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第30話 魂の行方
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侵入者であるイヴを倒し、ヘヴンタワーに平穏を取り戻した。
……と言いたいところだが、設備の損傷やヒョウゴクの門番であるコキュートスを失った代償は大きすぎる。
本来であれば、ユミル、つまり今の俺がその役割を担う必要があるだろうが、そうともいかない。
――そして、恐れていたことが世界各地で起こる。
生まれてきた赤ん坊が動かない。まるで生きていないかのように。
それは、赤ん坊に魂が宿っていないからだ。
生物が生きていくには魂が必要不可欠。
その輪廻を手助けするのが、俺たち死神や天使といった存在。
この事例は今までなかったわけじゃない。
神や天使もミスをすることだってある。
明らかに魂の供給が追い付かなくなっているのだ。
世界の魂の数が減っていたことは知っているし、それを理由に仕事をしていた。
……だが、それ以上に魂の数が減少している。
この緊急事態に、俺とカルディナはハデスから呼び出しをくらう。
「すでに耳にしているとは思う。世界中だが、特に国内で管理している魂の数が著しく減少している。詳しい原因は不明だ」
とのこと。調査をしなければならないのだが、今回はある程度、目星がついているらしい。
ここから遠く、海沿い付近の町がある。
そこにある一番巨大なビルから異常な生体反応が検知されたらしい。
考えられる原因と言えば、悪魔関係だろうか。メフィストが絡んでくると厄介なことに間違いない。
「ま、チカラを取り戻した私がいるんだから、怖いものなんてないでしょ?」
カルディナはドヤ顔でそういうと、軽い準備運動をする。
「ありがとな。心強いよ」
俺は、少々恥ずかしい気もしたがお礼を口にする。
「……何よ、改まって。気持ち悪い」
「はぁ⁉ なんだよ気持ち悪いって、お礼言って損した!」
微妙な距離感で、ちょっと気まずくて、そんな関係だけど、長くいると悪くないかもって……な。
今じゃお互いの事を頼りにしている、それは本当だ。
「おっと、二人には出かける前に渡しておくものがある。ここから先、今までと比べ物にならないほどの危険が待ち構えている可能性があるからな。ワタシは後で必ず、捜査するビルにて合流しよう」
ハデスはそう言うと、眼鏡の美人秘書に俺とカルディナを案内するように伝えた。
秘書に着いて行くと、エンゴクとヒョウゴクを周り、その管理システムにアクセスしているようだ。
少々時間はかかったが、一通りの操作を終えるとヘヴンタワーのロビーに集まる。
秘書から、俺とカルディナにそれぞれ、小さなデータの入ったチップを渡される。
「これは?」
小さなチップを指でつまみ、まじまじと見る。落としそうで少々不安だ。
「それは、エンゴクとヒョウゴクのデータが詰まったチップ。本来であれば門外不出の品。貴重なデータであると同時に、取り扱いに危険なチカラも秘めております」
「危険って、なんで俺たちにこれを……」
「いざとなったときに、そのチップをあなた方の鎌にインストールしてください。そうすれば必ずそのチカラは助けになるでしょう」
秘書から受け取ったチップは、俺たちでないと扱うことすら不可能だという。
いざとなったらってどんな状況なのか想像もつかないが……。
なるべく使いたくないと思いながらも大事にローブのポケットにしまっておく。
準備を整え、目的地の海沿い付近にある巨大なビルを目指す。
――到着したのは、すっかり夜だ。
しかし、街灯も比較的多く、暗い印象はさほどない。幸いなことに、月も出ていて明るいぐらいだ。
夜とはいえ、ビルに人影も無ければ、電気もついていない。
ビルにいた全員が自宅に帰ったとしても早すぎる。
それは不気味で異様さを覚える。少し上の階まで様子を見たが、やはり人はいない。
「待って、フブキ」
カルディナは慌てて俺を呼び止める。
「ん? どうした」
「ベルガモットの様子がおかしいの。下……このビルの下から何か感じるみたい」
ペンダントが赤く不規則に点滅している。俺には分からないが、カルディナに対して何かを訴えているのだろう。
「下ってことは、地下に何かあるってことか。ベルガモットにしか、感じ取れないものがあるのかもしれない」
非常用階段から地下1階に下る。
しかし、そのフロアには何もないようだ。
だが、ペンダントの光はさっきよりも強くなる。
近づいていることは確かだ。俺たちはさらに下る。
すると、殺風景な部屋だが、壁に明らかに怪しい黒いモヤがある。
「ベルガモットが、この先に何か……いるって」
カルディナが青ざめた表情で呟く。
危険なことは分かりきっているが、引き返すなんてありえない。
俺が先になって黒いモヤに飛び込んだ。
――その先は、暗く広い部屋の中。部屋の奥には、鎖に繋がれた巨大な黒い獣。
その前には、玉座を彷彿とさせる立派な椅子に座った少年……?
そして、少年に向かって話している男、メフィストの姿があった。
……と言いたいところだが、設備の損傷やヒョウゴクの門番であるコキュートスを失った代償は大きすぎる。
本来であれば、ユミル、つまり今の俺がその役割を担う必要があるだろうが、そうともいかない。
――そして、恐れていたことが世界各地で起こる。
生まれてきた赤ん坊が動かない。まるで生きていないかのように。
それは、赤ん坊に魂が宿っていないからだ。
生物が生きていくには魂が必要不可欠。
その輪廻を手助けするのが、俺たち死神や天使といった存在。
この事例は今までなかったわけじゃない。
神や天使もミスをすることだってある。
明らかに魂の供給が追い付かなくなっているのだ。
世界の魂の数が減っていたことは知っているし、それを理由に仕事をしていた。
……だが、それ以上に魂の数が減少している。
この緊急事態に、俺とカルディナはハデスから呼び出しをくらう。
「すでに耳にしているとは思う。世界中だが、特に国内で管理している魂の数が著しく減少している。詳しい原因は不明だ」
とのこと。調査をしなければならないのだが、今回はある程度、目星がついているらしい。
ここから遠く、海沿い付近の町がある。
そこにある一番巨大なビルから異常な生体反応が検知されたらしい。
考えられる原因と言えば、悪魔関係だろうか。メフィストが絡んでくると厄介なことに間違いない。
「ま、チカラを取り戻した私がいるんだから、怖いものなんてないでしょ?」
カルディナはドヤ顔でそういうと、軽い準備運動をする。
「ありがとな。心強いよ」
俺は、少々恥ずかしい気もしたがお礼を口にする。
「……何よ、改まって。気持ち悪い」
「はぁ⁉ なんだよ気持ち悪いって、お礼言って損した!」
微妙な距離感で、ちょっと気まずくて、そんな関係だけど、長くいると悪くないかもって……な。
今じゃお互いの事を頼りにしている、それは本当だ。
「おっと、二人には出かける前に渡しておくものがある。ここから先、今までと比べ物にならないほどの危険が待ち構えている可能性があるからな。ワタシは後で必ず、捜査するビルにて合流しよう」
ハデスはそう言うと、眼鏡の美人秘書に俺とカルディナを案内するように伝えた。
秘書に着いて行くと、エンゴクとヒョウゴクを周り、その管理システムにアクセスしているようだ。
少々時間はかかったが、一通りの操作を終えるとヘヴンタワーのロビーに集まる。
秘書から、俺とカルディナにそれぞれ、小さなデータの入ったチップを渡される。
「これは?」
小さなチップを指でつまみ、まじまじと見る。落としそうで少々不安だ。
「それは、エンゴクとヒョウゴクのデータが詰まったチップ。本来であれば門外不出の品。貴重なデータであると同時に、取り扱いに危険なチカラも秘めております」
「危険って、なんで俺たちにこれを……」
「いざとなったときに、そのチップをあなた方の鎌にインストールしてください。そうすれば必ずそのチカラは助けになるでしょう」
秘書から受け取ったチップは、俺たちでないと扱うことすら不可能だという。
いざとなったらってどんな状況なのか想像もつかないが……。
なるべく使いたくないと思いながらも大事にローブのポケットにしまっておく。
準備を整え、目的地の海沿い付近にある巨大なビルを目指す。
――到着したのは、すっかり夜だ。
しかし、街灯も比較的多く、暗い印象はさほどない。幸いなことに、月も出ていて明るいぐらいだ。
夜とはいえ、ビルに人影も無ければ、電気もついていない。
ビルにいた全員が自宅に帰ったとしても早すぎる。
それは不気味で異様さを覚える。少し上の階まで様子を見たが、やはり人はいない。
「待って、フブキ」
カルディナは慌てて俺を呼び止める。
「ん? どうした」
「ベルガモットの様子がおかしいの。下……このビルの下から何か感じるみたい」
ペンダントが赤く不規則に点滅している。俺には分からないが、カルディナに対して何かを訴えているのだろう。
「下ってことは、地下に何かあるってことか。ベルガモットにしか、感じ取れないものがあるのかもしれない」
非常用階段から地下1階に下る。
しかし、そのフロアには何もないようだ。
だが、ペンダントの光はさっきよりも強くなる。
近づいていることは確かだ。俺たちはさらに下る。
すると、殺風景な部屋だが、壁に明らかに怪しい黒いモヤがある。
「ベルガモットが、この先に何か……いるって」
カルディナが青ざめた表情で呟く。
危険なことは分かりきっているが、引き返すなんてありえない。
俺が先になって黒いモヤに飛び込んだ。
――その先は、暗く広い部屋の中。部屋の奥には、鎖に繋がれた巨大な黒い獣。
その前には、玉座を彷彿とさせる立派な椅子に座った少年……?
そして、少年に向かって話している男、メフィストの姿があった。
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