、金属のアクセサリーが少し見える。
「それは、無理だ。キミに聞きたいことがあって来た」
……白いパーカー? いや、雨合羽か。変なガキだな。
「オレに用事……? ガキはもう寝る時間だ、家に帰れ」
「ガキ? 俺は……」
って、今の姿は幼女だったな……。
相手が事情を知るわけもないし、面倒なことにならないように言い返すのはやめておこう。
――ん? 上から何かデカいモノが降ってくる。
ドスン、と着地すると衝撃で地面が少し揺れた。
その正体は……牛? いや、人型だ。ミノタウロスに近いと言えばいいか。
急な出来事に唖然とする。今の俺の姿の3倍はあるだろうか、見上げると首が痛くなりそうだ。
「オレノ ダチニ ナンノヨウダ?」
「ダチ……? この少年と知り合いなのか、お前は何者なんだ」
「ジャマヲ スルナ」
「それは、こっちの台詞だ。俺は死神、この少年に用事があって来たんだ」
――少年が割り込む。
「待ってくれ! コイツは俺にダチを紹介してくれたんだ。ヤンチャなやつらだけど、孤独だったオレに居場所をくれた。だから……」
「サガッテロ」
ミノタウロスのようなカイブツは少年に距離を取らせようとする。
守ろうとしているのか、いや違う。コイツは魂を狙う『悪魔』だ。
「まあいい、相手をしてやる」
カルディナの言う通り、自衛するチカラは必須なようだ。
思ったより物騒で、野蛮なヤツがいる。
さて、大口を叩いたものの……こんなデカブツの相手なんてしたことはないし、カルディナにボコボコにされて自信もないんだが。
道路は人通りも少なく、車がギリギリ2台通れるぐらいの広さ。やり合う場所としては申し分ない。
「チカラを貸してくれ、スノードロップ!」
鎌のスイッチを入れると、青白い刃が現れた。
悪魔は巨大な拳で俺に殴りかかってきた。
巨大な相手に対して、小さい俺は有利なはず。ちょこまかと攻撃をかわしていく。
翻弄され、悪魔が体勢を崩したのを確認し、鎌を振り、悪魔の巨大な腕を斬りつける。
肉体を切り裂くことはできないが、悪魔はひるみ唸り声を上げる。どうやら効果はあるみたいだ。
しかし、次の瞬間、悪魔の巨大な拳が俺に襲いかかる。
それは見事にヒットし、あまりの衝撃に耐えられず身体が吹っ飛ぶ。何度も地面に打ち付けられ転がった。
……立ち上がったが、少し頭がクラクラする。
ローブのおかげか、これぐらいで済んでしまうのが恐ろしい。普通なら骨が砕けていてもおかしくない。
だが、まともにやり合っていてはきりがない。何か良い方法を、俺ができること……。
俺は鎌を横に勢いよく振ると、悪魔に向かって地面を這うように冷気が広がった。
その冷気は悪魔の足元に触れると、たちまち凍り付いた。
悪魔の動きが鈍くなったのを確認してから背後に回る。
冷気を利用して、悪魔の巨大な背中に飛びかかった。
そして、背中に向かって勢いよく鎌を縦に振り下ろす。
「グガアアアアアアアアアアアア!!」
悪魔は地響きがするほどの唸り声を上げ、白目をむく。
すると、悪魔の身体から、どす黒い魂が浮き上がった。
身体と魂が繋がっている部分を鎌で切断すると、巨大な悪魔の身体は煙のように消えた。
どす黒く触れたくはない魂だが、一応回収しておくか……。
「そんな、なんで……」
少年が愕然として膝をついた。
「アイツは悪魔だ。キミはアイツに狙われて……」
「だったら、お前も悪魔みたいなもんじゃないか! でもアイツは、骨折して部活の大事な試合に出られなくなって、すべてがどうでもよくなった俺に居場所をくれた。新しいダチが楽しいことも教えてくれたし、それが悪いこと、迷惑になるって分かってた」
「そうだったのか……、実はキミが母親と喧嘩しているのを知ってるんだ。キミは本当に死にたいと思ってるのか?」
「それは……、骨折した時は思ったさ。でも、ダチといると楽しくて、まだ生きたいって」
「じゃあ、今までしたことは謝ってさ、まだ間に合うから……」
――?
俺は気づくと、少年に向かって鎌を振っていた。
なぜ……身体が勝手に……?
少年はその場で倒れ、俺はそのまま魂を回収した。
魂は悪魔と一緒にいたとはいえ、黒く染まっていない。
まだ生きたいというのが本心で、本当は魂を刈る必要なんてなかったのでは、と思う。
依頼の目的は達成、仕事は終わった。何の問題もない……はず。
見せたいものがあるらしく、例の建物に来てほしいらしい。
今回も、前回と同じぐらいの報酬を出せるという。おそらく、ターゲットはまた若者だろう。
「おや、お早いデスね。前回の報酬の多さに、味を占めてしまったでしょうか」
メフィストの元に到着し、さっそく依頼の件について聞く。
「お察しの通り、今回も若者……高校生の魂デス」
「今回も、その高校生は病気なのか?」
「いえ、いわゆる不良少年……デスかね」
「不良ってだけで魂を刈らなきゃいけないのか?」
さすがに、魂を刈る理由が納得できなければ断りたいぐらいだ。
不良というだけでは理由として弱い……と思う。
メフィストは少し悩んだ素振りを見せ、俺を地下室に案内した。
薄暗く広くはないが、最近も使われた痕跡があり、汚いという印象はなかった。
テーブルの上に占い師が使うような水晶玉がある。透明で、両手には全く収まらないほどの大きさ。
「では、今からターゲットに選ばれた理由となる映像をお見せします」
メフィストがブツブツと何かを唱えると、ターゲットと思わしき少年が映った。
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――ハッキリとは見えないが、おそらく家の中でヤンチャそうな少年が母親と口喧嘩をしているようだ。
「産んでくれなんて頼んでねぇ!」
「俺なんか生まれてこない方が良かったんだ!!」
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少年の口からは、母親が絶対に聞きたくない言葉が飛び出してきていた。
定番の台詞だとは思うが、絶対に言ってはいけないだろう。
「おわかり頂けましたか?」
「……反抗期で喧嘩してるだけだろ?」
「いえ、この少年は『産んでくれなんて頼んでいない』『生まれてこない方が良かった』と仰っていますね。つまり、この少年の魂を刈って、次の生命に――」
「マテまて待て、この少年が本気でその台詞を言ってるわけないだろ!?」
「死にたがっている少年、新鮮な若い魂を刈りたい我々、ウィンウィンな関係ってヤツじゃないデスか」
俺は耳を疑った。メフィストは、頭のネジが飛んでいるのか? 少なくとも、思考が普通ではない。
「まぁ、今回の件を拒否すると言うのであれば、他の死神に依頼しますが……?」
他の死神に仕事を取られては堪ったもんじゃない。
報酬もおそらく百万ぐらいだろう……金額がチラついて仕方ない。
「分かった、やるよ」
「そう言って頂けると信じてましたよ、さすがフブキさんデス」
――とはいえ、確認したいことがあった。
早めの時間、まだ寝ていないであろう夜の9時過ぎにターゲットの家に向かった。
俺はいつものように、家に侵入しターゲットを探したが、姿がどこにも見当たらない。
まだ帰ってきていないのか。とりあえず、一旦外に出ることにした。
ターゲットの家の玄関の前に立ち、少年の帰宅を待つ。
以外にも閑静な住宅街で、人通りが少ない。
空は曇っていて、月の明かりが無いせいか、街灯の光が余計に目立つ。
「そこ、どいてくれる?」
――見覚えがある、ターゲットの不良少年の帰宅だ。
ブレザーにカバン、学校の帰りにしては少し遅いか。
派手な格好をしているわけでもないが、着崩していたり、金属のアクセサリーが少し見える。
「それは、無理だ。キミに聞きたいことがあって来た」
……白いパーカー? いや、雨合羽か。変なガキだな。
「オレに用事……? ガキはもう寝る時間だ、家に帰れ」
「ガキ? 俺は……」
って、今の姿は幼女だったな……。
相手が事情を知るわけもないし、面倒なことにならないように言い返すのはやめておこう。
――ん? 上から何かデカいモノが降ってくる。
ドスン、と着地すると衝撃で地面が少し揺れた。
その正体は……牛? いや、人型だ。ミノタウロスに近いと言えばいいか。
急な出来事に唖然とする。今の俺の姿の3倍はあるだろうか、見上げると首が痛くなりそうだ。
「オレノ ダチニ ナンノヨウダ?」
「ダチ……? この少年と知り合いなのか、お前は何者なんだ」
「ジャマヲ スルナ」
「それは、こっちの台詞だ。俺は死神、この少年に用事があって来たんだ」
――少年が割り込む。
「待ってくれ! コイツは俺にダチを紹介してくれたんだ。ヤンチャなやつらだけど、孤独だったオレに居場所をくれた。だから……」
「サガッテロ」
ミノタウロスのようなカイブツは少年に距離を取らせようとする。
守ろうとしているのか、いや違う。コイツは魂を狙う『悪魔』だ。
「まあいい、相手をしてやる」
カルディナの言う通り、自衛するチカラは必須なようだ。
思ったより物騒で、野蛮なヤツがいる。
さて、大口を叩いたものの……こんなデカブツの相手なんてしたことはないし、カルディナにボコボコにされて自信もないんだが。
道路は人通りも少なく、車がギリギリ2台通れるぐらいの広さ。やり合う場所としては申し分ない。
「チカラを貸してくれ、スノードロップ!」
鎌のスイッチを入れると、青白い刃が現れた。
悪魔は巨大な拳で俺に殴りかかってきた。
巨大な相手に対して、小さい俺は有利なはず。ちょこまかと攻撃をかわしていく。
翻弄され、悪魔が体勢を崩したのを確認し、鎌を振り、悪魔の巨大な腕を斬りつける。
肉体を切り裂くことはできないが、悪魔はひるみ唸り声を上げる。どうやら効果はあるみたいだ。
しかし、次の瞬間、悪魔の巨大な拳が俺に襲いかかる。
それは見事にヒットし、あまりの衝撃に耐えられず身体が吹っ飛ぶ。何度も地面に打ち付けられ転がった。
……立ち上がったが、少し頭がクラクラする。
ローブのおかげか、これぐらいで済んでしまうのが恐ろしい。普通なら骨が砕けていてもおかしくない。
だが、まともにやり合っていてはきりがない。何か良い方法を、俺ができること……。
俺は鎌を横に勢いよく振ると、悪魔に向かって地面を這うように冷気が広がった。
その冷気は悪魔の足元に触れると、たちまち凍り付いた。
悪魔の動きが鈍くなったのを確認してから背後に回る。
冷気を利用して、悪魔の巨大な背中に飛びかかった。
そして、背中に向かって勢いよく鎌を縦に振り下ろす。
「グガアアアアアアアアアアアア!!」
悪魔は地響きがするほどの唸り声を上げ、白目をむく。
すると、悪魔の身体から、どす黒い魂が浮き上がった。
身体と魂が繋がっている部分を鎌で切断すると、巨大な悪魔の身体は煙のように消えた。
どす黒く触れたくはない魂だが、一応回収しておくか……。
「そんな、なんで……」
少年が愕然として膝をついた。
「アイツは悪魔だ。キミはアイツに狙われて……」
「だったら、お前も悪魔みたいなもんじゃないか! でもアイツは、骨折して部活の大事な試合に出られなくなって、すべてがどうでもよくなった俺に居場所をくれた。新しいダチが楽しいことも教えてくれたし、それが悪いこと、迷惑になるって分かってた」
「そうだったのか……、実はキミが母親と喧嘩しているのを知ってるんだ。キミは本当に死にたいと思ってるのか?」
「それは……、骨折した時は思ったさ。でも、ダチといると楽しくて、まだ生きたいって」
「じゃあ、今までしたことは謝ってさ、まだ間に合うから……」
――?
俺は気づくと、少年に向かって鎌を振っていた。
なぜ……身体が勝手に……?
少年はその場で倒れ、俺はそのまま魂を回収した。
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