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第10話 死神と悪魔と人間と
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――あの後、日を跨がずに不良少年の魂を、メフィストの元へ納品しに来た。
「ありがとうございます。依頼した時に納得されていなかったので、刈らずに帰ってくるかと思いましたよ」
「正直、刈るつもりはなかったんだが……」
「どうかされたんデスか? 目的は達成したんデスから、何も問題ないはずデスが」
あの時、自分の意思ではなく、勝手に腕が動いた……ような気がするということはメフィストに言わなかった。
あの日の目的は、不良少年の魂を刈ること。
確かに本来の目的は達成したはずだが、腑に落ちないんだ。
心のモヤが晴れぬまま、魂の入った袋をメフィストに渡す。
「これが不良少年の魂デスね、若いのでモチロン良い値段が付きます。デスが、悪いことはしていたみたいなので、少しの汚れがありますね。まぁ、思っていたよりはずっとマシデスがね」
メフィストは不良少年の魂の査定がひと段落すると、袋の中にもう一つ魂があることに気づく。
その魂を見たメフィストは、鋭い目つきに変わる。
「これは……どす黒く、酷く穢れている魂デスね。こんなものどこで手に入れたんデスか?」
それは、不良少年に関わっていたミノタウロスのような悪魔の魂。
倒したはいいが、回収するか悩んだ代物で、不良少年の魂と一緒に袋に入れていたのを忘れていた。
「その魂は、不良少年と関わっていた悪魔の魂だ。邪魔をしてきたから、その、つまり正当防衛だ。魂は回収するか悩んだけど、置いてくるわけにもいかないし……」
「そうデスか……。悪魔は魂を狙いますから、死神からしたら営業妨害デスねぇ。実は珍しい話ではなく、ウチの他のバイト君も回収した魂を悪魔に奪われたり、邪魔されたりと……。まぁ、あまり詮索しない方が身のためデス」
「この前のカルディナの件もそうだが、この界隈は物騒過ぎやしないか?」
「だから、高額な報酬を渡しているじゃないデスか。それに物騒なのは、生きている人間同士の方が……」
メフィストは悪魔について知っていそうだが、これ以上詳しく話そうとはしない。
メフィストの様子から、あまり聞かない方が良いと思ったが、どうしてもガマンできない。
「なぁ、悪魔の目的って何だ? そもそも悪魔って何者なんだ」
メフィストは黙り込む。
「……どうしても知りたいんデスか?」
「これからも関わることになるなら、知っていた方がいいんじゃないか」
「それもそう……デスねぇ。言えるのは、悪魔によって目的はそれぞれ、食べたり、売ったり……じゃないデスかね。」
ざっくりとした答えだが、気になる点がある。
「食べるってのは、悪魔のイメージから分からなくもない……かな。けど、売るってどういうことだ」
「我々みたいに異端な者が、人間に混ざって生活しているということ……デス」
悪魔によっては、人間に混ざって生活している。
恐ろしいとも思うが、俺のように死神のチカラを得ても、変わらずに人間と生活していると考えると不思議ではない。
「……悪魔の魂は値段が付くのか?」
「穢れている……つまり、浄化に手間がかかるわけデスから値段はほとんど付きません。……それでも悪魔の魂を刈ろうと言うのデスか?」
悪魔の話をすると、メフィストの様子が変わる……気がする。
だが、ハッキリするまでこの話をやめるつもりはない。
「悪魔が文字通り悪いやつなら、お金にならないとはいえ、刈るべきなんじゃないのか」
「……それがアナタの答えなんデスね」
俺は、自宅に帰る前にコンビニに寄って三角の小さい苺のショートケーキを二人分買った。
大金が入ったからホールケーキを買っても良かったんだが、この時間じゃお菓子屋は閉まっている。
何よりコユキが気を遣うだろうし。ケーキは冷蔵庫の奥に隠しておこう。
久しぶりの休み、昼過ぎまでガッツリ寝た。
そして夕方、そろそろコユキが学校から帰ってくる時間だ。
ずっと家にいたのがバレないように外をぶらつく。兄と全く同じ生活サイクルだと怪しいからな。
コユキが帰ってきた時間を過ぎたと確信し、家に入る。
「あ、ユミルちゃん。おかえりなさい!」
コユキはいつもより嬉しそうだ。
「ねぇねぇ、ユミルちゃんがケーキ買ってきてくれたの?」
コユキはすでに冷蔵庫に隠してあったケーキを見つけていたようだ。
サプライズするつもりだったんだが、喜んでくれているみたいだし、まぁいいか。
「うん、あまり一緒に居てあげられてないから……。フブキさんが、コユキちゃんは苺のショートケーキが好きだって教えてくれたの」
教えてくれたも何も、コユキが好きなものは兄だから当然知っている。嘘をつくのに慣れてきた自分が怖い。
夕飯は相変わらず質素なもので、良いものを食べさせたいから買ってこようとしてもコユキが遠慮してしまう。
今度は何かしら理由を付けて、久しぶりにファミレスにでも連れて行きたいな。
夕飯を終えると、二人でケーキを食べることにした。
ショートケーキに乗っている苺は、最後まで取っておくとか、最初に食べるとか悩むほどみんなが好きなもの。
コユキはもちろん苺が好きだ。
でも俺は、苺とかフルーツ系はあまり得意ではないので、こういう時はいつもコユキにあげていた。
「えぇっ!? ユミルちゃん、苺食べないの?」
「う、うん……。あんまり好きじゃない……というか、コユキちゃんに食べさせたいと思って」
「ありがとー! でも、なんかお兄ちゃんみたい。昔もケーキの苺くれたんだー」
「そ、そうなんだー」
……バレてないよな、さすがに。
――後日、スマホに連絡が入る。メフィストからのメールだ、おそらく新しい依頼だろう。
今回は、とっておきの案件をアナタに依頼します。失敗すれば解雇も考えなければなりません。
画面をスクロールすると、そこには一人の名前があった。
『鎌倉 小雪』
――妹の名前だ。
「ありがとうございます。依頼した時に納得されていなかったので、刈らずに帰ってくるかと思いましたよ」
「正直、刈るつもりはなかったんだが……」
「どうかされたんデスか? 目的は達成したんデスから、何も問題ないはずデスが」
あの時、自分の意思ではなく、勝手に腕が動いた……ような気がするということはメフィストに言わなかった。
あの日の目的は、不良少年の魂を刈ること。
確かに本来の目的は達成したはずだが、腑に落ちないんだ。
心のモヤが晴れぬまま、魂の入った袋をメフィストに渡す。
「これが不良少年の魂デスね、若いのでモチロン良い値段が付きます。デスが、悪いことはしていたみたいなので、少しの汚れがありますね。まぁ、思っていたよりはずっとマシデスがね」
メフィストは不良少年の魂の査定がひと段落すると、袋の中にもう一つ魂があることに気づく。
その魂を見たメフィストは、鋭い目つきに変わる。
「これは……どす黒く、酷く穢れている魂デスね。こんなものどこで手に入れたんデスか?」
それは、不良少年に関わっていたミノタウロスのような悪魔の魂。
倒したはいいが、回収するか悩んだ代物で、不良少年の魂と一緒に袋に入れていたのを忘れていた。
「その魂は、不良少年と関わっていた悪魔の魂だ。邪魔をしてきたから、その、つまり正当防衛だ。魂は回収するか悩んだけど、置いてくるわけにもいかないし……」
「そうデスか……。悪魔は魂を狙いますから、死神からしたら営業妨害デスねぇ。実は珍しい話ではなく、ウチの他のバイト君も回収した魂を悪魔に奪われたり、邪魔されたりと……。まぁ、あまり詮索しない方が身のためデス」
「この前のカルディナの件もそうだが、この界隈は物騒過ぎやしないか?」
「だから、高額な報酬を渡しているじゃないデスか。それに物騒なのは、生きている人間同士の方が……」
メフィストは悪魔について知っていそうだが、これ以上詳しく話そうとはしない。
メフィストの様子から、あまり聞かない方が良いと思ったが、どうしてもガマンできない。
「なぁ、悪魔の目的って何だ? そもそも悪魔って何者なんだ」
メフィストは黙り込む。
「……どうしても知りたいんデスか?」
「これからも関わることになるなら、知っていた方がいいんじゃないか」
「それもそう……デスねぇ。言えるのは、悪魔によって目的はそれぞれ、食べたり、売ったり……じゃないデスかね。」
ざっくりとした答えだが、気になる点がある。
「食べるってのは、悪魔のイメージから分からなくもない……かな。けど、売るってどういうことだ」
「我々みたいに異端な者が、人間に混ざって生活しているということ……デス」
悪魔によっては、人間に混ざって生活している。
恐ろしいとも思うが、俺のように死神のチカラを得ても、変わらずに人間と生活していると考えると不思議ではない。
「……悪魔の魂は値段が付くのか?」
「穢れている……つまり、浄化に手間がかかるわけデスから値段はほとんど付きません。……それでも悪魔の魂を刈ろうと言うのデスか?」
悪魔の話をすると、メフィストの様子が変わる……気がする。
だが、ハッキリするまでこの話をやめるつもりはない。
「悪魔が文字通り悪いやつなら、お金にならないとはいえ、刈るべきなんじゃないのか」
「……それがアナタの答えなんデスね」
俺は、自宅に帰る前にコンビニに寄って三角の小さい苺のショートケーキを二人分買った。
大金が入ったからホールケーキを買っても良かったんだが、この時間じゃお菓子屋は閉まっている。
何よりコユキが気を遣うだろうし。ケーキは冷蔵庫の奥に隠しておこう。
久しぶりの休み、昼過ぎまでガッツリ寝た。
そして夕方、そろそろコユキが学校から帰ってくる時間だ。
ずっと家にいたのがバレないように外をぶらつく。兄と全く同じ生活サイクルだと怪しいからな。
コユキが帰ってきた時間を過ぎたと確信し、家に入る。
「あ、ユミルちゃん。おかえりなさい!」
コユキはいつもより嬉しそうだ。
「ねぇねぇ、ユミルちゃんがケーキ買ってきてくれたの?」
コユキはすでに冷蔵庫に隠してあったケーキを見つけていたようだ。
サプライズするつもりだったんだが、喜んでくれているみたいだし、まぁいいか。
「うん、あまり一緒に居てあげられてないから……。フブキさんが、コユキちゃんは苺のショートケーキが好きだって教えてくれたの」
教えてくれたも何も、コユキが好きなものは兄だから当然知っている。嘘をつくのに慣れてきた自分が怖い。
夕飯は相変わらず質素なもので、良いものを食べさせたいから買ってこようとしてもコユキが遠慮してしまう。
今度は何かしら理由を付けて、久しぶりにファミレスにでも連れて行きたいな。
夕飯を終えると、二人でケーキを食べることにした。
ショートケーキに乗っている苺は、最後まで取っておくとか、最初に食べるとか悩むほどみんなが好きなもの。
コユキはもちろん苺が好きだ。
でも俺は、苺とかフルーツ系はあまり得意ではないので、こういう時はいつもコユキにあげていた。
「えぇっ!? ユミルちゃん、苺食べないの?」
「う、うん……。あんまり好きじゃない……というか、コユキちゃんに食べさせたいと思って」
「ありがとー! でも、なんかお兄ちゃんみたい。昔もケーキの苺くれたんだー」
「そ、そうなんだー」
……バレてないよな、さすがに。
――後日、スマホに連絡が入る。メフィストからのメールだ、おそらく新しい依頼だろう。
今回は、とっておきの案件をアナタに依頼します。失敗すれば解雇も考えなければなりません。
画面をスクロールすると、そこには一人の名前があった。
『鎌倉 小雪』
――妹の名前だ。
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